衆議院選挙で高市早苗首相が歴史的な勝利を収めた後、これまで日本にほとんど関心を払ってこなかった外国人を含む多くの人々が注目し始めている。

海外の保守派は、主流とは見なされてこなかった人物がまた一人、権力の座に就いたと喜び、移民に対する揺るぎない反対姿勢が勝因だとみている。一方、リベラル派は、今回の勝利が日本の右傾化を示し、ひいてはファシズムへの一歩だと受け止めているようだ。

しかし、高市氏に関する多くの論評は現実とかけ離れている。彼女の勝利が歴史的であることは確かで、その圧勝ぶりと日本初の女性首相という点の双方において画期的だ。ただ、保守派やリベラル派が描きたがるような過激なスタンスとは程遠い。

高市氏が「外国人移民を大幅に制限し、期限切れビザ(査証)の保持者を例外なく強制送還するという公約」で総選挙に挑んだとX(旧ツイッター)に投稿した著名な保守派もいた。別のXユーザーは「日本は文字通りごくわずかな移民しか受け入れていない」のに「史上最も右寄りの選挙結果で応じた」と主張している。

だが、日本が移民受け入れを押し付けられ、その反動として外国人を拒む扇動者を支持したという見方は誤りだ。

確かにここ数年、移民は日本の論点となっている。しかし、高市氏が外国人に対する右傾化を体現しているのではない。移民に関する同氏の立場は、国内で従来一般的だったスタンスにおおむね一致している。

日本は長らく大規模な移民受け入れに慎重だった。外国人労働者には日本語を学び、規則を守り、できれば永住者が過度に多くならないようにすることが求められてきた。

変化

今は2つの点が変わった。ここ10年ほどで観光客と労働者の双方で外国人が急増したことと、高市氏がこの問題を議論する意思を示していることだ。同氏が政治の師と仰ぐ故安倍晋三元首相を含め、歴代のリーダーはこの問題への言及自体を避ける傾向があった。

高市氏の政策には外国人の居住者数を減らすとの記述はない。むしろ、今後数年で確実に増加する移民労働者を管理するため、秩序ある制度を構築することに焦点を絞っている。

不法残留者の強制送還や外国人による違法行為には「毅然と対応」する方針を掲げる一方、日本語教育や個別対応の福祉制度など、居住者が日本社会に溶け込む上で支援する施策も打ち出している。

それでも、高市氏を英右派政党リフォームUKのナイジェル・ファラージ党首にほとんど重ね合わせて考える人(多くの外国人居住者も含む)には、説明しても通じないかもしれない。

高市氏は「超保守」で、「強硬な政策課題」を掲げていると評する声もある。筆者はオンラインや対面で、同氏を「ファシスト」と呼ぶのを耳にしたことさえある。

中国を巡っても、台湾に関する発言で中国を「挑発」したあるいは「外交的対立を始めた」との見出しが定番となっている。

ある著名な学者は彼女を「反中国」とまで評した。石破茂前首相よりも対中強硬であるのは事実だ。筆者は石破氏を対中関係改善を重視していると表現したことがある。

中国に対し疑念を抱くのは「極右」に特有の立場ではない。中国と対峙(たいじ)することを主要政策の一つに掲げたバイデン前米大統領は「超保守」だったのだろうか。

国家安全保障で強い姿勢を示す政治家にこうしたレッテルを貼るのは、何十年も繰り返されてきた手法だ。

地殻変動

高市氏の外交政策は、同志国との協力や同盟の強化を強調している。高市氏を軍国主義者と描く中国の宣伝にくみしないアジアの国々が同氏の勝利を歓迎しているのはそのためだ。

米国で広がりつつある孤立主義とは対照的に、高市氏はウクライナへの「揺るぎない」支持を共有する欧州首脳により近い立場にある。同氏が首相就任後の早い段階での記者会見で、韓国の化粧品や韓流ドラマへの称賛を語ったのも印象的だった。これは日本の極右が言うようなことではない。

仮に高市氏が憲法改正という目標を実際に追求すれば、修正主義的とか軍国主義的といったレッテルはさらに増えるだろう。

しかし、同氏が「未来は与えられるものではなく、自らの手で切り拓くもの」と訴えるように、自らを助けようとしない国を助ける国はないという認識が世界で広く共有されつつある。

欧州の防衛費増額は、軍国主義だとの非難を招いていない。むしろ、極めて現実的な脅威への遅過ぎた対応だと受け止められている(ロシアが日本の隣国であることを忘れてはならない)。

また、改憲の願いは高市氏だけのものではない。左派寄りとおおむね見なされる石破氏も憲法改正を支持していたし、前任の岸田文雄元首相も同様だった。

社会問題では確かに保守寄りの姿勢を示しているが、それは日本の右傾化を意味しない。というのも、この国は長らくかなり保守的だったからだ。

ここ数日、有権者と話して高市氏の人気について分かったことは、変えるべき点を変えてくれるという期待だけでなく、守るべき部分を守ってくれるとの見方にも基づいているということだ。

高市氏を論じるなら、ありのままの姿を見て判断すべきだ。発言を注視し、さらに重要なのは実際の行動を見極めることだ。同氏ほど人気のある政治家であっても、行動は制度の制約を受ける。

高市政権は確かに地殻変動に例えられる。しかし、その理由は多くの人々が考えるものとは必ずしも同じではない。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Sanae Takaichi Is Not Who You Think She Is: Gearoid Reidy(抜粋)

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