(ブルームバーグ):欧州当局者の間では、米国が仲介するウクライナ和平案がロシアに悪用され、東部ドンバス地方の再侵攻に道を開く恐れがあるとの懸念が強まっている。
事情に詳しい関係者によると、米国が設置を提案する非武装地帯に関してロシアが秘密裏に部隊を展開する口実になりかねないとの見方が出ており、最近の協議において大きな障害となっている。ロシアが偽旗作戦などハイブリッド戦術を用いて、米国による安全の保証を阻害し、新たな侵攻の口実を作り出す恐れがあると、関係者は指摘した。
詳細はなお流動的だ。ウクライナのゼレンスキー大統領によると、米国がドンバス地方を特別行政下の「自由経済区」を設置する案を検討している一方、ロシアは非武装地帯とすることを望んでいる。ゼレンスキー氏は今週、東部領土の帰属問題を国民投票にかける可能性に言及した。
和平案の最大の争点となっている領土問題を巡っては、ロシアがドンバス地方からのウクライナ軍撤退を要求。これにはロシア軍が支配していないドネツク州とルハンスク州の地域が含まれている。
協議が非公開で進む中、ウクライナが現在支配する地域から撤退すれば、ロシアがそれを利用する恐れがあると、匿名を条件に関係者が明らかにした。こうした状況から、和平案にロシアの「トロイの木馬」的な要素が紛れ込まないよう確実にすることが欧州にとっての当面の最優先課題となるという。
ホワイトハウスはこうした懸念について、現時点でコメントの要請に応じていない。
こうした中、米国のウィトコフ特使は週末にドイツのベルリンでゼレンスキー大統領や欧州首脳らと会談する予定だ。ホワイトハウス高官が明らかにした。トランプ米大統領はウクライナの和平合意実現に向けた働きかけを強めている。
ドイツのメルツ首相の首席報道官によると、メルツ氏やスターマー英首相を含む欧州首脳らはすでに、15日に会談する方向で調整していた。
ウィトコフ氏が週末の協議のためベルリンに向かう計画については、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が先に報じた。
原題:Witkoff to Meet Zelenskiy, European Leaders at Weekend Talks (1)、Europe Sees a Trojan Horse for Russia in Trump’s Ukraine Plan(抜粋)
--取材協力:Daryna Krasnolutska、Andrea Palasciano.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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