フランスのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが出資する投資ファンド、Lキャタルトンが日本で成長企業の発掘を進めている。今後3年で総額約500億円を、5社程度へ投資する計画だ。投資先は新規株式公開(IPO)を目指す飲食チェーンから地方の家具商社まで幅広い。

「成長余地のある企業を見極め、有利な条件で投資することを重視している」。Lキャタルトン日本代表の清水俊孝氏はこう話す。ほかの先進国と比べて国内総生産(GDP)成長率などで見劣りする日本だが、清水氏はマクロ環境で投資判断せず、有望な企業を発掘することに重きを置く。投資先を考える際には営業利益をひとつの指標として考えており、10億円規模を目安にしているという。

同ファンドは日本では、創業者や創業者一族が経営に携わる企業に投資してきた。対面での対話を重視しており、相対での取引を好む。入札に参加したり、他ファンドから買収したことはないという。

金額だけで勝負するのでは、「勝つのは難しい」と清水氏は話す。化粧品や食品、ペットケア、外食などコンシューマー領域で投資してきた長年のノウハウを基に、企業価値向上策の提案に力を入れる。「創業者と話すときは、投資家としてではなく、コンシューマー業界の専門家として向き合っている」という。

米国に拠点を置くプライベートエクイティ(PE、未公開株)ファンドの1つである同社は、16年に投資会社キャタルトンとLVMHのプライベートエクイティ部門が合併して誕生した。2017年に日本拠点を設立。

18年からこれまで、家具商社の関家具(福岡県大川市)や神戸牛専門店を運営する吉祥吉ホールディングス(神戸市)など累計9社に投資した。投資先企業は堅調に業績を伸ばしているといい、売上高は平均して25年に前年比でおよそ20%伸びたという。またLキャタルトンは日本企業と共同で約2800億円規模の不動産を運用している。銀座の商業施設「GINZA SIX」などがその一例だ。

日本のPE市場は、ここ数年海外のマネーを呼び寄せている。コンサルティング会社デロイトによれば、25年のアジアにおけるPE投資総額は前年比14%減少した一方、日本市場での取引は、82%増の334億ドル(5兆2600億円)となった。

上場企業の非上場化や事業売却などの案件が目立つものの、海外からの資金の流れ込みは、業績拡大を模索する非上場企業にとって、追い風になる。

首都圏を中心にワインバーなどを展開するHUGE(東京都渋谷区)も、成長を加速するためLキャタルトンの出資を受け入れた1社だ。調達した数十億円程度を使い、香港やシンガポールなどでの海外展開を進める計画で、合併・買収(M&A)も活用するという。現在150億円程度の売り上げを倍以上に伸ばし、30年をめどにIPOを目指す。

HUGEの創業者で社長の新川義弘氏は、昨年3月頃、IPOに向けて証券会社と話していたが、企業規模に物足りなさを感じていた。「本当に社員や会社にとっていい道なのか迷っていた」ところ、過去に別の案件で情報交換していた清水氏と再会。話し合いを重ねる中で出資を受け入れ、IPO前にまずは企業規模を拡大する道を選んだ。

他のファンドとも協議していたが、Lキャタルトンが持つ海外ネットワークや知見に加え、短期的なリターンのみを追求しない姿勢に魅力を感じたという。Lキャタルトン側もHUGEの離職率の低さと安定した顧客基盤を評価した。売上高の3割以上は独自の会員制予約システムの約50万人の会員が占めるという。

地方に根ざしたファミリー企業には外部の経営資源を活用する余地が大きいと、清水氏はみる。人材や国内外のネットワークなど、「国際的なベストプラクティスを提供できる」と述べ、日本での投資機会に自信を示した。

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