欧州連合(EU)の共同債に投資する投資家は、今後数年間で発行が増加するリスクに直面している。ウクライナ支援のための借り入れ拡大が見込まれるためだ。

EU30年債利回りは19日に9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して4.14%となり、ユーロ圏の発行体の中で最大の利回り上昇を記録した。EU加盟国首脳は今後2年間でウクライナに900億ユーロ(約16兆6000億円)を融資し、資金を市場から調達することで合意した。

EU債はこのところドイツ債と比べて堅調で、スプレッドは年前半の85bpから60bpまで縮小した。EU債の流動性向上や、発行計画を加盟国と協調させる取り組みが投資家から評価されるようになった。

EUが必要に応じ、資本市場から追加資金をどのように調達するのかについては、依然として不透明な部分が多い。今週の投資家向けの電話会議で、EU当局者はウクライナ支援のための追加資金需要に対応する能力があると主張し、短期証券から期間数十年の長期債まで多様な手段を利用できると説明した。

コメルツ銀行の金利・クレジット調査責任者クリストフ・リーガー氏は、供給増加でEU債の堅調な値動きは「試される」だろうと指摘。「追加的な資金需要があるなら、まずは短期証券の増発で対応するだろう」と述べた。

EU共同債による資金調達案は、当初計画されていた「欧州内で凍結されているロシア資産の活用」からの大きな転換だ。ウクライナはこのEU融資について、ロシアが賠償金を支払うまで返済する必要はなく、その間、ロシア資産はEU内で凍結されたままとなる。

EUは今週、2026年上期の発行額を前年と同じ900億ユーロとする計画を発表した。通年では1600億ユーロを「目安」としている。ただし、EUの共同債発行を規定している法的文書では、26年の最大発行可能額を2000億ユーロと、前年の1700億ユーロから引き上げられている。

短期証券の発行限度額も、前年の600億ユーロから1000億ユーロに拡大した。レポ取引による資金調達も可能で、借り入れ増加に対応する手段は複数ある。

欧州委員会は19日、「新たな資金調達の詳細が関連する立法手続きとともに確定され次第、発行計画を更新する」と発表した。追加発行については、「慎重かつ市場に配慮した方法で、利用可能な資金調達手段を活用していく」としている。

原題:EU Bonds Face Test From Proposed Extra Borrowing for Ukraine (1)(抜粋)

--取材協力:Olga Voitova.

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