2025年のアジアは、3つの主要な力学を軸に動いた。その3つとは、米中首脳の関係緊密化と台湾に対する圧力の高まり、そしてロシアと中国の双方に近づき自信を深める北朝鮮だ。24年末に筆者が予測した通りとなった。

これらの動きは26年、さらに鮮明になるだろう。アジアは一段と不安定になっており、緊張の高まりは連鎖的に全ての人々に影響を及ぼす。

米国と中国

25年10月末に韓国で行われた米中首脳会談で、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席の間に新たな親密さが生じたように見えるが、基盤は脆弱(ぜいじゃく)だ。25年の貿易戦争を制したのは習氏であり、トランプ氏は不利な立場で新年を迎えた。

米国側がどれほど大きく虚勢を張ろうとも、この点が見過ごされることはない。市場は米中の関係改善を歓迎しているが、問題が起きる余地は大きい。26年には最多で4回、米中首脳が会談する可能性があり、そのたびに関係が悪化する恐れもある。

仮にそうならなくても、緊張が続く見通しだ。トランプ氏は最近、米半導体メーカーのエヌビディアに先端半導体の中国向け出荷を認め、国家安全保障の観点から長年保持してきた防護措置を緩和した。

それでも、ベルリンに拠点を置くメルカトル中国研究所(MERICS)の米中関係に関する26年予測によると、中国の専門家や観測筋で構成される回答者の約4分の3が、軍事や貿易からテクノロジーに至るまで、関係が全般的に悪化するとみている。

エヌビディアの最先端製品は引き続き対中輸出が制限されると米政府は説明しているが、トランプ氏の緩和策により中国は国産品より少なくとも1世代先の半導体にアクセスできるようになる。

日本と中国

自国の安全保障と台湾海峡の安定との結び付きについて発言を強めているのが日本政府だ。中国はこれを挑発的と受け止めている。

台湾を領土の一部と主張する中国の習氏は、台湾を巡りトランプ氏からどこまで譲歩を引き出せるか探るだろう。それは台湾政府の立場を一段と脆弱にする。

台湾

台湾の頼清徳総統の前途は多難だ。野党が多数派の立法院(国会)の理解を得て、軍の近代化と抑止力強化を目的とする400億ドル(約6兆3000億円)の特別国防予算を成立させる必要がある。

台湾はすでに30年までに国防費を域内総生産(GDP)の5%に引き上げると表明しており、現在の3%強から大幅に増える。ただ、支出強化だけでは不十分かもしれない。

米情報当局筋は、習氏が27年までに台湾に侵攻できる能力を中国人民解放軍に持たせたいと考えているとみている。一方、多くの軍事専門家は、中国経済が減速し、人民解放軍が汚職捜査や粛清に揺れる中で、27年時点での台湾への全面侵攻は考えにくいと指摘する。代わりに、船舶の立ち入り検査や封鎖といったシナリオを挙げる声が多い。

平和的手段で台湾を掌握すると誓いながらも、武力行使の可能性を排除していない中国はここ数年、主張を推し通すため、軍事、政治両面で圧力を強めてきた。

人民解放軍は先月末、台湾周辺で実弾演習を2日連続で実施。中国はまた、人民解放軍機の台湾海峡中間線越えや公船派遣、サイバー・情報戦といったグレーゾーン戦術を常態化させている。これらは26年もほぼ確実に続くだろう。

北朝鮮

北朝鮮はアジアの安全保障で最も深刻なリスクの一つだ。米国防情報局(DIA)の25年報告によると、北朝鮮は米国の本土に到達可能な大陸間弾道ミサイルをすでに開発した。

金正恩朝鮮労働党総書記は、トランプ氏との協議が19年に決裂して以降、非核化交渉を繰り返し拒否してきた。自らの安全を保証する存在と位置付けている核兵器を、放棄するつもりはない。ロシアとの関係深化と中国からの着実な支援も相まって、朝鮮半島情勢を巡る見通しが変わりつつある。

複数の韓国当局者は、米朝首脳会談が26年に開かれる可能性を示唆している。1年前には想像もできなかった展開だ。

金氏にとって、これは求めてきた交渉カードになり得る。制裁緩和を引き出す、あるいは、非核化の失敗を米国に黙認させ、核開発を続けることへの暗黙の了解を取り付ける余地が生まれるからだ。ミサイル発射や外交的演出、地政学的アジェンダを乗っ取ろうとする試みが今後相次ぐと予想される。

26年のアジアは戦争の瀬戸際にあるわけではない。ただ、この地域は近年記憶にないほど不安定さを増すだろう。覚悟しておくべきだ。

(カリシュマ・ヴァスワニ氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、中国を中心にアジア政治を担当しています。以前は英BBC放送のアジア担当リードプレゼンテーターを務め、BBCで20年ほどアジアを取材していました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Brace for a Year of Trump-Xi, Taiwan and Kim: Karishma Vaswani(抜粋)

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