英国の駐米大使だったピーター・マンデルソン氏が閣僚在任中、機密性の高い政府情報を、性犯罪で起訴され勾留中に死亡した米実業家ジェフリー・エプスタイン氏に漏らしていた可能性がある。米司法省が最近公開した文書で分かった。

文書によれば、マンデルソン氏は財政難に陥っている欧州連合(EU)加盟国を救済する融資枠についてエプスタイン氏に電子メールを送り、「今夜発表されるはずだ」と伝えていた。

メールの日付は2010年5月9日。欧州の政策当局は翌10日、5000億ユーロ(現在の為替レートで約92兆円)の融資計画を発表し、ユーロは2年ぶりの大幅高となった。エプスタイン氏は19年に死亡。当局は自殺と結論付けている。

文書はまた、マンデルソン氏が09年、ブラウン首相(当時)の閣僚として、税制政策案に関する官邸内部のメールをエプスタイン氏に転送し、「首相に回った興味深いメモだ」とのコメントを付けていたことも示している。

非公開のこのメモは同年6月13日、ブラウン氏のオフィスの上級顧問が作成したもので、マンデルソン氏が共有したのも同日だった。

金融危機後に民間投資を促すための税制優遇策や、政府債務削減に向けて200億ポンド(同約4兆2500億円)の資産売却を行う可能性が提案されていた。

文書によると、エプスタイン氏は「どの資産が売却可能なのか」と返信。マンデルソン氏は「土地や不動産だろう」と応じた。

ブラウン氏は4カ月後、学生ローン債権やテムズ川をまたぐ橋ダートフォード・クロッシングなど、国有資産160億ポンドの売却を発表した。

別のメールは、ブラウン氏が労働党党首兼首相を辞任する計画を、実際に辞任する数時間前にマンデルソン氏がエプスタイン氏に知らせていた可能性があることを示している。10年5月10日のメールに「ついにきょう、辞めさせた……」と記していた。

今回の新たな開示は、ブラウン政権で民間企業担当相を務めていた当時のマンデルソン氏の行動に疑問を投げかけている。

スターマー英首相のジョーンズ首席秘書官は2日、「有罪となった小児性愛者との緊密な関係を続け、非公開の行政案件まで議論する判断は、閣僚に期待される基準を大きく下回る」と下院で述べ、スターマー氏がウォーマルド内閣官房長官に対し、マンデルソン氏とエプスタイン氏の接触に関するすべての文書を検証し、早急に報告するよう求めたと明らかにした。

ロンドン警視庁の幹部エラ・マリオット氏は2日の声明で、「公職における不正行為の疑い」に注目していると表明したが、特定の人物や職務には言及しなかった。

「米司法省によるジェフリー・エプスタインに関連する数百万点の裁判資料の追加公開を把握している」と説明。「今回の公開およびそれに続く報道を受け、警視庁には公職における不正行為の疑いに関する複数の通報が寄せられている。捜査に着手するための刑事上の基準を満たすかどうか、すべて検討する」と表明した。

マンデルソン氏および米司法省に電子メールでコメントを求めたが、すぐに返答は得られなかった。

09年6月13日のやり取りは、マンデルソン氏がエプスタイン氏のニューヨークの自宅に滞在する予定だった1週間前に当たる。これは、同年6月17日にエプスタイン氏が送ったメールに記されており、以前に公開された文書に含まれていた。

最近開示されたエプスタイン氏に関係する資料は約300万ページに及び、18歳以上であることの確認を求める表示とともに米司法省のウェブサイトに掲載され、財務記録や渡航記録、電子メールのやり取りが多数含まれている。

司法省によれば、今回の公開で、これまでに提供されたページ数が約350万ページに達した。こうした文書の公開は、超党派の議員や被害者、活動家からの申し立てを受け、米議会が昨年可決した法律に基づいている。

これまでの公開分と同様、文書にはエプスタイン氏とさまざまな時点で関係を持っていた富裕層や権力者への言及が含まれるが、文書に名前があるだけで、不正行為への関与を意味するものではない。

原題:Mandelson Appeared to Leak Government Information to Epstein (4)(抜粋)

--取材協力:Harry Wilson、Benjamin Bain.

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