高市早苗首相は、原油輸入が大幅に減少する見通しとなったことから、国際エネルギー機関(IEA)の下で協調放出の決定を待たず、16日にも日本単独で備蓄を放出することを決定したと明らかにした。通常IEA加盟国と協調放出することが多いが、率先して対応するとした。

高市氏は記者団に対して、まずは民間備蓄15日分と、3月下旬以降から国家備蓄1カ月分を放出し、一刻も早く国内の精製事業者にも届けるとした。約8000万バレルにあたり、22年にロシアのウクライナ侵攻に伴う価格高騰を受けて放出した2250万バレルを大きく上回る。産油国との共同備蓄も迅速に活用するとした。供給ルートや調達の代替が確立するまでの間、備蓄分でつないでいく考えだ。

また中東情勢を背景にガソリン価格が1リットルあたり200円を超える可能性も否めないと説明。緊急的な激変緩和措置を講じ、小売価格を全国平均で170円程度に抑制する考えも示した。経済産業省によれば、170円を超える部分について全額補助し、19日出荷分から支給するという。現在の制度の残額約2800億円を活用する。

放出には、入札を通じた国家備蓄の売却や、民間備蓄では義務量を削減して在庫の取り崩しを容認する方法などがある。市場への供給を増やして需給のひっ迫を解消する措置だ。日本は単独では、原油を輸入する企業などによる民間備蓄分を放出した経験しかなく、国家備蓄分は初めてとなる。また民間備蓄分のみの放出は2011年の東日本大震災以来だ。

経産省の担当者によると、今回の放出では民間備蓄は義務量の引き下げで対応し、国家備蓄は入札ではなく随意契約で売却する。産油国共同備蓄については産油国と民間企業との交渉で詳細が今後決まる見通しだという。

主要7カ国(G7)は今週2回にわたり閣僚級会合を実施。赤沢亮正経済産業相は10日のG7エネルギー大臣会合で、IEAによる協調放出を支持すると表明。共同声明では、石油備蓄放出を含むエネルギーの安定的な供給に必要な措置を講じることを確認した。IEAも10日に加盟32カ国の当局者が参加する緊急会合を実施したが、石油備蓄放出で一致したと現時点で発表していない。

関係者によれば、IEAは過去最大にあたる約3億-4億バレルの範囲での放出を提案しているという。8000万バレルは20%から27%にあたる。

中東情勢の緊迫化に伴いホルムズ海峡が事実上封鎖され、今後日本に輸入される原油が減少する可能性がある。中東から日本への輸送には20日程度かかる。すでに開戦から10日超経過しており、あと10日程度で到達する原油タンカーが大きく減少する。

アジアは欧州などに比べて中東産の原油への依存度が高い。特に日本は原油輸入の9割超が中東産で、23年輸入量の約74%がホルムズ海峡を通過していたとされ、インパクトが大きい。

経済産業省のデータによると、昨年12月末時点で日本は国家備蓄(146日分)、民間備蓄(101日分)、産油国共同備蓄(7日分)で計254日分の石油備蓄を持つ。リスク分散の観点から北海道から九州まで全国10カ所に点在する国家石油備蓄基地で貯蔵する。

 

原油の輸入や精製を手がける企業が加盟する石油連盟の木藤俊一会長(出光興産会長)は、激変緩和措置に政府と連携して対応するほか、備蓄放出の決定を歓迎すると声明で述べた。引き続き、石油の安定供給に万全を期すとした。

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