(ブルームバーグ):米国で2023年半ば以降、薬物の過剰摂取による死者数が急減したのは、治療や取り締まりが進展したことではなく、合成麻薬フェンタニルの供給網で突発的な混乱が生じたことが主な要因だった可能性があるとする新たな研究結果が発表された。
科学誌サイエンスに掲載された論文によると、フェンタニルの原料に対する中国の規制強化が関連したとみられる供給ショックが、23年に北米全域に波及した。この混乱により、フェンタニルの入手しやすさと効力がともに低下した。これは、合成オピオイドに関連する死者数が急減した時期と重なった。
こうした米国の死者数は、10年余り増加して23年にピークに達した後、24年末までに3分の1強減った。死者が減少に転じた要因は、治療体制の拡充や被害低減策、取り締まり強化などさまざまな主張が飛び交う中で、政策当局者の大きな関心事となっている。

過剰摂取による死者数の減少は、米当局が国境警備や外交手段を通じてフェンタニル供給対策に動く中で生じた。米政府は23年以降、水際対策強化や合成麻薬対策に関する国際的な連合の立ち上げ、中国に対する原料輸出規制要請を進めてきた。
米麻薬取締局(DEA)のデータによると、押収されたフェンタニル粉末の平均純度は23年序盤がピークで、24年末までに半分以下に低下した。鑑識研究所の報告でも、フェンタニルは引き続き法執行機関の最優先課題でありながら、押収量は23年の高水準から37%減少したことが示されている。
経験則では、供給が逼迫(ひっぱく)すると密売人は価格を引き上げるより薬物の希釈に動く傾向があり、今回の研究はこのパターンを、実質的な値上げを意味する「シュリンクフレーション」になぞらえている。高濃度のフェンタニルほど過剰摂取のリスクが高まるため、純度の低下は死者数の減少につながり得る。
政府データを補完するため、研究者らはインターネット上の書き込みを分析した。薬物の入手状況や品質についてオンライン掲示板レディットに寄せられた投稿では、23年半ば以降にフェンタニルの「枯渇」への言及が急増しており、過剰摂取の死者数が減少した時期とおおむね一致していた。
論文は決定的な要因を断定するには至っていないが、中国当局が23年終盤にフェンタニルの原料となる化学物質の監視を強化した事実を証拠に挙げている。
中国側は、化学物質供給業者のオンラインリストに掲載されていた数万件を削除し、輸出業者に対する取り締まりを強化したと説明してきた。23年11月に行われたバイデン米大統領(当時)と中国の習近平国家主席の会談も、麻薬対策を巡る新たな協力につながった。
原題:US Overdose Deaths Drop as Fentanyl Supply Weakens, Study Finds(抜粋)
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