(ブルームバーグ):3日の米金融市場では株式と国債相場がいずれも下げ幅を縮小した。イランでの戦闘が引き続きあらゆる資産クラスで激しい値動きを誘発したが、トランプ米大統領が海上輸送路の確保に向けて行動を起こすと表明したことで、原油価格が上げ幅を縮めた。
ドルは対円で一時158円目前まで買われたが、その後は伸び悩んだ。
S&P500種株価指数は一時2.5%安。ダウ工業株30種平均は1200ドル超下げる場面もあった。
トランプ氏はホルムズ海峡を航行する石油タンカーやその他の船舶の安全を確保するため、米国が保険と海軍による護衛を提供すると明らかにした。
中東での紛争は地域全体に波及し、イスラエル軍はイランの大統領府や最高安全保障委員会(SNSC)など、同国指導部が利用するテヘランの建物を空爆したと発表した。 イランはカタールやバーレーン、オマーンに向けてミサイルを発射した。カタールによれば、攻撃を受けたのは軍関連施設にとどまらないという。カタールとイラクは主要エネルギー施設での生産を停止した。
フォレックス・ドット・コムのファワド・ラザクザダ氏は、「市場はニュースに一喜一憂する展開となっている」と指摘。「緊張が安定に向かうのか、それとも世界的な供給混乱の長期化につながるのかに大きく左右される」と述べた。
ラファー・テングラー・インベストメンツのナンシー・テングラー氏は、「市場がきょう反応しているのは、事態が当初想定よりも長期化するという見方だ。だが私はそうなるとは思っていない」とし、「こうした問題は落ち着くのを待つ必要があり、数週間かかる可能性はある」と述べた。
キャピタル・エコノミクスのジェニファー・マキューン氏は、紛争が長期化し、原油価格が1バレル=90-100ドルで高止まりすれば、経済にとって大きな逆風になると指摘。一方で、中央銀行がこうしたショックを一時的なものと見なし、利上げを回避すれば悪影響は限定されるとの見方を示した。ただし、利下げは遅れる可能性が高いと付け加えた。
ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザカレリ氏は、総じて軍事行動は市場に短期的な混乱をもたらすが、経済への影響が限定的にとどまる限り、軍事介入の規模・範囲が明確になれば相場は完全に回復すると指摘。
「今回の事態が月間を通じてどのように展開するのか判断するのは時期尚早だが、市場が過剰反応し、必要以上に売り込むような場面があれば、投資機会を探りたい」と話した。
国債
米国債は小幅続落。原油価格の上昇を受けて、連邦準備制度理事会(FRB)の年内利下げ見通しが後退した。
2年債利回りは一時12ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上げて3.59%と、年初来の高水準に接近した。短期金融市場では、年内に2回目の利下げが実施される確率を約80%と織り込んでいる。先週末時点では2回の利下げを完全に織り込んでいた。
UBSのチーフストラテジスト、バーヌ・バウェジャ氏は「市場はインフレを意識している」と指摘。その上で、債券相場の動きは「行き過ぎだ。原油を巡る問題が長引けば、成長の問題に発展する。FRBは当面様子見できるが、その後は徐々にハト派に転じるだろう」と話した。
FRBは1月に利下げを停止し、先週時点では7月会合まで再開は見込まれていなかったが、その後、市場のコンセンサスは9月へと後ずれした。
アメリベット・セキュリティーズの米金利責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は「エネルギー価格が上昇する中、FRBは現状をシステムへのショックと捉えるだろう」と指摘。「ただ、FRBはすでに様子見姿勢にあった。追加利下げ観測が後退するのは妥当だ。ここ最近のイベント以前から妥当だった」と述べた。
TDセキュリティーズの米金利ストラテジスト、モリー・ブルックス氏は「FRBの観点からすれば、労働市場が底堅さを維持する限り、原油急騰の影響を見極めるために、より長期にわたって据え置く論拠が強まることになる」と語った。
ミシュラー・フィナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディ・ガロマ氏は、原油価格の上昇は「金利低下への追い風にはならない」と指摘。中東での紛争が長期化する可能性を踏まえ「2026年のFRB利下げについて、誰もが再評価する必要がある」と述べた。
外為
外国為替市場ではドルが続伸。2日間の上げ幅として昨年4月以来の大きさとなった。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時1.3%上昇。ドルは主要通貨に対して全面高となり、対円ではロンドン時間に一時0.4%高の1ドル=157円97銭を付けた。
パイオニア・インベストメンツのストラテジスト、パレシュ・ウパダヤ氏は、「こうしたリスク回避や不確実性の高い局面で、ドルは安全資産の王者として典型的な動きをしている」と指摘。「単なるリスク回避や質への逃避を超え、市場は世界経済の成長見通しやインフレ見通しまでも問い直し始めている」と述べた。
世界の基軸通貨としてのドルの地位に対しては疑念が広がっていたが、ここへきてのドル需要の高まりはその反証となっている。トランプ大統領の貿易戦争を受けて広がった「通貨価値の下落(ディベースメント)」論を抑え込む格好だ。
ロード・アベットのポートフォリオマネジャー、リア・トラウブ氏は「中東からの石油・天然ガス供給の混乱は、米国よりもアジアや欧州に悪影響を及ぼす可能性がある。米国は自国で天然ガスを生産しているためだ」と指摘。「ドルは安全通貨として本来あるべき地位を取り戻した」と話した。
米国とイスラエルによるイラン攻撃開始を控えて、市場ではドルが下落するとの見方が広がっていた。米商品先物取引委員会(CFTC)の最新データをブルームバーグが2月24日までの集計として報じたところによると、デリバティブ市場ではドル安を見込むポジションが約190億ドル(約3兆円)と、昨年のピーク時並みの水準に膨らんでいた。
BMOアセット・マネジメントのマネジングディレクター、ビパン・ライ氏は「今回のドル上昇は市場のポジション動向を把握することがいかに重要かを再認識させるものだ」と指摘。「過去数カ月にわたり、ヘッジ需要の高まりを背景にスポット市場でドルのネットショートが積み上がっていたが、この流れは当面一巡した可能性が高い」と続けた。
原油
原油相場は続伸。米国とイスラエルがイランに対する軍事行動を強化し、ペルシャ湾のエネルギー資産への影響が一段と深まった。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物は2営業日としては4年ぶりの大幅高となった。トランプ大統領が、ホルムズ海峡を航行する船舶を護衛し、保険を提供すると明らかにすると、通常取引後の時間外取引で伸び悩んだ。
トランプ氏はホワイトハウスでこれより先、記者団に対し、原油価格は「やや高い」としつつも、紛争が終結すれば「価格は下がるだろう」と述べた。市場参加者の間では、トランプ氏の公約であるガソリン価格の低位維持に向け、米政府が措置を講じるのではとの思惑が広がっている。
エネルギー価格の上昇はすでに、経済成長見通しや、中央銀行がインフレを抑制する能力に影を落としている。
イラクはルマイラ油田で生産を停止し、危機が長引けば日量約300万バレルの生産を削減する構えだと関係者が明らかにした。重要な海上輸送ルートであるホルムズ海峡での輸送制約により、イラクの一部の貯蔵タンクでは空き容量が不足しつつある。
サウジアラビアは紅海経由での供給拡大を検討している。紅海は依然として安全とは言えず、イエメンの親イラン武装組織フーシ派は、同海域を航行する船舶への攻撃を再開する可能性を警告している。
北海ブレント原油はわずか2日間で11%急騰し、3日には2024年7月以来となる1バレル=85ドルを上抜く場面もあった。その後、国際エネルギー機関(IEA)が文書で、石油市場の安定化に向け支援する用意があることを示すと、価格はやや上げ幅を縮小した。
ナターシャ・カネヴァ氏らJPモルガン・チェースのアナリストはリポートで「ホルムズ海峡が依然として機能していない中、時間は刻一刻と過ぎている」と指摘。貯蔵施設が満杯になれば、ペルシャ湾の一部産油国が数週間以内に生産を削減する可能性があると警告した。
ただ、価格上昇については「紛争の地理的な広がりが極めて大きく、エネルギーインフラにも接近しているにもかかわらず、抑制されている。これは相当なリスクプレミアムがすでに織り込まれていることを反映している」と付け加えた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物4月限は、前日比3.33ドル(4.7%)高の1バレル=74.56ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント5月限は4.7%上昇し81.40ドル。
金
金スポット相場は5営業日ぶりに反落。金融緩和観測の後退やドル高に加え、中東情勢の緊迫化を背景に急落した株式市場での損失をカバーする換金売りが重しとなった。
今週に入ってドル指数が上昇し、債券利回りも上昇した。米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ幅を巡る臆測が弱まったためだ。イランを巡る戦闘激化に伴いエネルギー価格が急騰し、インフレリスクが高まれば、FRBなどの主要中央銀行は金利を据え置くか、引き上げざるを得なくなる可能性がある。
実際、短期金融市場では年内2回の0.25ポイント利下げの確率が80%に低下した。前週末の時点では、2回の利下げを完全に織り込んでいた。金はドル建てで取引され、利息を生まない資産であるため、ドル高と債券利回り上昇はいずれも金にとって逆風となる。
ソシエテ・ジェネラルの商品ストラテジスト、マイケル・ヘイグ氏は、3日に株式相場の下げが一段と深まったことで、一部の投資家はポートフォリオの他の部分で発生したマージンコール(追加証拠金請求)に対応するため、金属のポジションを手じまわざるを得なくなり、金相場の重しとなったと分析した。
コメルツ銀行の外国為替・商品調査責任者、トゥ・ラン・グエン氏はリポートで、「2022年にウクライナ戦争の勃発で原油価格が上昇し、世界的にインフレが加速した経験が、今回の青写真になる可能性が高い」と指摘。当時はFRBが早期に利上げに踏み切り、その結果ドルが上昇し、金は年間を通じて下落傾向にあったと述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時33分現在、前日比212.45ドル(4%)安の1オンス=5109.67ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は187.90ドル(3.5%)安の5123.70ドルで引けた。
原題:Stocks and Bonds Fall as Oil Surge Rattles Traders: Markets Wrap(抜粋)
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