(ブルームバーグ):米軍が実施したベネズエラのマドゥロ大統領拘束作戦でキューバの治安要員32人が死亡したことを受け、キューバ社会で警戒態勢が強まり、街頭では厳重な警備体制が敷かれている。
長年にわたり、キューバ政府はベネズエラ大統領の護衛や工作員、分析官を派遣してきた。これは並行するシークレットサービスとして機能し、諜報(ちょうほう)活動を強化するものだった。その見返りとしてベネズエラは、発電用を含む燃料を割安価格で供給し、キューバの需要の約3分の1を賄ってきた。
しかし、米国のトランプ大統領がベネズエラの首都カラカスでの特殊部隊による作戦は兵士や装備に損害ゼロで完遂したと発表したことで、キューバの工作員が米国の攻撃に対する防波堤であるという認識は崩れ去った。
首都ハバナで警戒感をさらに強めたのは、トランプ氏とルビオ米国務長官がキューバの長期独裁体制の終結を改めて呼びかけたことだ。両者は米国の具体的な関与については明言を避けているが、トランプ氏は週末、キューバが経済的に疲弊しており、「いずれ自ら崩壊するだろう」と述べた。
住民によれば、ラストゥナス、マタンサス、ハバナなどの都市では、警察と軍の動員が通常より多く、街の空気は張り詰めているという。
中部ラストゥナス在住のタイミル・ガルシアさん(47)は、ベネズエラで起きたことがキューバでも起こるのではないかとのうわさが広がっていると語った。
政権に反対するガルシアさんは、「人々は恐れているし、不安を感じている。でも希望もある」と述べ、「キューバも自由になるのではないかと考えている人がいる」と話した。
ベネズエラからの支援が減る可能性が生じる前から、キューバ経済はすでに、1991年のソ連崩壊以来、最も深刻な危機に陥っていた。燃料不足とインフラ老朽化で経済を直撃する大規模な停電が頻発し、国民の約5分の1が安定した飲料水を得られない状況だ。
街ではごみが回収されず、店頭は品薄で、蚊が媒介する感染症の急増など、疲弊の兆候が随所に見られる。かつて世界的な模範とされた医療体制も機能不全に陥っている。
今後の展開はベネズエラの新たな権力構造に大きく左右される。米国の支持を得てロドリゲス副大統領が実権を握ったが、キューバ支援を継続する上でどれほどの自主性を保てるかは不透明だ。
米政府がベネズエラとキューバのエネルギー・金融関係を断ち切れば、状況はさらに深刻化しそうだ。住民は、食料の確保と長時間の停電に苦しむ日々について「消耗する」と語っている。
親族が政治犯として拘束されているため名字については匿名を希望したハバナ在住のエミリオさんは、「私たちはすでに暗闇の中で生きているが、わずかな電力さえベネズエラから来ている」と指摘。「結局、代償を払うのはわれわれ国民だ」と語った。
原題:Cubans Are ‘Scared and Nervous’ After US Attack Destroys Morale(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.