英国軍のキプロス基地は無人機(ドローン)の攻撃を受けた。フランス軍が駐留するアブダビの基地施設も標的となった。イタリア軍が展開するクウェートの基地も被災した。ホルムズ海峡の外側で船舶が列をなす中で、サウジの石油施設が攻撃に遭い、バーレーンやカタール上空にもミサイルが飛び交う。ペルシャ湾岸地域の空域は閉鎖された。

米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始してからわずか48時間余りで、戦争は急速に拡大している。

戦争の当事国ではないと主張する国々も既に巻き込まれ、領内の基地やインフラ、住民がイランの報復攻撃にさらされている。米国の同盟国はある時点で、選択を迫られるだろう。米軍の活動をどの程度まで受け入れるのか。「防衛」支援をどこまで拡大するのか。自国の領土が攻撃された時、どう対応するのか。戦闘が長引くほど、傍観を続けることは難しくなる。

戦争に引きずり込まれれば、協力に消極的な対応をとるとしてもリスクがある。限定的な関与であっても結果を伴う。

今日使用される基地が、明日の標的となり得る。政府が限定的な役割に徹し、ミサイル攻撃が終わるとしても、その後かなり経ってから再度の攻撃や代理勢力による攻撃、あるいは数年後のテロといった形で報復に見舞われる恐れもある。

一部の指導者にとって、その判断は極めて難しい。米国への協力を拒めば、トランプ大統領との関係は決定的に悪化するだろう。肩入れすれば、新たな中東戦争を警戒する国内世論の反発に遭う。

欧州外交評議会(ECFR)の調査担当ディレクターでオバマ政権の政策担当者でもあったジェレミー・シャピロ氏は、「支持することも、支持しないこともできない立場に同盟国は置かれている」と指摘。「嫌だろうが、支持しないわけにもいかない。自国の防衛に米国が深く関与しており、イラン政権があまりにおぞましいからだ」と論じた。

石油ターミナルや製油所、空港、海上航路が全てイランのミサイルや無人機(ドローン)の射程圏内にあるペルシャ湾岸諸国は、どこよりも差し迫った危険に直面している。

ミサイルやドローンの直撃は回避できても、迎撃や落下した破片でこれまでに地上で被害が出ている。アラブ首長国連邦(UAE)は死者の発生を明らかにし、ドバイやアブダビの空港が攻撃を受けた。サウジアラビアは、国内最大級の製油所であるラスタヌラが標的になり、操業を停止した。隣国イエメンの親イラン武装組織フーシ派は、世界的な海上輸送への攻撃を再開すると誓った。

湾岸諸国の政府は公には自制を求めている。だが、緊急会合では、米国とイスラエルの軍事作戦には加わらないと強調しつつ、自衛のために対応する権利は留保していることを明確にした。

湾岸地域を拠点とする西側高官は、同地域にはトランプ氏がイスラエルのネタニヤフ首相にけしかけられて戦争へと突き進み、今や当初の意図よりも深く関与する羽目に陥ったと考えている国もあると説明。自国民を守る方法を各国の指導者が模索する中で怒りが高まりつつあり、トランプ氏に勝利を宣言させて撤退するよう説得することが唯一の出口かもしれないと、この西側当局者は続けた。

トランプ氏はこの軍事作戦が3日間で終わると話したかと思えば、4-5週間、または必要な限り続けるとも主張。イランの自由のためだと述べることもあれば、体制の残存勢力と交渉する意思も示すなど、発言に矛盾が多いことも状況を複雑にしている。

欧州では米国と最も緊密な同盟関係を持ち、危機に際して歩調を合わせることの多い英国も、厳しい選択に直面している。

米国の軍事行動に先立つ数週間、英国は法的および政策上の懸念を理由に、インド洋に浮かぶ島にあるディエゴガルシア共同基地およびイングランドの空軍基地の使用を米国に許可せず、攻撃が実行された際には、英国は自らは関わっていないと強調。政府閣僚らは、作戦が合法だと考えているかどうかについて明言を避けた。

スターマー首相率いる労働党は、ブレア元首相が2003年のイラク侵攻に参加した決断で生じた傷をいまだに抱えている。スターマー氏は「イラクの過ち」を繰り返さないことが必要だと訴えた。

それでも同氏によると、イランが英国の軍事基地や民間人、湾岸地域の同盟国に対して脅威を強める中で、「限定的な防衛目的」であれば、米軍に英国の施設利用を認めることは国際法の範囲内だと英政府は結論づけたという。この発表直後に英空軍のキプロス基地がドローンの攻撃を受けたが、これは首相の発表前に発射されたもので、報復ではないと軍は判断している。

トランプ氏はデイリー・テレグラフ紙に対し、イラン攻撃のためのディエゴガルシア基地使用を当初阻止したスターマー氏に「深く失望した」と述べ、施設の使用許可を出すのに「時間がかかり過ぎた」と批判した。これは、近い関係にある同盟国であっても、トランプ氏がいかに早く態度を翻すかを示すものだ。

「米英の間で、こんなことはおそらくこれまで一度もなかった」とトランプ氏は述べた。

実際には、まれではあるが、前例がないわけではない。1960年代の労働党政権を担ったウィルソン首相(当時)は、ベトナムへの英軍派遣を求める米国の圧力に、逸話が残るほど強く抵抗した。

明確な一線

他の欧州諸国は、より明確な一線を引こうとしている。

フランスとドイツは英国とともに共同声明を発表し、防衛活動の余地は残しつつ、当初の攻撃には参加していないと協調した。欧州の当局者は事態のエスカレートを警戒し、自ら始めたわけではない戦争に引きずり込まれることに不安を抱いている。

だが、欧州諸国の基地や職員は、拡大する戦争の圏内にある。

アブダビではフランス軍施設が被災。クウェートでイタリア軍を受け入れている基地も攻撃を受けたが、イタリア兵に負傷者は出なかった。

マクロン大統領は1日、米国とイスラエルのイラン攻撃で、中東におけるフランスの「防衛体制を強化する」と発言。イランの標的となっている国々とは、既存の防衛協定の下で「連帯する」と表明した。

欧州のある上級外交官は、今回のイラン攻撃で、中東での戦争を支援するには米国が欧州に基地や資産を維持することがいかに重要であるかが米国にとって明らかになったとの見解を示した。

別の欧州当局者は、欧州自身のアプローチにも矛盾があると指摘した。民主主義を求めるイランのデモ参加者との連携や、イランの核兵器取得阻止を望む一方で、その目標の達成に向けて具体的な行動を取る用意はないからだ。

それでもドイツ・マーシャル基金のシニアフェローで、イタリア政府の政策当局者だったベニアミーノ・イルディ氏は、トランプ氏が欧州の同盟国と調整していないことが、欧州に参加を説得するのをより難しくしていると述べた。

「戦術的な行動も戦略的な目標も同盟国と調整されていないのであれば、なぜリスクを負って関与する必要があるのか理解しづらくなる」と同氏は語った。

原題:Trump’s Iran War Widens, Forcing Reluctant Allies to Choose(抜粋)

--取材協力:Alex Wickham、Andrea Palasciano、Donato Paolo Mancini、Alberto Nardelli、Samy Adghirni.

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