カンボジアを拠点とする特殊詐欺組織。軽い気持ちで渡航し、詐欺行為に加担させられる若者が日本だけでなく、韓国でも相次いでいます。組織により命を奪われた韓国人大学生の父親が打ち明ける悲痛な思いとは。

去年7月、韓国の大学生・キムさん(仮名・22)の家族のもとにかかってきた身代金要求の電話。

キムさんの兄
「8月5日までに6700万ウォン? 5700万ウォン?そんなお金をどこから出せばいいんだ。

キムさん
「(返さなければ僕を)ミャンマーに送って働かせるって」

詐欺組織
「我々にお金返せばいいのでは?それで弟さんを連れて帰ればいい」

このおよそ2週間後、キムさんはカンボジアで遺体となって発見されました。

キムさんを殺害したとして起訴されたのは、カンボジアを拠点とする詐欺組織のメンバーとみられる中国人の男たちでした。

キムさんの身に何が起きたのか。父親がJNNのインタビューに応じました。

カンボジアで息子を亡くした父親
「もともと学校でドイツに研修に行くと言っていて、後で調べたらカンボジアに行ったらしい」

父親にはうそを言い、口座を買い取ってもらうために知人とカンボジアへ渡ったとみられるキムさん。待っていたのは、特殊詐欺の犯罪組織でした。

カンボジアで息子を亡くした父親
「自分のミスでお金が必要だから送ってほしいと要求されました」

キムさんは突然、父親に高額の送金を求めるようになり、その後…

カンボジアで息子を亡くした父親
「息子がかかわっている組織から連絡がきました。5700万ウォン(約630万円)を出せと、ずっと圧力をかけてきました」

組織は逃亡した仲間の穴埋めという理由で、キムさんの家族に金銭を要求してきました。

詐欺組織
「お金を返したら何も言わない」

電話の向こうからは暴行をするような音も…

詐欺組織
「こいつは知らない。切れ」

カンボジアで息子を亡くした父親
「罵倒したり、叩いたりするような音が横で聞こえてきました」

さらに、拠点の中で薬物まで強要されていました。

詐欺組織
「殺す前に吸え、早く、もっと強く」

その後、カンボジア政府から家族のもとに送られてきたのは火葬を行うための書類。そこには…

「死亡診断:心臓麻痺(拷問による激しい痛みのため)」

カンボジアで息子を亡くした父親
「本当に心が折れました。普段の生活ができませんでした」

こうした被害が今、東アジア全域で急増しています。韓国では、カンボジアで拉致・監禁される被害が去年300件を超え、日本でも渡航後に連絡が途絶える若者が複数確認されています。

詐欺組織は高収入などをうたって若者を集め、監禁。暴力や薬物などで支配しながら、詐欺の掛け子をさせているとみられています。

事態を重く見た韓国の李在明大統領は。

韓国 李在明 大統領
「被害者を保護し、事件に関与した者たちを国内に迅速に送還しなければなりません」

現地に専門チームを作り、カンボジア当局と連携し、拠点の摘発や救出活動を続けています。

一方で、加害者側となった若者たちの裁判では、詐欺組織に至るまでの一端も明らかに。

加害者の若者たち
「先輩に高収入の仕事があると誘われた」
「カンボジアのカジノで散財してお金がなくなった。現地の人にお金を借りたら、返済のために詐欺組織に連れていかれた」

軽い気持ちでカンボジアに渡った結果、詐欺に手を染めさせられるだけでなく、暴力や薬物、そして命を奪われる。カンボジアでは今、そのような現実が広がっているのです。

カンボジアで息子を亡くした父親
「(Q.これは何の写真)軍隊を退役したばかりの頃の写真。(息子の)夢は家畜を飼うことでした。資格もすべて取得していました」

父と一緒に畜産農家になることを夢見たキムさん。自宅では、かわいがっていた犬たちがキムさんの帰りを今か今かと待っています。

カンボジアで息子を亡くした父親
「悔しい。若いのに何も成し遂げられず。今も眠れない日々が続いています」

カンボジア当局による摘発が進められていますが、今も多くの若者が拠点に取り残されている可能性があり、強い対応が迫られています。