(ブルームバーグ):日本銀行の植田和男総裁は23日、外国為替市場で続く円安傾向に関し、2%の物価安定目標の実現が近づく中で、従来よりも動向に注意が必要との見解を示した。政策金利の維持を決めた金融政策決定会合後の記者会見で述べた。
植田総裁は円安による物価への影響について、企業の賃上げや価格転嫁が積極化しており、「国内価格の為替への反応が大きくなっている可能性に注目している」と説明。その上で、政策判断で重視する基調的な物価上昇率が目標の2%に近づいており、「以前と同じ程度の大きさであっても小さな動きに注意を払っていく」とした。

日銀は昨年12月の会合で政策金利を0.75%程度に引き上げたが、円安傾向が続いている。1ドル=160円の節目に接近し、片山さつき財務相ら政府幹部がけん制発言を繰り返す中、注目された植田総裁の会見では、円安への警戒感を一段強めた形だ。
会合後に公表した新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)でも、為替変動が「基調的な物価上昇率に影響する可能性があることにも留意が必要」と言及。植田総裁は会見で、為替レートは金利差だけでなく多様な要因で変動するとし、動向を「しっかりみていきたい」と語った。
SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストはリポートで、「当面の金融政策は為替レートがカギを握るとみられる」と指摘。政府・日銀による為替市場介入が行われれば、1ドル=148円程度まで円高になる可能性があるとし、「その場合、日銀は急いて利上げする理由がなくなり、様子見に入るのではないか」との見方を示した。
植田総裁の発言が伝わる中、為替市場では円が売られ、対ドルで14日以来の159円台まで円安が進んだ。その後は急速に値を戻し、一時157円台半ばまで上昇する場面もあった。
長期金利
もう一つの焦点となっていた最近の長期金利の上昇に関しては「かなり速いスピード」とし、債券市場のボラティリティー(変動率)の高い状態が続いており、注意が必要とも指摘。「通常と異なる例外的な状況では、市場における安定的な金利形成を促すために、機動的にオペなどを実施することもある」との方針を改めて示した。
長期金利は、高市早苗首相が19日の会見で食料品の消費税率ゼロに言及したことなどを受けて上昇が加速した経緯がある。20日の債券市場では、財政拡張懸念などを背景に、40年国債利回りは一時4.215%、30年債利回りも3.875%まで上昇し、いずれも過去最高を更新した。
植田総裁は会見で、長期金利上昇の背景に財政政策に対する見方も影響しているとの声があるとし、「政府が中長期的な財政健全化について、市場の信認を確保することは重要だ」と指摘。政府とも緊密に連絡しつつ、それぞれの役割を踏まえてしっかりと見ていくとした。
日銀は23日の会合で、政策金利を据え置くことを賛成多数で決めた。高田創審議委員が物価目標はおおむね達成されているとして反対。物価の上振れリスクが高いとし、1.0%程度への利上げを提案したが、否決された。

展望リポート
新たな展望リポートでは、消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)について、2026年度を前年度比1.9%上昇とし、10月リポートの1.8%上昇から上方修正。エネルギーも除いたコアコアCPIは全ての見通し年度で引き上げるなど、物価目標実現へ前進している姿が示された。
次の利上げ時期について総裁は、目標実現の確度が高まれば、「徐々に金融緩度合いをさらに調整していくということが適切だ」と指摘。過去の利上げを含めて、企業や家計の行動や経済・物価に及ぼすさまざまな影響を丁寧に点検していく考えを示した。
追加利上げのポイントに関して、物価と賃金の上昇がどのようなペースで続くかを多様な指標から判断していく時期だと思うと語った。4月は相対的に価格改定の頻度が高い月だとし、「そこにある程度の関心を持っていることは事実」とも語った。
また、現在は政策対応が後手に回るビハインド・ザ・カーブになっているとはみていないと説明。その上で、「ビハインドカーブにならないように適切に金融政策を今後運営していく」考えを示した。

(発言の詳細を追加して更新しました)
--取材協力:氏兼敬子、横山恵利香.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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