トランプ米大統領の訪中を控え、新たな不和の兆しが見え始めている。トランプ氏は本来なら今頃、中国で習近平国家主席と直接会談していたはずだった。だが、イラン戦争の影響で、世界が注目する米中首脳会談は5月半ばに先送りされた。

中国は最近、米国の通商慣行に対する報復調査を開始。一方、米上院の超党派議員団が台湾を訪問し、中国による侵攻抑止に向けた台湾政府の予算強化を促した。中国の成長に不可欠な世界貿易を混乱させているトランプ氏がイランで始めた戦争が続く中、中国は3月31日、パキスタンと共に即時停戦を求める共同声明を発表した。

米中間の緊張が高まる中でも、ホワイトハウスは中国との関係維持に向けた姿勢を示している。レビット大統領報道官は3月30日、閣僚級の高官が数週間以内に中国を訪問すると明らかにした。首脳会談の準備を巡り米国の対応に不満が示していた中国側を安心させる可能性がある。

中国はルビオ米国務長官に対し、ルビオ氏がトランプ政権入りする前に2度、制裁を科している。同氏が北京を訪問すれば、関係改善のシグナルと受け止められ得る。

トランプ、習両氏(韓国の釜山、2025年10月30日)

コンサルティング会社トリビウム・チャイナのシニアアナリスト、ジョー・マズール氏は、関税措置を棚上げした昨年10月の米中首脳会談に触れ、トランプ、習両氏が韓国の釜山で会談した後の数カ月間、米中関係は驚くほど安定してきたと指摘。その上で、首脳会談が遅れるほど、貿易戦争の最も激しかった時期に逆戻りするリスクが高まるとの見方を示した。

中国側も、代替不可能な首脳外交の役割を強調することで、会談へのコミットメントを示している。米国の通商慣行に対する調査発表の数時間前、中国の王文濤商務相はグリア米通商代表部(USTR)代表に対し、悪質な競争を避け、韓国での前回会談での合意を履行するよう求めた。

中東情勢と台湾

現在、最大の不確実要因は中東情勢とみられる。トランプ氏は中国訪問の延期について、米軍のイランでの作戦に注力するためワシントンにとどまる必要があると説明した。米政府は当初、トランプ氏が3月31日から4月2日まで中国を訪問すると発表していた。だが、同氏の訪中は5月14、15両日に変更された。

トランプ氏と習氏は互いにホストとなる2つの首脳会議を含め、今年4回の会談が見込まれている。約10年ぶりとなる米大統領の北京訪問がさらに遅れれば、こうしたスケジュールのスピード感が損なわれる。

グリアUSTR代表が語る

戦略国際問題研究所(CSIS)の「チャイナ・パワー・プロジェクト」で副ディレクターを務めるブライアン・ハート氏は、「トランプ氏が首脳会談を再び延期すれば外交的に不格好となり、年内に予定される会談の流れを乱しそうだ」と分析。そうなれば、釜山で達成された相対的に安定した関係が損なわれる可能性があると語った。

火種は引き続き台湾だ。中国共産党を総書記として率いる習氏は今週、台湾の最大野党、国民党のトップを10年ぶりに中国へ招待した。国民党の鄭麗文主席は4月7-12日の訪中で江蘇省と上海、北京を訪れる予定だ。

中国当局は、米国による台湾への追加の武器売却に警戒感を強めている。習氏は2月の電話会談でトランプ氏に対し、この問題について「最大限の慎重さ」で対応するよう直接求めた。中国共産党は台湾を統治したことはないが、台湾を中国領土の一部だと主張している。

それでも中国は、新たな通商摩擦への対応を抑制的に保っており、関係悪化を回避したい米中双方の意向が示されている。中国は最新の調査を、トランプ政権が始めた通商法301条調査への対抗措置と位置付けた。通商法301条調査は、米連邦最高裁が2月に無効と判断した関税に代わる措置の法的根拠を整える目的で開始された。

米中は今、いずれも対立をコントロールしつつ、交渉力を強化し、緊張緩和の余地維持に腐心しているようだ。アジア・グループのパートナーでデジタル分野共同責任者のジョージ・チェン氏は、「双方とも状況を過度に揺るがしたくはない」と述べ、「現時点で最も重要なのは首脳外交だ」と強調した。

中国はトランプ政権に対し長期戦で挑んでいる

原題:Delayed Trump-Xi Summit Gives Fresh Grievances Room to Grow (1)(抜粋)

--取材協力:Martin Ritchie、Kate Sullivan、Annmarie Hordern.

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