(ブルームバーグ):トランプ米大統領が米国の同盟国に向けて放つ関税の脅しが、輸出で中国経済の成長を押し上げたい習近平国家主席にとって極めて好都合となっている。
中国が19日に発表した国内総生産(GDP)統計によると、デフレに苦しむ中国が2025年の成長率目標5%を達成する上で、輸出が重要な役割を果たしたことが示された。
輸出が1997年以来最大の成長押し上げ要因となり、中国経済が抱える消費低迷や不動産不況といった多くの問題が覆い隠された。
トランプ氏が昨年講じた関税措置は中国に米国に代わる市場の開拓を促し、その結果、メキシコなどが特定の中国製品に新たな関税を課した。
一方、デンマーク領グリーンランドの取得を目指すトランプ氏が、これに反対する欧州各国に向けて発した最新の威嚇は、習氏に一息つく余裕を与えた。
カナダのカーニー首相は先週、北京で習氏と会談。電気自動車(EV)関税を引き下げるとともに、「新しい世界秩序」において中国に近づく考えを示唆した。
マッコーリー・グループの中国経済責任者、胡偉俊氏は米中貿易の緊張緩和にも触れ、「中国の貿易摩擦リスクは今年、大幅に低下する」と予想。
さらに「輸出が堅調に推移すると見ているからこそ、中国が内需向けの景気刺激策を大幅に強化することはないと思う」と語った。胡氏は、26年の中国輸出が前年比6%増えるとみている。
トランプ氏の動きは、長年にわたる住宅市場の崩壊といった問題に対応する習氏に時間的余裕を与える可能性がある。一方で、中国側が自国経済を消費主導へとリバランスさせる取り組みのアクセルを緩めてしまうリスクも生じさせ得る。
トランプ氏が拡張主義的な外交政策を強行し、仮に武力を用いてグリーンランドを掌握しようとすれば、地政学的な衝撃波が市場の変動を招くことにもなりかねない。これは、中国政府には歓迎しがたい事態だ。
重要な成長の柱
グリーンランドを巡る関税の脅しが実行に移されれば、トランプ政権2期目発足以降、欧州のパートナーに課される関税引き上げ幅は今年6月までに最大37.2ポイントに達する可能性がある。これは中国を対象とした引き上げ幅を大きく上回ると、ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は試算している。
中国政府は、EU・中国包括的投資協定(CAI)の再活性化を進めようとしている。CAIは、人権問題を巡る緊張の高まりなどを背景に21年に凍結された。
このCAIの凍結が解除されれば、欧州企業による中国市場へのアクセスが拡大し、EU域内における中国側の投資障壁も取り除かれることになるが、EU当局は公に復活に強い関心を示していない。
ナティクシスでアジア太平洋担当チーフエコノミストを務めるアリシア・ガルシア・エレロ氏はこの問題について、「中国が非常に強い圧力をかけている」とし、「トランプ氏により追い込まれている今、EUはそれを受け入れるかもしれない」との見方を示した。
スターマー英首相は月内に訪中を予定しているが、習氏はさらなる市場開放も求める構えだ。
中国の自動車メーカー、奇瑞汽車のブランド「Jaecoo」は英国で2025年1月に投入されたばかりだが、昨年の英販売台数が2万8000台を突破。すでにホンダやシトロエン、ポルシェを上回る販売台数を記録した。
中国の止まらない輸出マシンが国内政策に与える効果は昨年、米国が1930年代以来で最も厳しい関税体制を敷く中でも輸出がそうした逆境を跳ね返し、貿易黒字を過去最大に押し上げたことで如実に示された。
中国当局は当初、トランプ氏の大統領復帰を受け、世界2位の経済を守る対策を講じると誓い、公式の財政赤字を過去30年余りで最大の水準に引き上げることでそれを実行した。
だが、輸出が新たな市場を見つけるにつれ、当局は地方債務の削減に軸足を移し、その結果、インフラ投資は異例の減少に転じた。
ガベカル・ドラゴノミクスで中国経済を担当するホォ・ウェイ氏は「今後5年、少なくとも予見可能な将来において、輸出が依然として重要な成長の柱であり続ける」と分析。世界経済における強い需要が一因だとした上で、「外需から内需への移行は、中長期的なプロセスになる」と語った。
中国経済の問題を引き起こしている基本的な要因は変わっておらず、不動産市場の崩壊はいまだ底が見えない。
香港城市大学で中国政治を研究する助教の劉東舒氏は、トランプ氏による米同盟国への対応は、数年前と比べて中国の立場を改善させたものの、なお多くの課題が残っていると指摘した。そして、将来的にさらなる貿易障壁が生じかねない。
劉氏は「たとえ中国と協力したとしても、各国に当初慎重姿勢を取らせた要因は消えていない」と述べ、ウクライナ侵攻後のロシアに対する習氏の支持を巡る不信感に言及した。
原題:Xi’s Export Machine Gets Lift From US Move to Strongarm Allies(抜粋)
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