(ブルームバーグ):日本銀行が18、19日に開く金融政策決定会合では、今年1月以来、約1年ぶりとなる政策金利の引き上げが決まる見通しだ。声明文や植田和男総裁の記者会見から、今後の利上げのペースや余地を探ることになる。
複数の関係者によると、米関税政策を巡る不確実性の後退や、来年の賃上げに関する前向きな動きなどを受け、日銀は18、19日の会合で政策金利を現在の0.5%程度から0.75%程度に引き上げる公算が大きい。0.5%超の政策金利は1995年以来、30年ぶりだが、利上げ路線は維持される見込みだ。
市場の関心は、既に利上げペースと昨年来の政策正常化局面で政策金利がどの程度まで引き上げられるかに移っている。ブルームバーグがエコノミスト50人を対象に行った調査では、全員が今会合での利上げを予想。64%が半年に1回程度の利上げを想定し、最終到達点(ターミナルレート)予想の中央値は1.25%となった。
日銀の利上げ継続姿勢を確認するには、政策運営方針の変化の有無がポイントとなる。日銀は現在、実質金利が極めて低い水準にある中で、経済・物価の見通しが実現していけば、政策金利を引き上げて金融緩和の度合いを調整していくとしている。
関係者によると、日銀は0.75%の政策金利水準は引き続き緩和的とみており、政策運営の考え方にも大きな変化はない見通しだ。2%の物価安定目標の実現時期について、政策委員の中にはおおむね達成されたとの指摘や前倒しを主張する声もあるが、2027年度までの見通し期間後半との見方も維持されるとみられる。
緩和環境
先行きの利上げ余地を探る観点から焦点となるのが、緩和的な金融環境とその範囲に関する日銀の説明だ。現在は政策金利から物価上昇率を差し引いた短期の実質金利が大幅なマイナスにあることが主な根拠になっている。
関係者によると、どこまでが緩和的な金利水準かは、利上げに伴う経済や物価の反応を点検しながら探っていくしかないという。金融環境を確認する上で、増加基調が続く金融機関の貸し出しなどへの影響も注視する。
市場の関心が高い経済を刺激も抑制もしない中立金利に関しては、最近のデータを反映しても、これまで示してきた1-2.5%に分布しているとの見解に大きな変化はないと関係者は指摘。日銀は、中立金利を前提とした政策判断やコミュニケーションに慎重とみられる。
もっとも、植田和男総裁は1日の会見で、中立金利について「次回利上げをすることがあれば、考えをもう少しはっきりと明示する」と発言した。今会合後の会見でも改めて中立金利に関する質問が出る可能性があり、総裁が示す見解が注目される。
会見では、最近の円安や長期金利の上昇に関する発言への関心も高い。長期金利は17日に一時1.98%と07年6月以来の高水準を付けた。
高市早苗政権は、物価高対応を最優先に掲げて大規模な経済対策を決定しており、食料品価格などの上昇につながる円安への警戒感が強い。市場では、日銀の利上げでも円安が進む場合、政府が為替市場介入に動くとの見方もある。
ブルームバーグ・エコノミクスの見方
「市場が利上げを織り込む中、焦点は植田和男総裁の記者会見における発言に移る。慎重なメッセージを堅持し、今後の利上げの具体的な時期を示唆することは避けるとみている」
木村太郎シニアエコノミスト
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--取材協力:山中英典.
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