(ブルームバーグ):トランプ米政権は広範な貿易相手国・地域に発動した上乗せ関税について、連邦最高裁判所が無効と判断した場合に備え、新たな関税を迅速に導入できるよう代替策の検討を進めている。
事情に詳しい米政府当局者によると、商務省と通商代表部(USTR)はいずれも、政権側に不利な判断が下された場合の「プランB」を検討している。想定される代替措置には、通商法301条および122条が含まれており、いずれも大統領が一方的に関税を賦課する権限を認めている。
ただ、これらの代替策にはリスクも伴う。発動までに時間を要するか、権限の範囲に制限があることが多く、訴訟リスクも残る。政権側は依然として最高裁で優位な判断が下されることを望んでおり、トランプ大統領は経済的な緊急事態を根拠に発動した国・地域別関税の合法性を最高裁に繰り返し訴えている。
だが、最高裁は今月行われた口頭弁論でトランプ氏が発動した関税措置に懐疑的な見解を示しており、今回の動きは、政権が不利な判決に備えている兆しと言えそうだ。また、トランプ氏が前例のない手段を用いてでも、関税政策を堅持する構えであることを示す。
ある政権当局者は匿名を条件に、最高裁の判断にかかわらず「関税はトランプ氏の経済政策の中核であり続ける」と述べた。
トランプ大統領は19日、 「われわれは判断を待っている。良い結果になることを望んでいるが、そうでなくても対応する。いつも道を見つけてきたし、今回も方法を見つける」と述べた。
ホワイトハウスは代替措置の準備に関する詳細についてコメントを控えたが、トランプ氏の通商政策を維持するために「新たな手段」を模索していることは認めた。
「新たな手段」
最高裁判所がいつ判断を下すかは分かっていない。判事は関税を維持するか、全面的に無効とする、または一部に限定した判断を示すといった可能性もある。いずれにせよ、最高裁の決定は企業や外国政府にさらなる不確実性をもたらす恐れがある。
今回の訴訟の争点は、トランプ氏が1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に世界各国・地域からの輸入品に導入した上乗せ関税だ。合成麻薬フェンタニルの流入を理由に中国、カナダ、メキシコに課した追加の関税なども対象となる。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の推定によると、米国の輸入品に対する実効関税率は約14.4%で、このうち半分超がIEEPAに基づく関税によるものだ。最高裁が国・地域別の上乗せ関税を無効とした場合、「大半の関税は最終的に全面的に置き換えられると予想している」とBEのエコノミストは述べている。
代替策の一部はすでに動き始めている。例えば、トランプ氏はブラジルに対して通商法301条の調査を開始したほか、1期目には中国からの輸入品に対して301条に基づき追加関税を導入した。301条の発動には通常、関税導入前に長期の調査手続きが必要となる。
通商法122条の権限を用いれば、大統領は最大15%の関税を課すことができる。この税率はトランプ氏が複数の国との合意で採用してきた水準でもある。ただ、この措置は最長で150日間しか維持できない。

原題:Trump White House Prepares Tariff Fallback Ahead of Court Ruling(抜粋)
--取材協力:Nicole Gorton-Caratelli、Laura Curtis、Adrienne Tong.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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