(ブルームバーグ):9日の日本市場は株式が急反落。日経平均株価は2月27日に付けた終値ベースの最高値から10%超下落し、テクニカル面での調整局面入りを示唆した。イラン戦争の長期化への懸念から原油価格が急騰し、投資家のリスク回避姿勢が強まった。
債券はインフレ懸念に加え、財政拡張への警戒感から超長期金利が急上昇(相場は急落)。円は対ドルで158円台後半と約1カ月半ぶりの安値を付けた後、158円台半ばにやや値を戻している。
イランは米国とイスラエルの攻撃で殺害された最高指導者ハメネイ師の後継者として息子のモジタバ師を選出。対米強硬路線を継続するとみられており、戦争長期化への懸念から原油価格は一時1バレル=120ドル近くまで上昇した。その後は主要7カ国(G7)が石油備蓄の共同放出について協議するとの英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道を受けて上げ幅を縮小した。
ニッセイアセットマネジメントの伊藤琢チーフ・ポートフォリオ・マネジャーは、原油高で気になるのは米国経済がスタグフレーションに陥るリスクだと指摘。雇用が減り始めているところでインフレとなれば、米国経済が腰折れしかねず、「株式市場にとっては万事休すだ」と述べた。
石油備蓄の共同放出に関する報道について、SMBC信託銀行の山口真弘投資調査部長は「足元の懸念を緩和する材料」としつつ、ホルムズ海峡の事実上の封鎖を解決しないと供給懸念は残り、「根本的な解決にはならない」と指摘。共同放出が実現しても「日本株の反応は小幅にとどまり、株価が底入れするほどのインパクトはない」との見方を示した。
株式
株式相場は大幅反落。中東の戦争激化を受けて原油価格が急騰し、景気や企業業績が悪化するとの懸念が強まった。米国の雇用情勢が軟化したことも嫌気され、リスク回避の売りが膨らんだ。
日本経済新聞のウェブサイトによると、日経平均の下げ幅(2892円12銭)は2024年8月5日(4451円28銭)、米国のブラックマンデーを受けた1987年10月20日(3836円48銭)に次ぐ過去3番目の大きさ。
電機や精密機器、機械、非鉄金属といった人工知能(AI)関連、輸出関連銘柄が大幅安。プライベートクレジット業界への不安で米金融株が下落した流れが波及し銀行や証券など金融株も安く、東京証券取引所の全33業種が下落した。
フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッドは、年初来から日本株を買っていた投資家はまだ利益確定売りができる水準で「リスクポジションを落とす段階にある」と話す。こうした動きが終わるまで本格的な相場の反発は見込めないと述べた。
債券
債券相場は超長期債を中心に大幅下落。原油高と円安を受けたインフレ懸念から売りが加速した。
T&Dアセットマネジメント債券運用部の浪岡宏チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャーは、原油価格高騰が輸入物価の上昇を通じて物価やインフレ期待を押し上げるとの懸念と、政府がその影響を和らげようと財政を拡張させることへの懸念が混じり合っていると語る。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、インフレ懸念や財政拡張懸念に加え、「年限が長いゾーンほど価格変動リスクが大きいため、リスク削減の動きもあって超長期債の下落幅(金利の上昇幅)が大きくなっている」と指摘。超長期金利は年度内に1月20日のピークを超える可能性も十分あるとの見方を示す。
11日には日銀の金融政策に敏感に反応する5年利付国債の入札が行われる。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは「利上げの後ずれはポジティブだが、日銀がインフレに対して後手に回って利上げ幅が大きくなることはネガティブだ」と指摘。金利上昇、低下いずれのリスクもあり「取り組みづらい」と話す。
新発国債利回り(午後3時時点)
為替
円は対ドルで158円台半ばに下げ幅を縮小。G7が9日の緊急会合で石油備蓄を共同で放出する可能性について協議するとのFT報道を受けて原油価格の上昇がやや止まり、これまで買っていたドルを売る動きが出た。
外為どっとコム総合研究所の中村勉為替アナリストは、円が売られやすい状況に変わりはなく「160円台にじりじりと下落してもおかしくない」と話す。
みずほ銀行国際為替部の長谷川久悟マーケット・エコノミストは、イラン戦争や原油高を受けたドル高は投機的な動きではなく、ファンダメンタルズ要因だと指摘。ドル・円相場が160円に接近しても「日本の金融当局が円買い介入を行うのは難しい判断になる」との見方を示した。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:長谷川敏郎、アリス・フレンチ、我妻綾、深瀬敦子、佐野日出之.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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