(ブルームバーグ):イラン戦争開始から1カ月近くが経過する中、日本株市場ではプラスチック素材などを手がける化学メーカーの株価下落がサプライチェーン(供給網)へのさらなる圧力を示す警告と受け止められている。
ここ数週間に三井化学や三菱ケミカルグループ、旭化成などが、プラスチック製造に不可欠な原料であるナフサ不足への懸念から相次いで減産を発表した。3社を含む関連企業の株価は紛争開始以降、東証株価指数(TOPIX)を大きく下回って推移しており、イランによるホルムズ海峡の実質的な封鎖で原油輸送を巡る不透明感が続く中で逆風に直面し続ける見通しだ。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは、「化学製品を含めさまざまなサプライチェーンが既にかなり厳しい状況になっている」と話す。日本は中東への依存度が高く、戦争が続くと市場への影響は広範かつ長期に及ぶとの見方を示した。
ペットボトル成形機を手がける日精エー・エス・ビー機械や食品包装材メーカーのエフピコは、今月これまでに株価が13%超下落。プラスチック加工機メーカーのプラコーは19%超下げた。一方、TOPIXの下落率は約7%にとどまっている。
ナフサ不足への懸念と原油価格の乱高下を背景に、出荷額で輸送用機器に次ぐ国内第2位の製造業である化学業界への負担は増している。原油を精製して作られるナフサはポリエチレンやポリプロピレンの生産に不可欠で、食品包装や玩具、おむつといった消費財から医療用注射器、自動車部品、工業用タンクに至るまで幅広く使用されている。
ブルームバーグ・インテリジェンスの若杉政寛アナリストは「こうした予期せぬ状況に企業が対応するのは難しく、在庫が十分でない可能性もある」と指摘。株価への影響はレジ袋や弁当容器を生産する日用品メーカーのほか、戦争が長期化すれば自動車や半導体製造装置メーカーなどにも波及する可能性があると述べた。
石油化学工業協会によると、日本のナフサ供給の約4割は中東からの輸入に依存しており、構造的にペルシャ湾での混乱の影響を受けやすい。同協会の工藤幸四郎会長(旭化成社長)は24日、米国や中南米、アフリカなど調達の多角化を急いでいると明らかにした。
一方、企業は値上げで材料コストの上昇を吸収できる可能性があり、株価の下支え要因になるとの見方もある。アリアンツ・グローバル・インベスターズの中塚浩二日本株最高投資責任者(CIO)は、「価格転嫁力のある製品やビジネスを確立できている企業も多い」とし、従来の成長ストーリーは維持されると予想する。
中東情勢を受けてカネカや信越化学工業、東ソーなどが既にプラスチック製品の値上げを発表している。
ただ、シティグループ証券の西山祐太アナリストはリポートで、値上げを踏まえても、出荷調整で数量が弱含むリスクや価格転嫁が追い付かないリスクなどは残ると指摘。値上げはスマートフォンやパソコン部品など「最終需要が弱い川下材料メーカー」にとって強い逆風になるとも分析した。
また、同証の山口秀丸アナリストによると、テルモなど石油由来のプラスチック成型品の使用割合が高い医療機器メーカーも悪影響を受けやすい。
サプライチェーンの混乱の程度は戦争がいつまで続くかに左右されるが、企業は終結後もその影響に対処し続けることになる。三井住友TAの上野氏は「こうしたリスクは無視すべきではない」と話した。
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