米国の保守派にとって最大の年次政治会合に不協和音の兆候が顕在化しつつある、通常はトランプ大統領とその政策を巡る結束を示す場となるイベントだが、出口の見えないイランでの戦争が影を落としている。

テキサス州ダラス近郊で28日まで開催されている保守政治活動会議(CPAC)では、「MAGA(米国を再び偉大に)」の刺しゅうが入った帽子や星条旗をあしらった服装の参加者が行き交い、トランプ氏への支持や、そのビジョンに合致しない考えへの反発をアピールしている。

ただ、中東での紛争に関しては例外だ。

テキサス州グレープバインで開催中の保守政治活動会議(CPAC)で、「Trump The Golden Era(トランプ氏の黄金時代)」と書かれたジャケットを着用する男性

「トランプ氏は戦争を始めなければよかったと思う」と、テキサス州の共和党員で商品トレーダーのコナー・ハンドリーさん(32)は話す。

「これは選択による戦争だと思う。彼はそれをしないと約束していた」と述べるとともに、トランプ氏が対イラン攻撃に踏み切った背景にはイスラエルからの圧力があったとの見方を示した。

戦争の正当化や終結時期に関するトランプ政権の説明が変転していることを受け、米国民は政治的立場を問わず翻弄(ほんろう)されている。世論調査では、トランプ氏の対応を支持しないとの回答が過半数を占める。

トランプ氏の言動からは、戦闘終結のためのイランとの合意がどの程度早期に成立する可能性があるかは不透明だ。数千人規模の米海兵隊が中東地域に向かい、原油価格は1バレル=100ドルを上回る水準で推移している。

だが、国民全体のムード悪化を世論調査が示す局面でも、トランプ氏の支持基盤は政権1期目と2期目を通じて同氏を強固に支持してきた。こうした傾向は今回の戦争でもおおむね当てはまる。

ピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、トランプ氏の戦争対応を支持する割合は、共和党員と同党寄りの層で約69%に上る一方、民主党員と同党寄りの無党派層では90%が支持していない。この構図はCPACでも明らかで、参加者の多くが大統領への支持を表明している。

しかし、イランでの戦争はこうした状況を変える可能性がある。トランプ氏は2024年大統領選で対外関与からの撤退と生活費の引き下げを公約に掲げていたが、足元ではガソリン価格が1ガロン当たり平均で約4ドル近くまで上昇しており、戦争終結の見通しも不透明なままだ。

過去数週間には、FOXニュースの元司会者タッカー・カールソン氏や政治コメンテイターのメーガン・ケリー氏といった、これまでトランプ氏を強く支持してきた人々も参戦決定に反対している。カールソン、ケリー両氏もまた、責任の一端はイスラエルにあると指摘している。

「これはイスラエルのための戦争だった。イスラエルの要請によるものだ」とケリー氏は衛星ラジオ「シリウスXM」の自身の番組で発言。「これは防衛行動ではなかった。イランはわれわれを攻撃していなかった」と話した。

戦争支持も

テキサス州グレープバインで開催中のCPACのメイン会場外でトランプ氏に声援を送る参加者ら(3月26日)

トランプ政権は、イランによる脅威を理由に戦争に踏み切ったとしているが、戦争の目的を巡っては米国とイスラエルの間に見解の相違の兆しも見られる。

それでも、MAGA運動の支持層の間で広がる疑念や、イスラエルのネタニヤフ首相がトランプ氏に圧力をかけたとの見方については、CPACの主催者が退けた。

CPACを運営する米保守連合(ACU)のマット・シュラップ議長はインタビューで、「トランプ大統領を操作したいとして、どうやって操作できるのか分からない」とし、「MAGA運動の内部では、ほぼ全ての重要問題で常に意見の違いがある。信じられないかもしれないが、われわれは催眠状態にあるわけではない」と語った。

トランプ氏は26日、FOXニュースの電話インタビューでイランでの戦争に反対する支持者に何と伝えるか問われたのに対し、「MAGA運動の支持者は、自分たちの頭上に核爆弾を抱えることがなくなるという事実を支持している」と答えた。

CPACでは一部で反発も見られたものの、会場の周辺でブルームバーグの取材に応じた参加者の大半は、トランプ氏と戦争の双方を支持していると述べた。

自由の女神像の衣装を身にまとったCPAC参加者、ソニア・ハーパーさん(61)は「もしミサイルが飛んできて、何百万人もの米国人が殺されていたらどうするのか」と話す。また、ケンタッキー州からダラスを訪れたエリザベス・ターナーさん(55)は、米国の介入なしにイラン政府が打倒されていればよかったと述べた。

中間選挙

CPAC参加者が今回、少なくとも会場で直接話を聞くことができない人物の1人はトランプ氏自身だ。同氏は長年にわたり同会議の常連として登壇してきた。

トランプ氏が戦争を主導し、戦闘が長期化するほど、同氏と与党共和党にとって政治的リスクは高まる可能性がある。同党は既に11月の中間選挙を前に課題に直面しており、上下両院双方で多数派維持が危ぶまれている。

カリフォルニア州在住のソフトウエアエンジニア、ジョージ・ヤンさん(49)は「この戦争に明確な終わりがなければ、直近数回の選挙で共和党に多く投票してきた若い男性の多くが、投票に行かなくなる可能性がある」とコメントした。

テキサス州の共和党員ハンドリーさんは、戦争には反対だがトランプ氏のことは引き続き支持していると語った。ただ、同党が選挙で不利な状況に直面する可能性は認め、「共和党は11月に大敗する可能性がある」と述べた。

原題:MAGA Divide Over Iran Spills Into CPAC, Where Some Blame Israel(抜粋)

--取材協力:Hadriana Lowenkron.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.