日銀への風向き

高市首相の「円安でホクホク状態」という発言は、どうしてもマーケットに強く意識される言葉として残っている。

日銀にとっても、その真意次第で次の一手を慎重化させる可能性がある。

現在、日銀は追加利上げについて特定のインターバルを決めずに進めたい意向なのだろう。

焦点は、2026年4月か、7月か、という2つのタイミングであろう。

日銀は、通貨当局と暗黙の連携を取りながら、1ドル160円を突破しないように動こうとしている。

円安圧力が強まれば、「利上げは近い」と情報発信して、2026年4月を強く意識させようとするだろう。

筆者は、4月利上げは十分にあり得るとみている。

それでも、気になるのは選挙で勝利をした高市首相の意向である。

従来よりも強気になって、日銀の追加利上げに具体的に言及してくることがないとは限らない。

植田総裁は、選挙結果で世論の支持を受けた首相が円安が望ましいと発言してしまうと(多分しないと思うが)、通貨当局と連携した通貨防衛の体制が台無しになってしまうと警戒していることだろう。

思考実験をしてみると、仮に1ドル160円を突破したときに日銀はどう振る舞うのだろうか。

もしかすると、すぐに追加利上げをほのめかすのではなく、高市首相の反応を見ながら動くのではないか。

片山財務大臣にアナウンスは任せて、少し時間かけて様子見する可能性はある。

その上で、遅れて追加利上げをほのめかすのではないか。

選挙で支持を得た首相の意向をもう一度見定めようとする可能性はある。

消費税問題

2026年度内に高市首相が実施したいと考えている食料品の消費税減税は、いつのタイミングになるのだろうか。

国民会議で与野党の政治家と有識者を交えて議論することになりそうだ。

しかし、衆院選で自民党が大勝したため、たとえ野党政治家が参加してもその発言力は相対的に強いものにならないだろう。

選挙中は、高市首相はあえて「国民会議で検討を加速する」としか言わなかったが、より自身の自由度を得て、減税の意向を強く表現してくる可能性がある。

本来、衆院選で圧勝したのだから、高市政権は消費税減税をすぐに進める必然性はなくなっている。

消費税減税を前面に出した野党は総崩れなのだから、対抗措置としての食料品の消費税減税を急ぐ必要性はない。

それでも、政策の優先順位の上位に消費税減税を置くのかどうかが、今後のひとつの焦点である。

その場合、やはり5兆円の財源確保が気になる。

早期の実施にこだわるほどに、財源の穴が開いてしまう可能性は強まる。

税外収入、補助金や租税特別措置の見直しといった財源候補からしっかりと5兆円規模の歳入が得られれば、基礎的財政収支の悪化にはつながらない。

すでに税外収入の一部は防衛増税に充てる予定があるので、さらに上積みは難しいはずである。

「特例国債の発行はしない」という方針が守られれば、長期金利の上昇圧力に歯止めをかけられるので、約束の履行を求めたい。

※なお、記事内の「図表」に関わる文面は、掲載の都合上あらかじめ削除させていただいております。ご了承ください。

(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 熊野 英生)