イスラエルは、ソマリアからの独立を一方的に宣言したソマリランドを国家として承認した。ネタニヤフ首相が26日に発表した。ソマリランドを国家承認した最初の国として、戦略的に重要な紅海沿岸に新たなパートナーを得る。

ネタニヤフ氏は29日、フロリダ州のトランプ米大統領の私邸「マールアラーゴ」で同大統領と会談する予定。不安定なガザ停戦合意や中東安定化に向けた広範な取り組みについて協議する。

イスラエル首相府によると、同首相とソマリランドのアブドゥラヒ「大統領」が、相互承認の合意文書に署名した。声明ではソマリランドを「独立した主権国家」と表現。「この宣言はアブラハム合意の精神に沿ったものだ」とした。ネタニヤフ首相はアブドゥラヒ氏にイスラエルを公式訪問するよう要請した。

トランプ大統領は、イスラエルと一部のアラブ諸国の関係正常化を実現させたアブラハム合意の拡大を目指している。しかし、最も取り込みたいサウジアラビアは、ガザでの戦争やパレスチナ国家樹立を巡る取り組みの行き詰まりへの抗議から、参加を見送っている。

ソマリアは、イスラエルとソマリランドの合意を違法だと非難。「主権に対する意図的な攻撃」だとした。

サウジアラビアは、イスラエルとソマリランドによる相互承認は「国際法に違反する一方的な分離独立の動きだ」と非難し、受け入れられないとした。国営サウジ通信(SPA)が外務省の声明を引用して報じた。

アフリカ連合(AU)委員会のユスフ委員長もこの協定を批判。声明で「ソマリアの統一、主権、そして領土の一体性を損なういかなる試みも、アフリカ連合の基本原則に反するものであり、大陸全体の平和と安定に広範な影響を及ぼす危険な先例となる恐れがある」と述べた。

1991年に独立を宣言

ソマリランドは1991年にソマリアからの独立を宣言したが、国家主権について国際的な承認を得るには至っていない。ソマリランドはジブチやエチオピアとも国境を接し、アデン湾を挟んでイエメンと向かい合っており、いくつかの国が代表部を置いている。

ネタニヤフ首相の声明は、ソマリランドによる「テロとの闘いと地域平和の推進」を評価。関係構築にイスラエルの情報機関モサドが関与してきたことを明らかにした。

ワシントンのシンクタンク、民主主義防衛財団(FDD)のマーク・ドゥボウィッツCEOは、「なぜイスラエルがソマリランドと関わるのかと嘲笑する者たちは地図を見るべきだ。ソマリランドは、世界貿易とエネルギー輸送の要衝であるバブ・エル・マンデブ海峡に隣接するアデン湾に位置している」と指摘。「海の向こう側にはイランの支援を受けるフーシ派がイスラエルや船舶を攻撃している。ソマリランドは安定、港湾、インテリジェンスへのアクセス、そして紅海における非イラン系の拠点を提供する」と述べた。

原題:Israel Seals Recognition Deal with Breakaway Somalia Region (1)、Saudi Arabia Says It Rejects Israeli Recognition of Somaliland

--取材協力:Ramah Nyang.

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