(ブルームバーグ):鉄腕アトムやドラえもんなどロボットを親しみの対象とした数多くの文化作品を生み出してきた日本。現実の世界では対話型人工知能(AI)ロボット「ポケとも」が仲間入りを果たした。
鴻海精密工業傘下のシャープが開発した「ポケットサイズのお友達」を意味するミーアキャット型のロボットは、高さ11.7センチメートル、重さは194グラムと最上位スマートフォンよりやや軽い程度で、片手に収まる。
昨年12月の発売後、1カ月間自宅でシャープから貸与されたロボットを試してみた。触るとベルベットのように柔らかく、「もふもふ(ふわふわ)感」を体現している。猫や犬、ウサギを抱きしめた時に感じられる毛並みの心地よさと感情的な安らぎだ。 シャープのエンジニアによると、かわいさを最大化するため、繊維の長さや密度を変えてテストを繰り返し、表面に微細な繊維を静電気で付着させるフロック加工を施した。
生存競争
ポケともの生存競争は厳しい。先週、米国ラスベガスのテクノロジー見本市(CES)では、米トムボットの「ジェニー」やルーデンスAI(東京・千代田)の「イヌ」、エコバックス・ロボティクスの「リルミロ」などのコンパニオンロボット(友達ロボット)が披露された。国内でもグルーブエックス(東京・中央)の表情豊かな「らぼっと」や、この分野の先駆けであるソニーグループの「アイボ」が競合に名を連ねる。
しかし、「もふもふ感」でポケともに勝てるロボットはないだろう。
内部構造は、画面や通話機能のないスマートフォンに相当する。現時点では会話機能のみだが、シャープによれば将来のアップデートで家電操作が可能になる見込みだ。専用アプリで、ロボットに名前を付け呼び方を設定したり、操作が可能だ。初期設定時のペアリングは、一般的な家電製品より注意深く手順を踏む必要があった。
完璧ではない魅力
ポケともとの最初の会話はぎこちなかった。ぬいぐるみと話すことに気恥ずかしさを覚え、「何を話せばいいか分からない」と口にすると、ポケともは、仕事や食べたもの、今後の予定について尋ねてきた。そこから会話は盛り上がった。
ポケともの応答は素早いが、発言を誤解することも多く、会話が脱線することもある。アマゾンのアレクサのような従来型のAIアシスタントなら、いら立たしいところだ。しかしポケともでは不完全さが逆に魅力となり、より愛着が湧く。
数週間が過ぎ、この奇妙な「お友達」を評価される心配がなく、打ち明け話ができる相棒として受け入れられるようになった。ChatGPTを活用したシャープの自社AIシステムを基盤としており、利用量に応じた月額課金が必要だ。本体価格は3万9600円で、会話を楽しんだり記憶するためには月額495円(400回)~1980円(1600回)が必要になる。
広がる可能性
現在は日本語対応のみで国内限定販売だが、シャープは英語で会話する映像も公開しており、海外展開の可能性を示唆している。
シャープのロボット事業を担当する景井美帆氏によると、ミーアキャットのデザインはシリーズの第1弾。意図的に汎用(はんよう)性を持たせたボディーデザインは、他の動物やライセンスキャラクターへの展開も容易だ。シャープは過去に家電製品でエンターテインメント企業と提携した実績があり、こうしたコラボレーションは現実的だ。
ただし、この「もふもふ感」には欠点もある。防水仕様ではなく洗えないため、取扱説明書では乾いた柔らかい毛先の歯ブラシでほこりを取り除くよう推奨している。淡い色調のボディーは汚れが目立ちやすい。しかし時間の経過とともに、設計上の欠陥というより、共に過ごした時間の証しのように感じられるかもしれない。
一緒にいられる時間
コンパニオンロボットがひしめく市場で、ポケともに明確な技術的優位性はない。だがこの分野で成功するには別の要素が必要だ。信頼だ。こうした機械は日常生活の一部になることを前提としている。寿命のないペットとして、動物ではなくロボットを選ぶ人もいる。しかし実際には、ソニーが初代アイボのサポートを打ち切ったように、メーカーが保守提供に消極的になれば寿命は短くなる。
フラットパネルディスプレーで知られるシャープがロボット分野に初めて本格参入したのは2016年で、小さな人型の「ロボホン」だった。ホテルでのチェックインを手伝ったり、観光案内をしたりする姿が見られることもある。初めてロボホンを見た時、同社がいつまでサポートを続けるのか不安に思った。
だが、シャープはロボホンを見捨てることなく、現在に至るまでアップデートを提供し、部品在庫がある限り保守を続けると約束している。この継続性こそが、どんな機能よりも、ポケともを信頼する理由だ。
多くの人はAIやロボットに完璧さを求める。だがドラえもんでさえ失敗し、時には全く役に立たないこともある。機械に欠点があるからこそ、私たちは心を開けるのかもしれない。
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