(ブルームバーグ):トランプ米政権は、19世紀の外交政策から着想を得て、対外政策を形成している。第5代ジェームズ・モンロー大統領が西半球を米国の勢力圏と宣言して以来200年以上が経過したが、このアプローチは「モンロー主義」として知られるようになり、現在の米国は自国の勢力圏での影響力を再び主張しようとしている。
トランプ政権は昨年12月に公表した国家安全保障戦略で、モンロー主義を基礎に据える意向を明確に示した。その1カ月後、米軍がベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した後、トランプ大統領は「西半球における米国の支配は二度と疑問視されることはない」と強調した。
トランプ氏は米国が今後ベネズエラを運営すると述べているが、米軍が同国を支配していない中で、どのように実現するのかについては説明していない。トランプ氏や政権幹部は、ベネズエラにとどまらず、将来的にコロンビア、グリーンランド、メキシコといった国にも介入する可能性を示唆している。
モンロー主義とは何か?
モンロー主義の起源は、1823年に当時のモンロー大統領が米議会で行った一般教書演説にさかのぼる。この演説でモンローは、西半球における米国の影響力を強めることを目指し、欧州列強に対してこれ以上の植民地化を進めないよう警告した。西半球の多くの国がスペインやポルトガルなどから独立したばかりであることに触れ、欧州がこの地域でさらなる支配を試みるなら、それは米国に対する敵対行為と見なすと述べた。
モンロー主義はその後どうなったのか?
モンローが当初示した原則は、時を経て変化していった。1904年、第26代セオドア・ルーズベルト大統領は「ルーズベルトの系論」を加え、米国が「国際警察力」を行使して、不安定な中南米諸国に介入し、米国の利益を守ると主張した。これは、英国・イタリア・ドイツがベネズエラに対し、債務返済を迫るために軍艦を派遣して港を封鎖した事件を受けての対応だった。
国務省広報局の歴史部によると、長期的にはこのルーズベルトの系論は、西半球から欧州の影響力を排除するという本来の目的から逸(そ)れ、むしろキューバやニカラグア、ハイチ、ドミニカ共和国などへの米国の介入を正当化するための根拠として使われるようになった。
1933年、第32代フランクリン・ルーズベルト大統領はモンロー主義から大きく転換し、「善隣政策」を打ち出した。これは、西半球の安定を促進する手段として軍事力ではなく協調を重視する方針だった。
しかしその10年後に冷戦が始まると、このアプローチは終えんを迎えた。米国とソ連が中南米での影響力を巡って争う中で、モンロー主義は再び注目されるようになったが、1991年のソ連崩壊によって冷戦が終結すると、その重要性は薄れていった。2013年には、当時のケリー国務長官が「モンロー主義の時代は終わった」と明言している。
トランプ政権はどのようにモンロー主義を復活させたのか?
昨年末に発表された国家安全保障戦略の一環として、米国は「モンロー主義への『トランプの系論』を主張・行使する」と明記した。トランプ氏はこれを現在、「ドンロー主義」と呼んでいる。
この文書では、「西半球における米国の優位性を回復する」という目標が掲げられている。その地域において、米国は各国政府に対し、「麻薬テロリスト、麻薬カルテル、その他の国境を越えた犯罪組織」との戦いに協力するよう求めている。域外の勢力に対しては、西半球で「敵対的な外国勢力による侵略や重要資産の取得がない状態を維持する」との米国の方針を警告している。
この戦略文書の公表により、トランプ氏が数カ月前から示唆してきた政策転換が正式に確立された。トランプ氏は2025年1月に大統領に復帰して以来、デンマークの自治領で北大西洋条約機構(NATO)の集団的自衛の対象であるグリーンランドの取得やパナマ運河の支配権を取り戻す構想に繰り返し言及。さらにはカナダを米国の51番目の州として併合する案などを打ち出してきた。
ルビオ国務長官は就任後、欧州やアジアではなく中米4カ国とドミニカ共和国を最初の外遊先に選んでおり、米国が西半球に重点を置いている姿勢を明確にした。
なぜトランプ政権は西半球に重点を置いているのか?
米国の外交政策は数十年にわたり、中東やアジアを中心に展開してきた。しかし、「ドンロー主義」は焦点を自国に近い地域へと移している。
一見すると、西半球でより介入的な政策を取ることは、米国外での軍事的関与を縮小するとしたトランプ氏の選挙公約と矛盾するように思える。しかし政権は、この戦略を大統領の主要な優先事項と結びつけている。これには、南からの移民や違法薬物の流入の抑制に加え、豊富な埋蔵量を誇るベネズエラのような天然資源へのアクセスを確保することが含まれている。
原題:How Trump Is Reviving the Monroe Doctrine: QuickTake(抜粋)
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