高市早苗首相は、高水準の内閣支持率を追い風に総選挙で勝利し、政治基盤の強化を図ろうとしている。だが、与党の集票を支える選挙協力パートナーを欠けば、想定以上にリスクの高い賭けとなる可能性がある。

早期の解散・総選挙は、経済・安全保障分野で日本の存在感を再び高めようとする高市氏にとって衆議院で安定多数を回復し、長期政権を担えることを示す絶好の機会になり得る。世論調査では、ここ10年余りで最も高い水準の支持率を維持しており、こうした見方を裏付けている。

総選挙で勝利を収めれば、春に予定されるトランプ米大統領との次回会談に向けて力強い指導者像を印象づけることができるだろう。台湾有事に関する高市氏の発言を巡り中国が対応を見直すきっかけとなることもあり得る。

高市氏は14日、23日召集の通常国会の早期に衆院を解散する意向を与党幹部に伝えた。公示日や投開票日などの日程を含め詳細は19日に首相が説明する。今回の総選挙は、自民党にとって20年以上ぶりの、長年連立を組んでいた公明党抜きで臨む選挙となる。

日本維新の会の吉村洋文代表は14日、首相との会談後、「『ともに戦いましょう』と話した」と述べ、選挙区調整はしない考えを示した。一方で、自民党の鈴木俊一幹事長は、維新との選挙協力は「基本的にしない」と明言した。

連立与党の足並みがそろわなければ、高市氏の大胆な賭けは裏目に出る可能性がある。野党は早期の解散・総選挙に不意を突かれ、準備不足との想定は、規模の小さい政党には自民党に対する有権者の不満をくみ取り、支持を切り崩す機動力があることを過小評価しているかもしれない。

早稲田大学の高安健将教授(政治学)は、高市政権に対する高い支持率が選挙での票に直結するとは限らないと指摘。高市氏は有権者が投票所に足を運んでくれそうだという、それなりに余裕のある調査結果を踏まえて解散に踏み切るのではないかとした上で、「そこはまさに賭け」なのだろうと述べた。

投資家は高市氏が勝利し、景気刺激を重視する政策が継続するとみている。積極財政で景気を下支えする一方、日本銀行による利上げは緩やかなペースにとどまるとの見方だ。

14日の為替市場で円は1ドル=159円45銭と18カ月ぶりの安値を付け、株式市場では日経平均株価が最高値を更新した。30年物国債利回りは13日に過去最高水準に並んだ。

金利の上昇は、長期的な財政健全性に対する市場の警戒感を示しているものの、株価が上昇を続ける限り、高市氏にとってはおおむね良好な状況が続くだろう。しかし、さらなる円安を食い止めるために為替介入に踏み切れば、そうした市場環境は一変する恐れがある。

東京大学の内山融教授(政治学)は、「円安や超長期金利の上昇を見ても、高市政権の積極財政へのリスクは市場がかなり示してきていると思う」と指摘。「仮に、株が下落してしまうと、政権にとって非常に苦しい状況になる」と述べた。

自公は政策面で必ずしも一致していたわけではないものの、公明党は候補者を立てない選挙区で自民党候補の当選を後押しする信頼できるパートナーだった。その見返りとして、自民党は比例代表で公明党への投票を支持者に呼びかけてきた。こうした協力体制の下、自民党は連立与党として過半数を確保し、公明党は国政への一定の影響力を保持してきた。

一部報道では、2024年の衆院選で公明党の協力がなければ、自民党の小選挙区での獲得議席(132議席)は2割から4割下回っていた可能性があるとしている。日本経済新聞は25議席程度下回っていたと推計。JNNは最大で32議席少なくなっていた可能性があるとした。産経新聞によると、公明党の支持者は1選挙区あたり平均で約2万票を投じていたという。

東洋大学の薬師寺克行教授は、自公の「連立というのは、政権を作るためではなくて、選挙協力をしてお互いの票をやり取りし、多数派を獲得するための連立」だったと指摘した。

公明党は昨年10月に自民党との連立を解消。その後、自民党は日本維新の会を連立パートナーに選んだ。維新は自民党と政策面で親和性が高く、日本の防衛力強化に抵抗感が少ない右派寄りの立場を取っている。こうした点が政権に一体感をもたらし、高市氏の支持率を押し上げる要因となっている可能性がある。自民党は維新との新たな連立により、衆院でかろうじて過半数を確保している状況だ。

新党結成

一方で、公明党は立憲民主党と新党結成に向けて調整に入ったと複数の国内メディアが報じた。解散・総選挙が迫る中、今後の方向性を確認するという。立民の野田佳彦代表と、公明党の斉藤鉄夫代表は12日に会談し、「より高いレベルで連携」することで一致していた。公明は、現職4人がいる小選挙区から撤退する方向でも調整するという。

東大の内山教授は、「立憲民主と公明が選挙協力の話を進めているので、それで立民が票を伸ばすということになれば自民党にとっては大きな痛手になると思う」と述べた。

自民党は総選挙を単独で戦わざるを得ない可能性がある。高市氏の支持率は高いものの、自民党への支持は引き続き低水準にとどまっており、首相の人気が自民党への投票にどの程度つながるかは不透明だ。

NHKが10-12日に行った世論調査で、高市内閣は62%の高支持率を維持した。一方で、自民党の支持率は30%前後で推移している。調査は、高市氏は国民民主党や参政党の支持層からも高い支持を集めており、そうした有権者を自民党支持へと呼び戻す可能性を示唆している。

早稲田大学の高安教授によれば、高市氏の支持層は、保守的な考えに共鳴して積極的に支持する従来の右派層と、政治への関心は低く受け身ながらも応援する層の二つに分かれる。

首相個人への支持が、選挙結果を左右するほどの規模になるかどうかを見極めるのは難しいという高安教授。「それぞれの熱量や広がりというのが、数字だけでは捉えきれないところがある」と語った。

原題:Takaichi’s Japan Election Gamble Risks Unravelling Without Ally(抜粋)

(立憲民主党と公明党の新党結成報道の詳細などを追加しました)

--取材協力:Brian Fowler.

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