21日の米株式相場は反発。波乱含みの1週間を上昇で締めくくった。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が12月の利下げに含みを持たせる発言を行ったことで、市場には安心感が広がった。

S&P500種株価指数構成銘柄のうち、約450銘柄が上昇。半導体エヌビディアは一時4%を超える下げとなっていたが、ほぼ値を持ち直した。トランプ政権が同社製の人工知能(AI)向け半導体「H200」について、中国向けの出荷を検討しているとのブルームバーグ・ニュースの報道が買い材料視された。

米株式相場は反発

今週は相場のボラティリティーが高まり、暗号資産(仮想通貨)やAI関連銘柄など、個人投資家に人気の高い資産が特に激しい値動きとなった。

ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「市場全体の基調が崩れたわけではなく、今は試されている段階だ」と指摘。「こうした局面は、本格的なトレンド転換というより、むしろ圧力を下げる安全弁として機能することが多い。市場はポジションの見直しと再調整を迫られている。投資家は半年続いた安定相場のなかで、その必要性を忘れかけていたようだ」と語った。

S&P500種はやや持ち直したものの、このままいけば月間ベースでは3月以来の低調なパフォーマンスとなる見通し。11月は例年は株式市場にとって好調な時期とされるため、こうした展開は異例といえる。

ナベリアー・アンド・アソシエーツのルイス・ナベリアー氏は「調整局面の底を見極めるのは難しいが、市場で有力視されつつある利下げ見通しが現実のものとなれば、12月にはかなりの反発が期待できるだろう」と語った。

ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズのフロリアン・イエルポ氏によると、2つの並行したストーリーが現在の金融市場を動かしている。一つは金融政策の動向、もう一つは人工知能(AI)の収益化をめぐるストーリーだ。

イエルポ氏は「米政府閉鎖に伴い経済指標の発表が滞ったことで混乱が生じ、これら2つのストーリーが一時的に重なっているような印象を与えていた」と指摘。「しかし次第に霧が晴れつつあり、両者が実際には異なる性質を持ち、それぞれ市場に異なる影響を及ぼしていることが見え始めている」と語った。

国債

米国債相場は上昇(利回りは低下)。金融政策の動向に敏感な2年債利回りは一時5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁の発言に反応した。

BMOキャピタル・マーケッツのベイル・ハートマン氏は「ウィリアムズ総裁の発言は重要だ。12月の利下げ判断の行方を左右しかねない中間派の1人だからだ」と指摘。「これまで、同総裁が12月会合の見通しをどう見ているのかは明確でなかった」と述べた。

金利先物市場の動向によると、ウィリアムズ総裁の発言を受けて12月9、10日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利下げの確率は約70%に上昇。発言前は約35%だった。

 

今週は米株安を受けて安全資産への需要が高まり、国債相場は上昇した。10年債利回りはこの5営業日で約8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。週間ベースでは10月前半以来の大幅な下げとなった。2年債利回りは週間ベースで9月以来の下げ幅となった。

トロント・ドミニオン銀行の英国・欧州金利担当シニアストラテジスト、プージャ・クムラ氏は「米国債は信用市場でリスク回避のムードが強まっていることの恩恵を受けている」と指摘。その上で、感謝祭を前に流動性が低下していることなどから、市場は依然として不安定な動きになりやすいと付け加えた。

為替

外国為替市場では円の上昇が目立った。片山さつき財務相が為替介入も辞さない考えを示したことを受けて優勢となった円買いが、ニューヨーク時間も続いた。

前日のニューヨーク市場では一時、1ドル=157円89銭まで円安が進んだが、この日は156円台前半まで上昇した。米利下げ観測が再び高まったことも、円の押し上げ材料になったとみられる。

 

ドル指数はほぼ横ばい。ただ週間ベースでは、10月中旬以来の堅調なパフォーマンスとなった。

原油

ニューヨーク原油先物相場は3日続落。ウクライナとロシアが和平に合意することで供給が増え、供給過剰が膨らむとの見方が広がった。またロシア寄りの和平案をウクライナが受け入れなければ、米国が支援を停止する可能性があるとの報道も意識された。

トランプ大統領は、協議継続中もロシアに対する制裁を解除しないと発言。これを受けて原油は下げを縮めた。ロシアの2大石油会社に対する制裁は21日に発効した。

ユーラシア・グループの地政学アナリスト、グレゴリー・ブルー氏は、制裁が遅延なく発効し、ウクライナの主要な欧州同盟国が米ロによる和平案の中核部分を拒否したにもかかわらず、市場はなお合意成立に備えていると指摘。

「市場はこの和平案を織り込みつつある。和平案には、今週初めに見られた以上に、米国のエネルギーが注がれているように見受けられる」とブルー氏は述べた。

 

トランプ氏はFOXニュースラジオに対し、ウクライナが和平提案を受け入れる期限として、27日が「適切」だと考えていると述べた。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物1月限は、前日比94セント(1.6%)安の1バレル=58.06ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は1.3%下落の62.56ドル。

金スポット相場は小幅高。一時下げていたが、ニューヨーク連銀総裁の発言を受けて国債利回りが低下し、これが金にプラスとなった。金は利息を生まないことから、金利が低下すると投資妙味が増す。

このほか地政学的緊張も金相場を支えた。ドイツ、フランス、英国の首脳はウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行い、ウクライナ軍が主権を防衛する能力を引き続き維持することを確認。米国とロシアの特使が取りまとめた和平案の中核部分を拒否することで一致した。一方トランプ米大統領は、米ロが取りまとめた和平提案をウクライナは27日までに受け入れるべきだと主張した。

金スポット相場はニューヨーク時間午後2時25分現在、前日比13.24ドル(0.3%)高の1オンス=4090.43ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は19.50ドル(0.5%)上げて4079.50ドルで引けた。

原題:

Stocks Stage Comeback at the End of a Jittery Week: Markets Wrap

US Treasuries Rally as Fed’s Williams Fuels Rate-Cut Bets

Dollar Set for Best Week in Over a Month; Yen Rises: Inside G-10

Oil Falls as Traders Weigh Odds of Ukraine-Russia Peace Deal

Gold Trims Loss as Fed’s Williams Signals a Near-Term Rate Cut

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