(ブルームバーグ):日本政府は27日、石炭火力発電所の稼働率引き上げを一時的に容認する方針を示した。イラン戦争が長引き、原油や液化天然ガス(LNG)の不足懸念や価格高騰が顕在化する中、エネルギー需給ひっ迫の対応策として打ち出す。
経産省が同日開く審議会の資料によれば、中東情勢を踏まえるとLNG調達について不確実性が高まっており、「非効率石炭火力」と呼ばれる発電設備の稼働率引き上げを4月から1年間認める。発電効率が低く、二酸化炭素(CO2)排出量が多い同設備は、脱炭素に向けた取り組みの一環で、利用が制限されてきた。この措置に伴い、LNGの節約効果は約50万トンで、ホルムズ海峡を経由する年間輸入量の約1割にあたるという。
緊急時の時限措置ではあるものの、今回の対応策はこれまでのエネルギー政策と矛盾する。政府は2025年に発表した最新のエネルギー基本計画でも、非効率な石炭火力を減らしていく方針を掲げていた。
日本ガス協会の内田高史会長(東京ガス会長)は27日の記者会見で、危機的な状況の中では低効率の石炭火力の活用も「当然選択肢」との考え方を示した。ただ、長期的には原子力や再生可能エネルギーの活用に加え、「省エネをもっと進めていくとか需要自体を抑えていくような方向も必要になるのではないか」と続けた。
石炭火力への回帰の動きは、タイや韓国などほかのアジアの国々でも現れ始めている。タイ政府は電気料金の高騰を抑制するため、メーモ石炭火力発電所の2基の発電ユニットの再稼働を命じた。韓国も、LNGの供給が途絶えた場合に備え、石炭火力発電の運用を柔軟化する方向で検討している。アジア各国は中東へのエネルギー依存度が高く、イラン戦争の影響が大きい。
資源エネルギー庁の資料によれば、日本の発電電力量のうち、火力発電が約7割を占める。燃料別ではLNG(33%)、石炭(32%)、石油(1%)となっている。中東産が9割を占める原油に比べると、LNGは1割程度と調達面での影響は限定的だ。ただLNG価格は原油市況に連動することが多く、電力企業にとって収益悪化につながる可能性がある。
石炭はオーストラリアからの輸入が多く、23年時点では約6割を占める。
--取材協力:稲島剛史.
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.