(ブルームバーグ):欧米の制裁で空軍が弱体化したイランは、ミサイルとドローン(無人機)への投資を大幅に強化した。その結果、米情報機関が中東「最大の備蓄」と2025年3月に断定した規模の関連システムを構築するに至った。
こうした脅威の無力化は、米国とイスラエルが長く掲げてきた目標だ。両国はイランとの戦争において、他の軍事目標と並行してミサイルやドローンの拠点を攻撃。ただ、これらのシステムは広範囲に分散されているほか、しばしば隠蔽(いんぺい)され、場合によっては移動式だ。このため破壊は容易ではない。
イラン軍はこうした兵器を用いて、イスラエルや中東に展開する米軍、さらには域内の幾つかの国の標的を攻撃している。イランの発射体の大半は迎撃されているが、一部は着弾し致命的な被害をもたらしている。
なぜ懸念の焦点がミサイルとドローンなのか
イランは数十年にわたり、ドローンやミサイルの破壊力強化を図ってきた。最も射程の長いものは東南欧を射程内に収めている。
イランが核兵器を開発するとの懸念が高まれば、事態は一段と深刻化する。弾道ミサイルは、技術的要件を科学者らが克服した場合、相当な距離から核兵器を運搬する能力をイランに与えることになる。
イランはミサイルやドローン、あるいはその製造技術を、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派を含む域内の親イラン民兵組織に輸出。これらの組織のスタンドオフ能力、すなわち標的地域から直ちに反撃を受けることなく遠距離から攻撃する能力が強化された。
実際に、イスラエルへの攻撃や紅海での船舶攻撃にスタンドオフ兵器が使用されている。フーシ派は19年のサウジアラビアの石油処理施設への壊滅的な攻撃について犯行声明を出しており、サウジ側はこの攻撃を巡りイランを非難した。
イランはこれまでの交戦局面でも、米国およびイスラエルの標的に対してミサイルやドローンを投入してきた。20年に米軍がイラクでイランのソレイマニ司令官を殺害した後や24年4月および10月のイスラエルとの交戦、さらに米国も関与した25年6月の別の局面で使用された。イスラエル軍は同月、当時イランが保有していたミサイル発射装置の3分の1を破壊したと発表している。
低コストのイラン製ドローン「シャヘド」は、ロシアのウクライナ侵攻でも中核的な役割を果たした。ロシアは全面侵攻の初期にイラン製無人機を輸入し、その後に大規模生産を開始した。
ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)によると、25年3月までにロシアはウクライナの防空網を弱体化するため、週1000機のシャヘドを発射していた。シャヘドは防空網をすり抜けて人的被害を含む損害を与える能力を示している。
イランはどれだけのミサイルやドローンを保有しているのか
イスラエル軍は、今回の紛争開始時点でイランが2500発の弾道ミサイルを保有していたと推定している。戦闘開始以降、イランは近隣諸国に数百発を発射し、イスラエルはさらに数百発を空爆で破壊したと発表した。
イスラエル当局はイランのドローン保有数について推計を示していない。ただ、イランはミサイルよりもはるかに多くのドローンを保有しているとみられている。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の防衛担当責任者ベッカ・ワッサー氏の分析によると、ロシアはシャヘドを1日当たり数百機のペースで生産可能だという。
イランはどのような種類のミサイルを保有しているのか
弾道ミサイルは、イランのスタンドオフ戦力の中核を成す。これらの兵器は飛行開始後のロケット推進段階で誘導され、その後は推進力がないまま軌道を描いて事前に設定された標的に弾頭を到達させる。
イランは短距離および中距離の弾道ミサイルに関し、それぞれ約6種類を保有していると考えられている。また、飛行中に操作可能な巡航ミサイルも保有している。
イランはどのような種類のドローンを保有しているのか
イランはよく練られた軍用ドローン計画に基づき、多様な無人戦闘機を生産している。イランは最新型ドローン「シャヘド149」が最大4000キロメートル飛行し、最大500キログラムの弾薬を搭載可能だと主張している。
イランのドローンの多くは、任務からの帰還を前提としていないため「カミカゼ」と呼ばれる。CSISによれば、価格は2万-5万ドル(約315万-790万円)程度とされる。
イランのミサイルやドローンに対する防衛策は何か
イランが攻撃した中東諸国、すなわちイスラエルとサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、クウェート、カタール、ヨルダン、イラク、オマーンは、それぞれ能力の異なる防空システムを備えている。飛来する脅威を探知して迎撃ミサイルを発射する設計だ。
中でもイスラエルのシステムが最も高度とされる。米国は中東に展開している米軍を防衛するため、海域に配備した米海軍艦艇にミサイル迎撃能力を持たせているほか、地上ではパトリオット防空ミサイルや高高度防衛ミサイル(THAAD)を運用している。
今年1月には、米軍がカタールのアルウデイド空軍基地に拠点を置く新組織の創設を発表し、米国と域内パートナー間の防空・ミサイル防衛の連携強化を図った。それ以前にも、米国はカタールおよびバーレーンと指揮所(CP)を開設し、両国軍との防空作戦の統合を進めていた。
それでも、イランのミサイルやドローンの一部は攻撃対象国の防衛網を突破している。これらの防衛システムが時に機能不全に陥ることに加え、紛争が長期化すれば迎撃ミサイルが不足するリスクもある。
弾薬は急速に消耗し得る。一般的な軍事ドクトリンでは命中確率を高めるため、1つの飛来目標に対して2、3発の迎撃ミサイルを発射すると想定されている。
原題:What Are Iran’s Missile and Drone Capabilities?: QuickTake(抜粋)
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