米軍によるベネズエラのマドゥロ大統領の拘束と米国への移送が、中国のソーシャルメディア上で幅広い議論を巻き起こしている。一部のユーザーからは、この軍事作戦は中国が台湾との緊張関係に対処する方法のひな型となり得るとの声が上がっている。

トランプ米大統領の命令で行われた作戦は、3日遅くに中国の微博(ウェイボ)でトレンドのトップに躍り出た。このトピックの閲覧数は約4億4000万回に達した。多くのコメンテーターが、ベネズエラの運命と、中国が統一を目指す台湾の将来を重ね合わせた。

あるユーザーは700件以上の「いいね」がついた投稿への返信で、「将来、台湾を取り戻すために同じ方法を使うことを提案する」と述べ、別のユーザーは「米国が国際法を真面目に捉えていない以上、なぜわれわれがそれを気にする必要があるのか」と書き込んだ。

トランプ米大統領は3日、米国がベネズエラを「運営する」と表明した

マドゥロ氏とその妻を拘束した「米帝国主義者によるベネズエラへの電撃的な急襲」は、中国軍が台湾に奇襲攻撃をかけ、台湾の頼清徳総統を捕らえるための「完璧な青写真を提供している」との投稿もあった。

中国外務省は4日の声明で米国に対し、マドゥロ大統領夫妻の安全を確保し2人を解放するよう呼びかけた。米国の行為は国際法と国際関係を規定する基本原則や、国連憲章の目的と原則に明らかに違反していると指摘した。

同省はこれより先に、「主権国家とその大統領に対して米国が行った露骨な武力行使を強く非難する」とコメントしていた。

台湾外交部(外務省に相当)は声明で、ベネズエラの情勢を「注視している」とコメント。米国やその他の民主主義国家と協力し「地域および世界の安全と安定、繁栄に共同で貢献していく」と付け加えた。

中国の習近平指導部は最近、台湾周辺で中国人民解放軍による大規模な軍事演習を実施するなど、軍事的圧力を強めているが、トランプ氏はこれを重大視しない考えを示している。

中国国内でナショナリズム感情が高まっているとはいえ、米中間の最大の火種の一つである台湾を巡る習指導部の戦略が直ちに変更されるわけではない。しかし、トランプ政権による今回の軍事作戦は、中国に自国周辺で軍事攻勢を強める余地を与える可能性がある。

元米外交官でブルッキングス研究所のライアン・ハス上級研究員は「ベネズエラでの今日の出来事が、台湾に関する中国当局の計算を劇的に変えるとは予想していない」とXに投稿。中国政府が台湾への武力行使などを控えてきたのは、国際法や規範を尊重しているからではないと指摘した。

ハス氏は、中国が米国の国盟国や近隣諸国と領有権を争っている南シナ海での活動を挙げ、「米国が主張しているような国際法の適用除外という大国の特権を、自らも享受できると期待していると、中国政府は米政府に対し強調するだろう」と付け加えた。

中国軍のノウハウを疑問視も

アジア・ソサイエティ政策研究所のシニアフェロー、ライル・モリス氏は、習主席はトランプ政権の行動について、国家安全保障の名の下に大国が近隣諸国に介入するという、ロシアのウクライナ侵攻に対する認識と同様の捉え方をする可能性があると分析。「中国による台湾侵攻の可能性も同じカテゴリーに分類され得る」と付け加えた。

「特に米国の行動に対する世界の反応が抑制気味の場合、習氏に台湾に対する軍事行動を検討させる窓を開くと推測するのは、決して誇張ではないと思う」とモリス氏は語った。

一方、中国にそのような軍事作戦を実行するノウハウがあるか疑問視する声もある。

米軍による今回の軍事作戦は数カ月におよぶ情報活動を経たものであり、150機余りの米軍機によって実施されたと、ケイン米統合参謀本部議長は3日の会見で明らかにした。

シンガポールのS.ラジャラトナム国際学院(RSIS)のシニアフェロー、ドリュー・トンプソン氏によれば、関与した米軍部隊は敵対的な環境下での作戦遂行において豊富な経験を持っていた可能性が高い。

同氏は「中国人民解放軍にそのような経験があるとは思えない」と述べた上で、「中国当局には台湾の指導者を無力化する他の選択肢がある」とし、中国にとっては手段として暗殺の方が成功の確率が高いだろうと指摘した。

原題:China Social Media Hails US Maduro Move as a Taiwan Template (2)(抜粋)

(台湾外交部のコメントを追加して更新します)

--取材協力:Philip Glamann、Yian Lee、Josh Xiao、Shamim Adam.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.