(ブルームバーグ):12日の米欧株式市場では物流関連銘柄が下落。人工知能(AI)による業界構造の変革を巡る懸念から投資家が同セクターを敬遠しており、「AI脅威論」を背景にした売りが波及した格好だ。
物流関連銘柄を巡る懸念が強まるきっかけとなったのは、AI企業アルゴリズム・ホールディングスの発表だ。同社は12日午前、自社の「SemiCab」プラットフォームの導入事例を巡り、顧客企業が運営人員を増やすことなく貨物取扱量を300-400%拡大させたと明らかにした。発表後に同社株価は一時82%高を記録。終値は30%高の1.08ドルだった。
アルゴリズム・ホールディングスの時価総額は約600万ドル(約9億1600万円)だった。同社はもともとカラオケ製品を販売する「ザ・シンギング・マシン・カンパニー」として事業を展開していたが、2024年にAI企業へと事業転換した。9月30日までの四半期決算では、売上高が200万ドルを下回り、同期間の純損失は約300万ドルだった。
同社が自社の物流プラットフォームを大々的にアピールしたことを受け、ラッセル3000トラック運輸指数は6.6%下落。物流ブローカー大手のCHロビンソン・ワールドワイドは15%急落し、一時は過去最大となる24%安となった。同業ランドスター・システムも16%下落した。
同セクターにとっては、貿易戦争を巡って市場が急落した昨年4月以来の大幅安となった。医薬品関連株も売りに巻き込まれ、マッケソンとカーディナルヘルスはいずれも約4%下落した。
AIを活用した新たなツールやアプリケーションが多くの業界のビジネスモデルを覆しかねないとの懸念から、この数週間、株式市場では幅広い分野で売りが広がっている。売りの発端はソフトウエア企業で、その後、プライベートクレジット会社や保険会社、資産運用会社、不動産サービス企業へと波及してきた。
シティグループのアリエル・ローザ氏は、アルゴリズム・ホールディングスが「業界を破壊する存在になるとは懐疑的だ」と指摘。一方で「いずれ誰かが参入し、業界を破壊しようとする可能性は相応に高い」と述べた。

旧来型産業にも波及
欧州市場でも物流関連銘柄の売りは広がり、デンマークのDSVは11%安、スイスのキューネ・アンド・ナーゲルは13%安となった。
投資家はこれまで、テクノロジー株の変動が大きくなるなかでポートフォリオの分散を進め、運輸株を「AI耐性銘柄」の一角とみなしてきた。しかし12日の急落は、市場を揺るがしてきたAI脅威論が、いわゆる「旧来型産業」にも及ぶことを示した。
トラック運送株を追跡するアナリストのクリストファー・クーン氏は「AIによってトラック運送ブローカーが中抜きされる可能性が意識されている。それが株価急落の背景だろう」と指摘。「セクター全体が売られているが、特に下げが目立つのはブローカー関連だ」と述べた。
さらに「順番が回ってきたということだ。売られ過ぎだと思うが、さらなる詳細が必要だ。ただ、大企業がこうしたソフトウエアを導入しても、CHロビンソンやRXOのような大手トラック運送ブローカーを使わないというのは考えにくい」と語った。
ジェフリーズの株式トレーディング部門で働くジェフリー・ファヴッツァ氏は、物流銘柄の下落は市場全体に広がるテーマを浮き彫りにしていると言及。顧客向けリポートで「足元の市場では、AI関連の見出しが出れば、どの分野でもまず売ってから考えるという姿勢が広がっている」と記した。
条件反射的な動き
アナリストや投資家の一部は、今回の急激な売りの一部は条件反射的な動きで、リスクを過大評価している可能性があると警告している。
バークレイズのアナリスト、ブランドン・オグレンスキー氏は、今回の市場の反応は「リスクに見合ってない」とし、CHロビンソンなど同セクターが弱含む局面では買い手になるとした。
ネイションワイドのチーフ・マーケット・ストラテジスト、マーク・ハケット氏は「時間の経過とともにAIの影響は避けられず強力だが、この種のニュースに対する株価の反応は感情的で誇張されがちだ」と語った。
原題:Former Karaoke Company Drags Logistics Into the ‘AI Scare Trade’(抜粋)
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--取材協力:Annika Inampudi.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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