(ブルームバーグ):東京ガスは米国事業の収益安定化に向け、天然ガスの液化や輸出関連の設備などガスバリューチェーンの中・下流分野への投資を目指している。
東京ガスの笹山晋一社長は都内でのインタビューで、上流に当たる米国のシェールガス事業で「しっかり収益を上げながらポートフォリオを形成するために、中・下流にも投資したい」と述べた。対象としては天然ガスの液化プラントや輸出基地のほか、エネルギーサービス分野も念頭に置いていると続けた。
東京ガスは2023年12月に約27億ドル(約4200億円)でガス開発・生産事業を手掛ける米ロッククリフ・エナジーを買収し、翌年2月には北米でガスのマーケティング・トレーディング会社に出資するなど、現地での天然ガス事業拡大を図ってきた。ガスの開発や生産事業は市場価格の変動による影響を大きく受けるのに対し、中・下流事業はより安定的な収益を見込みやすい。
笹山社長は米国で保有する上流事業に対する投資は着実に行っていく一方、「さらに権益を増やすかどうかというのは状況を見て考えたい」と述べた。シェールガスは継続的な開発が必要なため、次期中期経営計画で予定する3500億円の海外事業投資のうち「かなりの部分はシェールの開発が中心になる」という。
東京証券取引所の要請などを受けて上場企業は資本効率の改善に向けた取り組みを加速しており、東京ガスも10月に発表した26ー28年度の次期中期計画で採算性の低い資産の売却などを打ち出した。不動産事業では、今後の成長に寄与しづらいなどと判断された一部の資産を計700億円売却するとした。
笹山社長は近隣にエネルギー供給を行う設備を備えるなど自社とシナジーがある不動産は引き続き保有する一方、自社だけでは価値向上させることが難しいものについては売却する考えだと述べた。具体的な物件の名前については言及を控えるとした上で、対象となる不動産については既にリスト化を済ませており、今後売却を進めていく方針だと述べた。
東京ガスを巡ってはアクティビスト(物言う株主)の米エリオット・インベストメント・マネジメントが株主として非中核の不動産について売却を求めていた。エリオットは24年11月に東京ガスの株式を5.03%保有していることが大量保有報告書で明らかになったが、今年4月になって保有比率が4.91%に減少したことが判明している。
笹山社長は10月に発表された中期計画を受けて実施された投資家向け説明会でエリオットから質問を受けたと明かした上で、「今でも株主なのかどうかとか、どのぐらい持っているのかというのは、われわれは必ずしも十分情報を持ち合わせていない」と述べた。
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