日本銀行の植田和男総裁は21日、経済・物価の中心的な見通しの実現確度が高まっているとし、さまざまなデータや情報を点検して利上げについて適切に判断すると語った。衆院財務金融委員会で答弁した。

植田総裁は、極めて低い実質金利を踏まえ、中心的な見通しが実現していけば、経済・物価情勢の改善に応じて「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」との方針を説明した。米関税政策を巡る不確実性は低下しており、見通し実現の確度は「少しずつ高まっている」との認識を示した。

答弁する植田和男日銀総裁(21日、衆院財務金融委員会)

その上で、現状は企業の積極的な賃金・価格設定行動が途切れないかを見極めていく段階とし、特に来春闘に向けた「初動のモメンタム(勢い)」の確認が重要だと指摘。今後の利上げの是非やタイミングは「さまざまなデータや情報を丹念に点検した上で決定会合で議論し、適切に判断していく」と述べた。

日銀は10月の金融政策決定会合で6会合連続で政策維持を決めたが、物価の上振れリスクが意識され、日銀内では利上げ議論に広がりが見られる。一方、金融緩和を重視するとみられている高市早苗政権の発足や円安進行を受けて利上げ時期に関する市場の見方が交錯する中、植田総裁は政策正常化路線を堅持する考えを改めて示した。

円安

植田総裁は円安に関し、為替レートは経済・金融のファンダメンタルズに沿って、安定的に推移することが重要との基本認識を示しつつ、消費者物価の上昇要因になることから、「物価への影響を注意深くみていく」とした。

企業が賃金・価格設定行動を積極化する中で、過去と比べて「為替の変動が物価に及ぼす影響が、大きくなる可能性がある」とも指摘。その上で、物価上昇が予想物価上昇率に反映され、「基調的な物価上昇率に影響する可能性についても留意しないといけない」と述べた。

円相場は前日に対ドルで一時157円89銭と1月中旬以来の安値を更新し、21日は157円台前半で推移。片山さつき財務相が為替介入も辞さない考えを示したことを受けて円が一時買われたが、反応は限定的となっている。

片山財務相は同日の閣議後会見で、足元の為替動向について「非常に一方的で急激であると憂慮している」とし、日米財務相の共同声明に沿って適切に対応すると述べた。為替介入は選択肢として「当然考えられる」とし、表現を一段高めて円安をけん制した。

(発言の詳細を加えて更新しました)

--取材協力:梅川崇.

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