(ブルームバーグ):日本銀行の新審議委員に23日、金融緩和と積極財政を重視するリフレ派の学者2人が決まった。政策委員会の勢力バランスに大きな変化はないが、来年の審議委員人事でも高市色が反映されれば緩和志向の方に重心を移すことになる。
衆参両院の同意を経て決定したのは、31日までが任期の野口旭審議委員の後任に浅田統一郎中央大学名誉教授、6月29日までが任期の中川順子審議委員の後任に佐藤綾野青山学院大学教授を充てる人事。高市早苗首相が初めて手掛けた日銀人事で、利上げに慎重なハト派的な姿勢が鮮明になった。
日銀の最高意思決定機関である政策委員会は総裁、副総裁2人、審議委員6人の計9人で構成。野口氏は唯一のハト派、中川氏は中立派と位置付けられている。新委員の就任後はハト派が2人に増えるが、金融政策決定会合では多数決で政策運営方針を決めるため、その影響は限定的なものにとどまる。
日銀ウオッチャーが注目するのは、来年7月にそろって任期を終える高田創、田村直樹の両審議委員の後任人事だ。2人は利上げに前向きなタカ派で、政策金利を維持した昨年9月と10月の会合でそれぞれ利上げ案を提出。12月会合で現行の0.75%に引き上げた後も、高田氏は1月と今月の会合で1%への追加利上げを提案した。
大和証券の南健人シニアエコノミストは、高田、田村両委員の後任人事について「高市政権が長期化する可能性が高い状況下で、政策委員会における最もタカ派的な両委員の後任がハト派的な人物となれば、日銀内部の勢力図は大きく変わるだろう」との見方を示す。
2028年には、3月に氷見野良三、内田真一の副総裁2人、4月に植田和男総裁がいずれも任期満了を迎える。2月の衆院選で国民から圧倒的な支持を受けた高市首相が長期政権を築いた場合は、その下で日銀正副総裁の後任の人選も行われることになる。
みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストらはリポートで、一連の日銀人事を通じて「安倍政権時代のようにリフレ派を中心とした陣容へとボードメンバー全体が上書きされていく展開も想定される」との見方を示した。その場合、今回の利上げ局面での政策金利の最終到達点は切り下がる可能性が高まるとみている。
ブルームバーグが5-10日に実施したエコノミスト調査によると、今回の利上げの最終到達点(ターミナルレート)と景気を刺激も抑制もしない中立金利の予想は、いずれも1.5%(中央値)と前回1月会合前の調査から変わらなかった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは、今回の人事はむしろ来年夏の田村・高田両氏の任期満了までに政策金利を中立水準に調整するインセンティブになると指摘。そこまで引き上げておけば、「その後リフレ派が多くなっても利上げの遅れによるネガティブな影響を回避できる」とみる。
片山さつき財務相は10日の国会答弁で日銀法を引用し、日銀の金融政策は自主性が尊重されなければならないと語った。一方、政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう常に連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならないとも説明。「高市首相もよくおっしゃるので、これに尽きるのではないか」と述べた。
利上げ路線
日銀は19日の会合で政策金利の維持を決めた。植田総裁は記者会見で、中東情勢の緊迫化を受けて、景気に下押し圧力がかかっても一時的なものにとどまり、政策判断で重視する基調的物価に影響しなければ「当然利上げは可能であると考えている」と語った。4月の次回会合での追加利上げも排除はしない姿勢を示した形だ。
今月会合前のエコノミスト調査では、日銀の追加利上げは4月との見方が37%。次いで7月の29%、6月の22%となり、7月までの利上げを88%が見込む。足元の金利スワップ市場が織り込む日銀の利上げ確率は、4月会合までが約64%、6月会合までが約88%、7月会合までは100%超となっている。
オックスフォード・エコノミクスの長井滋人在日代表は、今回の人事で植田総裁の後任も利上げ慎重派となる可能性が高まったと指摘。当面は高市首相が利上げに慎重でも円安や長期金利急上昇で市場から圧力が高まれば容認せざるを得ないが、「植田体制の間に可能な限り正常化を進めたいと日銀が考える可能性もある」とみる。
--取材協力:伊藤純夫.
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