米連邦最高裁がトランプ米大統領の上乗せ関税を無効とした判決を下した。継続中の課税という避けがたい現実が引き続き脅威として残る中、世界各国の貿易相手国が交渉してきた一連の通商協定に、新たな混乱が生じている。

ブルームバーグ・ニュースは23日、欧州連合(EU)の欧州議会が米国との協定の批准プロセスを凍結する方針だと報じた。この報道を受けて、欧州株は取引時間中の安値をつけた。一方、インドの貿易当局者は、通商協定の暫定合意締結のための訪米を延期した。

トランプ氏は23日、自身のソーシャルメディアに「米国を数年、いや数十年にわたって『食い物』にしてきた国々が、ばかげた最高裁の判断をもって『駆け引き』しようとするなら、はるかに高い関税に直面することになる。最近合意したばかりの協定よりも、悪い取引を突きつけられるだろう」と投稿した。

トランプ政権は20日の判決後、従来の関税に代わり、米国への輸入品に一律15%の新たな関税を課す計画を早期に発表した。これにより、中国や英国のような一時的な勝者と敗者が生まれる一方で、実際に米国企業や消費者が支払うことになる、全体の加重平均関税率はわずかに低下する程度だ。

米政府高官は、最高裁の判決により、米国と相手国との合意が崩れることはないとしている。

最近では、グリーンランドの支配権を狙うトランプ氏の試みに対し、欧州が強く反発した。このため、既存の合意からの後退は、新たな駆け引きと混乱を招きかねず、2期目のトランプ氏がもたらす貿易戦争をこれまで何とか乗り切ってきた世界経済にとって、新たな混乱の火種となるリスクがある。

新たな15%の関税は、1974年通商法第122条に基づく。同条項は「大規模かつ深刻な」国際収支の赤字など特定の状況下で、大統領が議会の承認なしに最長150日間関税を課すことを認めている。

RBCキャピタル・マーケッツのマイク・リード氏は「最高裁判決は政権の関税政策への重大な打撃に見えるが、貿易政策は他の手段で推進可能だ」と指摘する。

不透明感の再燃が投資心理を冷やしたことで、米国株は売られ、ドルは0.3%の下落分を取り戻した。とはいえ、2025年4月にトランプ氏が一方的な上乗せ関税を発表し、数カ月にわたる交渉が始まった際の劇的な変動と比べると、動きは小幅だ。

判決は、関税を負担する米企業や消費者にとってほとんど救済にならない。ゴールドマン・サックス・グループのデビッド・メリクル氏らエコノミストは、最高裁判決と新たに発表された15%の関税の組み合わせにより、2025年初頭からの実効関税率の上昇幅が10ポイント強から9ポイントに縮小すると試算している。

不確実性

シンガポールのガン副首相は22日のブリーフィングで、最高裁判決と新たな15%関税について「私たちが今、極めて予測不能で不確実な事業環境に直面していることを痛感させるものだ。真のキーワードは不確実性だ」と語った。

シンガポールのガン副首相

ガン氏によると、シンガポール政府は、新たな15%のグローバル関税が同国に適用されるかどうかについて、米国当局に明確化を求める方針だ。シンガポールは従来の枠組み下では、最低税率となる10%のベースライン関税が適用されていた。

一方で、英国やオーストラリアなど、通商合意より高い関税に直面する経済圏もある。アジア地域の多くの当局者は、様子見の姿勢を続けている。

インドネシア大統領府は21日、プラボウォ大統領が「あらゆる可能性に備えている」との声明を発表した。インドネシアは、19日に米国との合意を最終決定したばかりだ。

韓国大統領府はブルームバーグの問い合わせに対し、情勢を注視しており、国益に最も資する方向で対応すると回答した。日本の自民党の重鎮は、米国の関税措置を「本当にひどい」と評した。

代替手段

チェタン・アーヤ氏率いるモルガン・スタンレーのエコノミストによると、アジア向けの関税率は加重平均で20%から17%、中国産品への関税は平均32%から24%に下がる見込みだ。トランプ政権は関税体制を再構築し、業種別・経済圏別関税の導入を目指すため、この緩和は一時的な可能性もある。

米連邦最高裁の判断は、中国の習近平国家主席にとっては勝利となるが、中国当局の反応は慎重だ。商務省報道官は23日、「動向を注視し、自国の利益を断固として守る」と述べた。トランプ氏は3月31日に訪中する。

米国はこれまで、通商法第301条と第232条に基づいて中国製品や自動車、金属を調査し、関税賦課に利用してきた。こうした代替的な法的権限により、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠とした関税を無効とする判決にもかかわらず、トランプ政権にはさらなる関税を課す可能性が残されている。

米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のマネージングディレクター兼公共政策責任者のリビー・カントリル氏は「トランプ氏は関税が効果的で、貿易赤字は悪だと本気で信じている。同氏が持つ手段を考慮すれば、トランプ氏がホワイトハウスにいる限り、関税と通商政策の不確実性は続くと予想すべきだ」と述べた。

世界各国の対米通商協定に、新たな混乱が生じている

原題:Global Trade Confusion Returns as Trump Overhauls Tariff Toolkit(抜粋)

(トランプ氏の発言などを追加し更新します)

--取材協力:Ben Otto、Yian Lee、Angus Whitley、Joanna Ossinger.

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