経営陣による買収(MBO)など株式非公開化の動きにアクティビスト(物言う株主)が次々介入している。一般株主保護の機運が高まる中で企業に対し圧力をかけており、買収価格の引き上げや対抗的な提案を受け株価が急騰する事例も相次ぐ。

東京証券取引所が企業に対し資本や経営効率の改善を求め、上場維持基準の厳格化も進めていることから、MBOに踏み切る企業は増加傾向だ。しかし市場では、経営陣はコストを抑えようと株式公開買い付け(TOB)価格を低めに設定する意識が働きやすいとの見方があり、アクティビストから狙われる一因となっている。

16日の日本株市場で化粧品メーカーのマンダム株が11%高と急騰したのは、米投資ファンドのKKRがMBO価格を1割強上回る買収提案を出したと報じられたからだ。マンダムを巡っては旧村上ファンド系の投資会社などがMBO価格は安過ぎるとして2割の株式を取得して圧力をかけ、同価格が引き上げられていた。株価は9月のMBO発表前と比べ9割高い。

MBOが不成立になるケースも出ている。カーケア用品のソフト99コーポレーションに対しエフィッシモ・キャピタル・マネージメントがMBO発表前の株価の2.5倍となる価格で対抗TOBを仕掛け、成立させた。

みずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは、東証が7月からMBOなどに関する情報開示の厳格化を求めたことで「非公開化の価格に対する透明性が高まり、アクティビストが文句を言いやすくなった」と見ている。MBOへの株主介入ケースの増加は「大きな流れとして日本株にポジティブ」とも指摘した。

個人など一般投資家の間ではこうした流れがさらに広がることへの期待感も出ている。11日に米ゴールドマン・サックスをスポンサーとするMBOを発表したネット印刷のラクスルは、足元の株価がTOB価格を6%上回る。アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは「今後アクティビストが介入してくる可能性が意識されている」と言う。

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アクティビストはMBOを行う企業の過去の開示にまでさかのぼり、経営陣を批判する材料にしている。ソフト99の場合、株式価値算定に使われた資本コストは同社が経営計画などで示してきた想定値を上回り、買い付け者に有利な数値が採用されたとエフィッシモは主張。自動車部品の太平洋工業には、初期の買収価格が統合報告書で掲げていた株価純資産倍率(PBR)1倍を下回っているとの指摘があった。

大和総研の鈴木裕主席研究員は「東証や政府の取り組みもあって一般株主保護の声が非常に強くなっている」ため、「保有株を高く売りたい投資家にとってはチャンスが広がっている」と言う。

トヨタ自動車グループによる豊田自動織機の非公開化では、買収価格を問題視したエリオット・インベストメント・マネジメントが5%まで株式保有比率を上げ、株価はTOB価格を約9%上回って推移する。太平洋工のMBOは価格が当初から4割強引き上げられたが、大株主のエフィッシモはその後も同社株を買い増し、現在も16%強保有するなど目が離せない状況が続く。

レコフデータによると、2025年に発表または報道されたMBO件数は30件と11年の21件を既に上回り、過去最多を更新している。市場では、アクティビストの動向を受け企業はより慎重なMBOの検討が求められるとの指摘がある半面、みずほ証の菊地氏は上場維持基準の厳格化などを背景に「今後もMBOは高水準が続くだろう」と予測している。

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