米HBOで配信中の低予算ドラマが大ヒットしている。プロホッケー選手たちを描くこの作品と、日本で始まった漫画の1ジャンル「ボーイズラブ(BL)」の共通点は何か。それは、熱狂的な女性ファンが多いということだ。

ゲイであることを隠して活躍するプロホッケー選手たちを描く甘美かつ挑発的なメロドラマ「Heated Rivalry」の人気ぶりは、ショービジネスの専門家を驚かせている。

昨年11月28日の配信開始以後、それまでほとんど無名だった主演のハドソン・ウィリアムズとコナー・ストーリーは一躍ポップカルチャーの寵児(ちょうじ)となり、最近のゴールデングローブ賞など公の場に現れるとファンに取り囲まれる存在になった。

カナダの制作会社「Crave」が手がけたこの作品は、1話当たりの制作費はせいぜい500万ドル(約7億9000万円)以下とみられるが、すでに第2シーズンの配信が決まっている。

多くの人が驚くのは、最も熱心な視聴層がゲイの男性ではなく、主に女性である点だ。

米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、「最終話配信の4日前に当たる12月22日時点で、視聴者の53%が女性だったとHBOの広報担当者は述べた」と報じた。その後、「女性は視聴者の約3分の2」を占めるようになったという。

米誌ニューヨーカーのライター、ナオミ・フライ氏は、ある女性の友人がこの番組について「かつて、そしてもしかしたら今も私が抱いている、誰かとの感情的・肉体的な結び付きの力についてのあらゆる幻想を刺激する」と打ち明けたと伝えた。その友人は恥ずかしさを感じつつも、視聴をやめられなかったという。

美少年の伝統

男性同士の恋愛を描く作品に女性の熱心なファンがいることは、漫画ファンには驚きではない。1970年代に日本で生まれたBLと呼ばれるジャンルは、人気と収益性がすでに実証されている。

BL漫画の読者は圧倒的に女性だ。彼女たちは、約7000億円規模と推定される日本のコミック市場の中でも、最も熱心な消費者である可能性が高い。

自嘲的に「腐女子」と呼ばれるBLファンの女性たちの一大イベントは、「コミケ」(コミックマーケット)だ。彼女たちは、そこで同人誌を売り買いする。

米国の出版社はかつて、日本市場のファンによる創作物に戸惑いを覚えた。熱狂的なファンが既存の男性ヒーローたちに同性愛的なロマンスを演じさせる「ファンフィクション」に面食らったのだ。

だが、やがてそれをブランドへの忠誠心の一形態として評価するようになった。日本から強い影響を受けた同様のジャンルは、中国や台湾、韓国、タイにも広がっている。

カナダ人作家レイチェル・リードの短編小説シリーズを原作とするHeated Rivalryは、米国やカナダにも潜在的に多くの腐女子が存在することを示す証左だろう。

2023年にアマゾン・プライムで大ヒットした映画「赤と白とロイヤルブルー」は、米大統領の息子と英国の王子という男性同士のロマンティックコメディーだが、これについても同じことが言える。原作は19年に出版されたケイシー・マクイストンの小説で、代名詞として性別を限定しない「they/them」を使用している。

日本におけるBL漫画の社会学的な背景は複雑だ。「同性愛」というよりも、「女性であること」に深く関わっている。1960年代の少女漫画は主に男性作家によって描かれ、中年男性が思い描く理想の少女像を中心に構成されていた。

70年代に入って女性の漫画家や作家が増えるにつれ、そうした枠組みは次第に息苦しいものになっていった。とりわけ、少女漫画の分野では、女性のセクシュアリティーやそれを巡る感情を正面から描くことは、あまりにも大きなタブーだった。

仮に踏み込んだとしても、女性キャラクターは男性優位社会で従属的な立場に置かれた存在として表現されることが多かった。

しかし、互いに恋する美少年たちは、そうした制約を受けない。より現実感の薄い、日本人離れした容姿であればなおさらだ(少なくとも安全だった)。

日本には、男女が共に憧れる美少年の伝統があり、その起源は11世紀の「源氏物語」にまでさかのぼる。

視聴率

現代に影響を及ぼす出来事は、女性作家が漫画業界に参入し始めた71年に起きた。トーマス・マン原作「ベニスに死す」のルキノ・ヴィスコンティ監督による映画化と、ダーク・ボガード演じる主人公グスタフ・フォン・アッシェンバッハが執着する青年タジオを演じたビョルン・アンドレセンの来日だった。

アンドレセンは日本のメディアから「世界一美しい少年」と称され、国内で一大センセーションを巻き起こした。彼の容貌は、魅力的な漫画の少年や男性の顔立ちにすぐさま反映された(そして、この男性美の系譜は、現在のアジアのボーイズグループのビジュアルへとつながっていく)。

こうした様式化された欲望の対象は、女性作家に日本の日常生活からの距離を取る手段を与えると同時に、創作上の自由ももたらした。ドイツ小説を原作に、イタリア人監督が撮った映画に出演したスウェーデン人俳優が、幻想というベールをまとい、日本の女性たちに愛と情熱を探求する自由を与える一助となったのだ。

この市場は過去半世紀、多様化が進んだ。性描写を最小限に抑え、関係性の繊細な痛みを描くBL漫画もあれば、より露骨な作品もある。

並行するサブジャンルとして、ゲイ男性がゲイ男性のために制作するゲイコミックも存在するが、BLに比べると市場シェアは小さい。書店では、少女や女性向けのコミックとは別のよりアダルトな棚に置かれている。

西洋にも、同性愛関係を描いて高い文学的評価を得た女性作家は少なくない。マルグリット・ユルスナールの「ハドリアヌス帝の回想」、メアリー・ルノーの「アレクサンドロス」三部作、より近年ではマデリン・ミラーの「アキレウスの歌」が挙げられる。

アキレウスの歌は2011年の刊行以来、25言語で世界累計300万部ほどを売り上げた。日本のBL作家と同様、これらの作家も古典史や神話という「距離」を介して欲望を扱っている。

一方、Heated Rivalryの成功は、BL漫画のポップカルチャーとしての熱量と即時性を併せ持つ。社会学的な細かい分析にそれほど関心のない人にとっては、LGBTQ+系サイト「Them」に掲載された次の見出しが全てを言い尽くしている。

「女の子たちはホッケーBLに夢中... 視聴率はとんでもない」。

(ハワード・チュアイオン氏は、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、文化とビジネスを担当しています。以前はブルームバーグ・オピニオンの国際エディターで、米誌タイムではニュースディレクターを務めていました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Heated Rivalry, Manga Fans Have Lots in Common: Howard Chua-Eoan(抜粋)

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