ヘッジファンド運営会社のシタデルは、利益の主要な原動力だった天然ガスへの投資が失敗に終わり、今年は2018年以来最悪の年間リターンとなる見込みだ。

関係者によると、同社の主力ファンドの18日時点での年間リターンは9.3%だった。株式、債券、クレジット、クオンツ戦略で利益を上げ、前半に損失を出した天然ガスを含む商品取引でも辛うじて利益を確保した。シタデル広報はコメントを控えた。

今年のリターンが10%を下回れば、1990年のシタデル設立以来6度目となる。これは近年、リターンを飛躍的に高めるため、同社が商品取引へ依存を強めてきたことの表れだ。

Photographer: Scott McIntyre/Bloomberg

資産規模720億ドル(約11兆3200億円)のシタデルは、2017年にセバスチャン・バラック氏が商品責任者として加わって以来、商品市場における巨大企業へと成長した。天然ガスは同社の成功に大きく貢献し、シタデルは北米の化石燃料の輸送・貯蔵事業を手掛ける商社部門を構築した最初のヘッジファンドの一つとなった。

ロシアのウクライナ侵攻が世界的なエネルギー危機と記録的な価格変動、特に天然ガスの変動を引き起こした2022年には、同社の利益の約半分にあたる80億ドルを商品取引で稼いだ。その後2年間も、シタデルは総利益の約半分の約40億ドルを商品取引で得た。

シタデルは収益源を多様化し情報面での優位性を高めるため、実物取引の態勢拡充を進めてきた。米国では今年、主要なヘインズビル・シェール盆地の天然ガス生産権益取得に向け、複数の取引を活発に行った。人工知能(AI)データセンターの電力需要増加を背景に、液化天然ガス(LNG)輸出と需要の急増が見込まれる中、同地域はLNGビジネス展開の要とみられている。

電力市場の変動性から利益を得る体制も整えている。今年は、再生可能エネルギー生産者やバッテリー事業者を含む顧客が価格変動リスクをヘッジする支援を行うドイツの電力取引会社フレックスパワーの買収に合意した。

事情に詳しい関係者によると、今年はシタデルと同業のマルチストラテジー型ヘッジファンドのほぼすべてが、エネルギー分野で大きな利益を上げるのに苦戦した。ただ、他のファンドはシタデルほどエネルギー取引体制を強化していなかったため、パフォーマンスの低下がリターンに与える影響は小さかった。

ジェーン・ストリート・グループやキューブ・リサーチ・アンド・テクノロジーズなど他の大手ファンドも、シタデルの動きに追随し、天然ガスの実物取引の拡大を目指している。

原題:Citadel Posts Worst Return Since 2018 as Natural Gas Bets Falter(抜粋)

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