金融市場はこれから数カ月、トランプ米大統領が誰を連邦準備制度理事会(FRB)議長に指名するか、そしてその指名によって大統領が政策金利のコントロールを得るのかという問題にくぎ付けになるはずだ。

ただし世界最強の中央銀行、FRBの前に今年立ちはだかる苦難はこれに限らない。筆者が考える「6つの大きな課題」は以下の通りだ。

1)独立性

市場の不安はもっともだ。インフレ抑制というFRBの決意がトランプ氏のために疑われるようになれば、その影響は壊滅的な規模になり得る。とはいえ次のFRB議長が大統領の意向に従い、金利をさらに引き下げたくても、その実現はまったく保証されていない。

FRB議長には連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの説得という仕事もある。失敗すれば信認を失いかねない。FOMCとFRBスタッフ、投資家、大統領からの信頼を同時に得るというのは至難の業だ。

トランプ氏が「正当な理由」に基づいて解任しようとしているクックFRB理事の件も、その重要性を忘れてはならない。FOMCメンバーを含むFRB当局者を解任する権限が大統領にあると、連邦最高裁が判断すれば、トランプ氏は金融政策の決定に直接影響を及ぼす力を得るだけでなく、FOMCの構成を都合良く組み替える可能性も出てくる。

2)政策金利

政治はさておき、FRBには金利を据え置くだけの十分な理由がある。昨年3回にわたる25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げの後、パウエル議長は現在の政策が「中立水準の妥当な推定レンジ内」にあると判断している。労働市場の安定と2%インフレ率という目標達成への緊張関係は薄れるだろう。さらなる金利調整を正当化するには、十分な時間と証拠が必要になる。

経済の勢いは持続しそうだ。人工知能(AI)投資や減税、極めて緩い金融環境の追い風が吹いている。関税によるインフレ圧力は年央までに和らぐ見通しで、多くの例外措置や再交渉のおかげで当初懸念されていたほどの影響は出ていない。住宅インフレも鈍化しており、これはトランプ政権による不法移民取り締まりによって世帯形成が変化していることが一因だ。

3)6兆6000億ドル(約1034兆円)

FRBは今後も米国債の購入を続け、銀行に十分な準備金を提供し、短期資金市場の円滑な運営を確保すると期待されている。だが次期議長候補の中には、バランスシートの大幅縮小を主張する者もいる。実行されれば、金利の変動性や金融システム内の波及リスクが高まり、金融政策の運営が複雑化するだろう。

4)銀行監督

2023年に起きた地銀危機は、銀行監督のプロセスと文化に深刻な欠陥があることを露呈した。ボウマンFRB副議長(銀行監督担当)は銀行の健全性に実質的に関わる課題に重点を置き、過剰に複雑で重複する規制を合理化する必要性を訴える。

その方向性は妥当だが、実際にどのように制度化されるかは不透明だ。単なる規制緩和に終われば、納税者や経済全体に過剰なリスクをもたらす恐れがある。

5)ステーブルコイン

ウォラーFRB理事はステーブルコイン発行体がFRBに準備金を預けることを容認するため、フィンテック企業向けに機能を限定した「スキニー・マスター口座」の設置を提唱した。

ただしこれは通常のFRB口座と異なり、利息は付かず、当座貸し越し(オーバードラフト)や割引窓口へのアクセスもないため、システムのストレス時には特に利便性が制限される。この制度の設計次第で、今後の米決済システムの在り方が決まるかもしれない。

6)金融政策の枠組み

FRBの情報発信手法は改革が必要だ。例えば四半期経済予測(SEP)は最頻値の予測に重点を置くため、金利見通しにおける意見の相違が、経済見通しの違いなのか、それとも政策対応の違いなのかを曖昧にしてしまっている。

欧州中央銀行(ECB)のように、スタッフ予測に代替シナリオを添えて公表する方式がより望ましい。そうすれば、経済が基準シナリオから逸脱した場合、市場参加者はFRBの対応を理解しやすくなり、金融政策の効果が高まるだろう。もっとも、パウエル議長は昨年5月にそうした改革の可能性を示唆したが、現時点では何の進展もない。

FRBが直面する課題は、金融政策に関するものは深く、監督や決済といった広範囲に及ぶ。新しい議長がやり残した課題にどう取り組むかは、非常に興味深い。

(前ニューヨーク連銀総裁のウィリアム・ダドリー氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。UBSの非業務執行取締役とコインベース・グローバルの諮問委員会のメンバーも務めています。このコラムの内容は、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:The Federal Reserve’s Six Big Challenges in 2026: Bill Dudley(抜粋)

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