(ブルームバーグ):2026年のワイン業界がどうなるか、今のところは不透明だ。例えば、米最高裁判所がトランプ大統領の関税政策を却下し、ワインの価格がこれ以上上がらなくなるのか、様子を見なければならない。
また、気候変動が近い将来、ブドウ栽培に影響を与えることは間違いない。英国気象庁は、2026年は観測史上4番目に暖かい年になると予測している。つまり、洪水、暴風雨、熱波、干ばつ、山火事が伝統的な生産地でもさらに増え、ワイン生産者はスウェーデンなどのより涼しい地域にブドウを植えざるを得なくなることを意味する。
2025年から続くトレンドの中には、今も進化し続けているものがある。ノンアルコールワインはさらに主流に食い込み、レストランでの選択肢が増え、技術の向上により味もさらに良くなるだろう。

ワイン販売は減少しそうだが、2025年の米国ワイン消費者ベンチマークセグメンテーション調査の新たなデータによると、1997-2012年生まれのZ世代は、過去1年間で消費量を増やしており、成人期を迎えた過去の世代とほぼ同様の傾向を示している。また、1981年から1996年生まれのミレニアル世代はベビーブーマー世代を追い抜き、最大のワイン消費層となった。
そして高級ワインに対する古い概念が急速に変化する中、「ワインを再び楽しくする」ことが新たな時代の潮流だ。
スパークリング
シャンパンの売り上げは低迷しているが、米国、英国、フランスでは、スパークリングワイン全体の落ち込み幅は、他のワインより小さい。特にプロセッコは2024年、12%増加した。
米市場調査会社ワイン・マーケット・カウンシルが12月初旬に発表した、米成人約5000人を対象とした調査によると、ミレニアル世代とZ世代はベビーブーマー世代よりもはるかにスパークリングワインを好んで飲んでいる。炭酸のワインは今や、ロゼのように日常的なワインとなり、テイクアウトのタイ料理や中華料理と一緒に楽しむ飲み物となった。そして言うまでもなく、フルートグラスに注がれた泡は、抜群にインスタ映えする。
世界中のワインメーカーがこの需要に応えようとしている。フランスのクレマン、英国産スパークリングワイン、ドライなランブルスコ、ドイツやオーストリアのゼクトなどだ。シャンパンのような規制がないため、スパークリングワイン生産者はほぼあらゆる種類のブドウを使用できる。つまり、味わいの多様性も生まれるのだ。
グリッロやカタラットといった、イタリア・シチリアの土着品種を用いたエトナ山産スプマンテ・ビアンコの生産量は、2019年から2024年にかけて2倍以上に増えた。ドン・ペリニヨンの元醸造責任者リシャール・ジョフロワ氏は2025年、仏コルシカ産のタンク発酵スパークリングワイン「アヴィッツァ」を発売した。島の固有品種3種をブレンドして造られている。
AIソムリエ
人工知能(AI)は、ワインの栽培・製造方法にも変革をもたらしている。AI搭載センサーやドローンが土壌水分を監視し、ブドウの病気が広がる前に検知する。気象パターンを評価し、収穫時期を予測する。ボルドーでは、AI駆動ロボットがせん定や除草を行い、選果台から発酵槽へブドウを運ぶ。
来年には、AIはワイン観光にも進出する。ナパバレー・マリオットホテル&スパは、AIワイン推薦ソフトウエアとアプリを導入し、宿泊客のプロフィルに基づき食事やワイン、スピリッツを個別におすすめし、ワイナリーツアーを提供する。新たな形のコンシェルジュだ。2026年初頭に米カリフォルニア州ナパとベイエリアで導入後、西海岸全域と北米で提携を拡大する。英国も視野に入っているという。
ただ、サンフランシスコ・クロニクルが最近報じたように、AIには限界がある。対話型生成AIのChatGPTは主に、有名な観光スポットへ訪問者を誘導する。隠れた名所や落ち着いた雰囲気のスポットについては、依然として知識を持つ人間が必要だ。
新型ワインボトル
2025年まで、米国では航空機用ボトルから大容量ボトルまで、法律で定められた限られたサイズでのみワイン販売が可能だった。
今や13の追加サイズが認可され、大半は小容量だ。例えばダオ・ヴィンヤーズの「エステート・コレクション・バイ・ザ・グラス・ギフトセット」は、試験管のような100ミリ・リットル瓶に詰められた高級赤ワイン3種を提供する。人気のカベルネ・ソーヴィニヨンも、洗練されたボトル6本パックで、手頃な価格で販売される。
原題:How Wine Will Change in 2026, From Climate Impacts to Gen Z(抜粋)
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