(ブルームバーグ):100歳を超えて長生きする人の中には、喫煙を続け、強い酒を飲み、あるいは毎晩欠かさずビールを1本空ける人もいる。別の人は、日課のようにアイスクリームを楽しんだり、ドクターペッパーを一日に3杯も飲んだりしている。
こうした逆説があるからこそ、超長寿を研究する複数の科学者は、「寿命は遺伝が約5割、環境が約5割」とする最近の研究結果に、さほど驚かなかったのだろう。寿命に占める遺伝の寄与度は、従来の研究で想定されていたより大幅に高い水準だ。
しかし、この研究が示すのは、人生の長さが遺伝子によって最初から決められているという単純な話ではない。表層的な受け止め方をいったん脇に置いて考えてみると、そこにはより希望があり、同時に興味深い現実が浮かび上がってくる。多くの人にとって、健康的な食事や定期的な運動、十分な睡眠は、より長く、より健やかに生きる可能性を大きく高めるものだ。
もっとも、ごく少数ながら、生まれつき老化の進行を実際に遅らせる希少な遺伝子の組み合わせを持つ人もいる。そうした遺伝子は、必ずしも医師の助言を忠実に守っていなくても、心臓病やアルツハイマー病、がんといった加齢に伴う代表的な疾患にかかりにくくする。
寿命を延ばすために、人の遺伝子そのものを変える必要はない。研究者たちは、こうした遺伝子がどのように機能しているのかを解き明かし始めており、薬剤などによる介入を通じて、その効果を多くの人にも再現しようとしている。あわせて、個々人の遺伝的特徴に応じ、薬の処方や食事に関する助言を最適化する取り組みも進んでいる。
イスラエルのワイツマン科学研究所の研究者が主導し、学術誌「サイエンス」に掲載された今回の研究は、寿命における遺伝子の役割が、これまで考えられていた以上に大きいことを示したとして、幅広い注目を集めた。遺伝子の影響は限定的だとする2018年当時の報告とは対照的な内容だ。当時は、感染症による死亡が多かった時代の系譜記録に基づき、遺伝の寄与度は約7%と低く算定されていた可能性がある。
寿命に対する遺伝の寄与度を約20%とする研究も複数ある。ただ、老化を研究する科学者たちは、こうした結果は寿命における遺伝の影響を同じように測っているとは限らないと指摘する。最新の研究では、複数のデータセットを組み合わせ、数学モデルを用いて、事故や感染症など、遺伝の影響を受けにくい死因を取り除いた。
こうした要因は、若くして命を落とす人が多く、平均寿命が50歳を大きく下回っていた過去の世紀には、より大きな影響を及ぼしていた。現在では、人類のゲノム自体は変わっていないにもかかわらず、米国の平均寿命は80歳近くまで延びている。
研究者たちが重視する考え方の一つは、年齢を重ねるにつれて、遺伝および環境による影響のバランスが変化するという点だ。ボストン大学医療センターの老年医学専門医、トーマス・パールズ氏は、「80代前半まで生きるために必要な条件と、100歳前後、さらには105歳や110歳といった年齢に到達するために必要な条件は、明確に区別することが極めて重要だ」と話す。
パールズ氏によれば、80代半ばまでの長寿は、遺伝が約25%、環境要因や健康行動が約75%を左右する。一方、同氏の研究グループが収集したデータを分析したところ、100歳に到達するかどうかは62%が遺伝によるもので、さらに高い年齢に達する場合は、その割合が80%近くに達することが分かった。
健康的な行動としては、栄養バランスの取れた食事をとること、適正体重を維持すること、定期的に運動すること、喫煙しないこと、そして飲酒はするにしてもごく控えめにすることが挙げられるという。加えて、ストレスを適切に管理し、加齢に対して前向きな姿勢を保つことも重要だと同氏は指摘する。
ほかの研究者たちも、極端な高齢域で遺伝の役割が大きくなるからといって、運動や睡眠、食事の効果が失われるわけではない点で一致している。アルバート・アインシュタイン医科大学の老化研究所所長、ニール・バルジライ氏は「これらすべてを最適化する努力をすべきだ」と語る。ただ、幸運な一握りの人々にとっては、不健康な生活習慣でさえ、必ずしも寿命を縮めるとは限らない。
バルジライ氏らが2011年に96-109歳の477人を対象に行った研究では、調査対象となった人たちの生活習慣は別の集団と比べて、むしろやや悪かった。約半数が喫煙しており、ほぼ半数が肥満または過体重だった。軽度の運動すら行っていない人も、半数近くにのぼった。
それにもかかわらず、がんやアルツハイマー病、心疾患、糖尿病に関連する遺伝子の数は、ほかの集団と比べても変わらなかった。違いを生んでいたのは、老化の進行を遅らせる遺伝子を持っていた点にある。
いわゆる「抗老化遺伝子」は、どのように働くのか。バルジライ氏によれば、成長を促すホルモンを抑制する傾向があるという。こうした作用は、糖尿病治療薬のメトホルミンや、糖尿病や肥満治療で広く使われているGLP-1受容体作動薬など、既存の薬剤にも見られる可能性がある。
遺伝の影響が年齢とともに強まると考えられる理由は、歴史的な傾向からも見て取れる。ボストン大学の生物統計学者、パオラ・セバスティアーニ氏によれば、この1世紀で平均寿命は劇的に延びたものの、100歳まで生きる人の割合は、ほとんど変わっていない。
研究者たちは、すべての環境要因が個人の努力で左右できると考えるべきではないとも注意を促す。寿命は、社会経済的地位や大気汚染の影響などとも密接に関係している。誰もがより長く、より健康に生きられるようにするには、健康的な生活を実践しやすく、無理なく手の届くものにするための社会的な取り組みが欠かせない。
100歳を超えるごく限られた「エリート長寿者」の多くは、多額の費用をかけて特別な健康法に手を出すわけでもなく、ミキサーにかけた野菜やサプリメントに頼るような食事をしているわけでもない。
史上最長寿とされるフランス人女性、故ジャンヌ・カルマンさんは、112歳で老人ホームに入所していた際に喫煙を始めたとされる。それでも、その後さらに10年生きた。
もっとも、彼女は人生の大半において、定期的に運動し、新鮮な食事をとるなど、健康管理にも気を配っていた。そうした要素の組み合わせがあってこそ、より多くの人が健康を保ち、人生を楽しみながら120歳にまで近づくという未来への希望が広がる。
(F.D.フラム氏は、科学分野を担当するブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Why Some People Live to 100 Despite Bad Habits: F.D. Flam(抜粋)
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