米富豪のジェフリー・エプスタイン氏は性犯罪で有罪判決を受けた後も米ハーバード大学の学生団体に多額の寄付を続け、有名人や資産家、文化人が集う年次パーティーでは、自身のテーブルを「ガールズ」で埋めることができた。

「ヘイスティー・プディング・インスティテュート・オブ・1770」は、ハーバード大の社交クラブや劇団、アカペラグループを束ねる非営利団体。エプスタイン氏はこの団体に年5万ドル(現在のレートで約766万円)以上を寄付することで、少なくとも2013年から19年までニューヨークで開催された年次ガラで「ガーディアン・オブ・ザ・スフィンクス」の称号を得ていた。

同氏が年次ガラに最後に招かれたのは、連邦の性的人身売買罪で起訴され、その後、19年8月にニューヨーク市マンハッタンの拘置施設内で首をつって死亡しているのが見つかる数カ月前のことだった。当局は、自殺と結論付けている。

米司法省が公開した「エプスタイン事件」関連文書には、アシスタントが送信したメールも含まれ、エプスタイン氏がよく自身のテーブルを知り合いの女性で埋めていたことが示されている。

プラザホテルで開かれたヘイスティー・プディング・インスティテュート・オブ・1770「オーダー・オブ・ザ・ゴールデン・スフィンクス・ガラ」(2015年)

エプスタイン氏のアシスタントは15年、「ハロー、ガールズ!ジェフリーが4月13日にプラザホテルで開かれるヘイスティー・プディング・ガラにぜひ出席してほしいと言っています」と伝えるメールを送信。

「出席できるかどうかと、10人にするためにほかに誰を招待できるか教えてください(もちろんJEの承認が必要ですが ;)」とも記されていた。司法省はこのメールの受信者名を黒塗りして公開した。

別の招待客には、「高級ドレスと靴を着用」する機会があるとアピールしていた。

司法省の公開資料に含まれる膨大なメールは、エプスタイン氏が名門大学を含む各種機関を自身のネットワークの一部として利用していた実態を明らかにしている。

また、新たに公開された教授や寄付者、各種団体とのやり取りからは、ハーバード大とエプスタイン氏との結び付きが従来知られていた以上に深い可能性も示唆されている。

ヘイスティーのウェブサイトによれば、同団体は「ハーバード体験の基盤」だという。この種のクラブとしては米国で最も歴史があり、会員には元米大統領5人が名を連ねる。「世界にこれほどの大学組織は他にない」とうたっている。

ハーバード大の広報担当者は、エプスタイン氏のヘイスティーへの関与についてのコメント要請に応じなかった。

司法省の公開文書によると、エプスタイン氏は13年から死亡するまでにヘイスティーに少なくとも37万5000ドルを寄付した。この金額は学生新聞ハーバード・クリムゾンが先に報じていた。

「深く後悔」

公開文書に含まれる電子メールによれば、エプスタイン氏は18年に不動産業界の大物でヘイスティーの会長を務めるアンドリュー・ファーカス氏に対し、ガラで10人分のテーブルが必要かどうかを尋ねた。

ファーカス氏は「イエス、プリーズ」と返信した。司法省が公開した資料には、両者の間で交わされた2000通近いメッセージが含まれ、2人の関係は10年以上に及んでいた。

ファーカス氏(2015年)

ヘイスティーは電子メールで、「常に正しい行いに力を注いでいる」とコメント。また、同団体による人身売買被害者を支援するチャリティーへの寄付額は、エプスタイン氏がヘイスティーに寄付した金額を「はるかに」上回ると説明した。

一方、ヘイスティーの演劇クラブ「ヘイスティー・プディング・シアトリカルズ」の学部生を代表する広報担当者は、現在のスタッフやクルー、キャストはエプスタイン氏とは無関係だと述べた。

同氏による「われわれの組織への過去のいかなる寄付も非難されるべきものであり、決してあってはならなかった。当該寄付はシアトリカルズの価値観と文化と完全に相いれない」と指摘した。

ファーカス氏は電子メールで、「私はこの人物に出会ったこと自体を深く後悔しているが、不適切な行為に及んだことは一切ない」と表明。「いかなる不正行為や不適切行為の証拠も存在していない」と主張した。

ハーバード大は長年、エプスタイン氏を巡る問題を抱えていることを認識しており、複数の調査を開始している。

司法省の公開文書によれば、エプスタイン氏は同大の主要寄付者らと交流・協働し、大学教授と書簡を交わし、知人やその子どもの入学について助言していた。メールでキャンパスでの会合計画に言及することも多かった。

ハーバード大が20年に公表した報告書によると、同大は1998年から2008年までの間にエプスタイン氏から900万ドルを超える寄付を受け取り、研究や教員の活動支援に充てていた。エプスタイン氏は08年、未成年者の売春あっせんなどを含む罪をフロリダ州の裁判で認めている。有罪判決後にエプスタイン氏からの寄付は受けていない。

ハーバード大は11年、1982年卒のファーカス氏の貢献をたたえ、「ニューカレッジシアター」を「ファーカスホール」に改称すると発表。2013年には同氏がハーバード幹細胞研究所に少なくとも10万ドルを寄付することを誓約したと記録されている。

ファーカス氏は同年、ヘイスティーのガラを開始。その影響は、同団体の税務記録にはっきりと表れている。12年の寄付は19万7898ドルだったが、13年には160万ドル近くへと急増した。

原題:‘Hello Girls!’: Epstein Grew Harvard Ties With Hasty Pudding (1)(抜粋)

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