世界最大のステーブルコイン発行企業テザー・ホールディングスが、イタリアの名門サッカークラブ、ユヴェントス・フットボール・クラブに買収提案を行ったことが分かった。即座に拒否されたが、急成長する暗号資産企業は100年以上の歴史を持つイタリア名門一族と対峙(たいじ)することになった。

ブルームバーグが13日に入手した書簡によると、テザーが提示した全額現金による買収案は、アニェッリ家の投資会社エクソールが保有するユヴェントス株65.4%を1株当たり2.66ユーロで取得する内容。これに基づけば、ユヴェントスの企業価値は約11億ユーロ(約2000億円)となる。ミラノ市場での12日終値に対して約21%のプレミアムだ。

ステーブルコイン「USDT」で知られるテザーは、さらに10億ユーロをクラブの成長支援に投じる意向を示し、他の株主に対しても今回と「同等以上の価格」での買い取りを約束した。

しかし、エクソールは提案を即座に退け、テザーを含むいかなる買収にも応じる意思がないことを明確にした。13日の発表資料には、取締役会が「全会一致で提案を拒否した」と記した。最高経営責任者(CEO)のジョン・エルカン氏は同日、ビデオメッセージで「ユヴェントスは102年間、私の家族の一部だった」と語り、売り物ではないと強調した。

テザーはブルームバーグのコメント要請に応じていない。

テザーは2月以降、ユヴェントス株の買い増しを続け、11.5%を保有する第2位株主となった。テザーのCEOでイタリア出身のパオロ・アルドイノ氏にとって、この買収は個人的意味も持つ。「私にとってユヴェントスは人生の一部だ」と12日の発表資料で語った。

テザーは「新興マネー」の象徴で14年の設立以来、長く公的な拠点を持たなかったが、2025年1月にエルサルバドルに本社を開設。暗号資産業界で最も収益性の高い企業の一つに成長した。現在では、デジタル資産にとどまらず、人工知能(AI)や農業など複数分野への投資を加速させている。

原題:Tether’s €1.1 Billion Juventus Play Pits New Money Vs. Old (1)(抜粋)

--取材協力:Anna Irrera.

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