(ブルームバーグ):米ホリデー商戦は今年、やや精彩を欠いたスタートとなっているようだ。消費者は雇用市場の冷え込みや賃金の伸び悩み、根強いインフレ、関税の悪影響といった複数の懸念を抱えたまま、28日に本格的に始まるホリデー商戦に臨む。米国の消費者は経済面の逆風を押し切って買い物を続けるのか、それとも消費主導の米経済が勢いを失い始めるのか、ブラックフライデーはまさにその試金石となる。
こうした中、今年のホリデーシーズンは例年ほど華やかにならない兆候が既に見え始めている。
調査会社サーカナの主任小売りアドバイザー、マーシャル・コーエン氏は「今年のホリデーシーズンは、熱気にあふれた華やかなものになるとは期待していない」と述べた。
サーカナによると、全体の支出額は昨年並みになると見込まれるものの、販売数量は最大2.5%減少する可能性がある。言い換えれば、消費者は支出を増やしても買える商品の量は減るということだ。
「今年はクリスマスツリーの下がプレゼントでぎっしり、とう状況にはならない」とコーエン氏は語った。

米小売業者にとって11月と12月は年間売上高の20%を占める重要な時期だ。今年は、価格に一段と敏感になり不安を抱える消費者を巡り、企業間の競争が激しさを増している。依然として購買意欲はあるものの、支出先を慎重に選ぶ動きが広がっており、特に所得上位10%の層ではその傾向が顕著だ。ブラックフライデーのセールを、ぜいたくではなく、生活必需品のまとめ買いに活用するという消費者もいる。
一方、関税の影響でブランドによっては例年のような大幅値引きを実施しずらくなっている。また実店舗に足を運ぶ買い物客は、長い行列や店員不足に直面する可能性もある。小売業における季節雇用は2009年以来の低水準に落ち込む見通しだ。
ニューヨーク市に住むジェニファー・グリーンバーグさん(29)は、百貨店ブルーミングデールズでメノラー(ユダヤ教の燭台)を探しながら、「『必要ではないけれど今すぐ買わなきゃ』と思わせるほどの値引きはどこにもない」と語った。
とはいえ、セール品が全くないというわけではない。
ウォルマートは、ビジオ製テレビの50%オフや10ドル(約1560円)のジャケットなど、幅広い商品で値引きを実施している。アマゾン・ドット・コムは「ランコム」の化粧品や他ブランドの高級フレグランスで最大50%オフの値引きを展開。ターゲットは家庭用炭酸飲料マシンのソーダストリームをほぼ半額とし、アップル製品を最大200ドル値引きしている。さらに1ドルのリボン飾りや5ドルのバービー人形、10ドルのブランケットなど手頃な価格の商品も販売する。ホーム・デポでは、一部の電動工具や冷蔵庫が50%オフとなる。
ディスカウント百貨店チェーンのコールズは、買い物客を引き付けるため「積極的」なプロモーションを実施する計画だ。また家電量販店ベスト・バイは例年より強いブラックフライデーになるとの見通しを示している。

各社は他の方法でも買い物客を呼び込もうとしている。ターゲットではブラックフライデー当日、各店舗で先着100人にギフトバッグを配布するほか、映画「ウィキッド」をテーマにした限定商品なども提供する。ウォルマートとターゲットは、人工知能(AI)を活用した新たなショッピングツールを導入し、顧客がより簡単にセール品を見つけ、購入できるようにする。
今年はマクロ経済が安定さを欠く中でも消費は比較的堅調だった。年初には、一部の消費者が関税引き上げを見越して高額商品を購入し、それが売上高を押し上げた。その後は、好調な株式市場が所得上位層の消費を支えている。多く小売企業は、消費者の購買行動はおおむね安定しており、関税の価格への影響も当初の予想ほど大きくなかったと指摘している。
ただ最近になり、暗い兆しも見え始めている。低所得者層の消費は減退し、11月の消費者信頼感指数は7カ月ぶりの大幅低下となった。また9月の小売売上高の伸びも鈍化した。

コンサルティング会社コンシューマー・コレクティブのマネジングディレクター、ジェシカ・ラミレス氏は、来年関税の影響を受ける可能性のある商品に買い物客の関心が集まるだろうと指摘。同氏によれば、消費者はストレスの多い時期に気分を明るくしてくれるものを購入している。ハンドバッグを彩るアクセサリーや部屋の雰囲気を明るくするインテリア雑貨などが人気だという。
近年、ブラックフライデーはかつてほどの一大イベントではなくなってきている。秋のセールやアマゾンの「プライムデー」などのオンラインセールで、ホリデーシーズンの買い物を早めに済ませる消費者が増えているためだ。
戦略コンサルティング会社カーニーの米州小売り部門責任者、マイケル・ブラウン氏は、関税への懸念から、今年はその傾向がさらに顕著になっていると指摘。結果として、今後2カ月の支出全体が押し下げられる可能性があるという。
原題:Black Friday to Test Anxious US Consumers’ Willingness to Spend(抜粋)
--取材協力:Uma Bhat.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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