債券トレーダーは、高市早苗首相が打ち出す経済対策を注視している。財政支出の拡大に対して日本国債に売りを浴びせる準備を整えている。

市場関係者によれば、超長期債が日本国債弱気派の標的となっている一方、売り圧力がこれまで比較的弱かった5-10年ゾーンにも注意が向けられつつある。

市場を動かし得る引き金がある。政府は21日に閣議決定する経済対策について、裏付けとなる2025年度補正予算の一般会計歳出を17兆7000億円程度とする方針だ。三菱UFJ銀行やソシエテ・ジェネラルが、投資家にとって抵抗のない水準とみていた14-15兆円を優に上回る。

石破茂政権下で昨年編成した補正予算は約13兆9000億円だった。

日本は超長期債の発行額を減らし、期間のより短い債券を優先している。

これに伴い、市場関係者の関心は期間が短めの国債に向かっている。ゴールドマン・サックス・グループは以前、日本銀行が利上げを実施する中で、こうした国債が混乱に対して脆弱(ぜいじゃく)だと警告していた。

アセットマネジメントOneで債券担当最高投資責任者(CIO)を務める清水岳友氏は、「ファンド全体的にはアンダーウエートにしているものが多い」と説明。中期ゾーンから長期ゾーンにかけてのアンダーウエートを多く保有している」と話す。

日本の債券市場のボラティリティー拡大が世界の市場に波及するリスクに対して、市場は警戒感を高めている。

日本の国債は世界の債券市場の重要な基盤の一つであり、利回りが急上昇した場合、米国債や英国債、ドイツ国債に波及しやすい。日本は長年、低金利マネーの拠り所だったが、日銀が大規模金融緩和を縮小するのに伴い、そうした構造は緩やかに変わりつつある。

RBCブルーベイ・アセット・マネジメントも予算を巡る公表を控え、日本の債券のショートポジションを保有している。最高投資責任者(CIO)のマーク・ダウディング氏は日本の債券を既にショートにしており、特に10年物を売り持ちにしていると明かす。

家計や国内経済の支援に向けた高市首相の経済対策は、利上げペースが遅すぎると批判されている日銀にとって、状況を悪化させる恐れがある。

マールボロ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジェームズ・エイシー氏は「財政赤字拡大で高いインフレに対処する考え方は、控えめに言っても疑問符が付く」と指摘する。同氏は5-10年物の日本国債で、弱気ポジションを構築している。

歳出は、全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)が日銀の目標の2%を数年にわたり上回る状況で示されることになる。投資家が新たな支出について、膨張する債務を抑制する意思がない裏付けとみる可能性もある。

日本の40年債利回りは今年に入り100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇し、3.745%前後で推移。30年債利回りも100bp超上がり3.37%に達した。一方、5年債利回りは約55bpの上昇にとどまり、1.315%前後となっている。

原題:Bond Traders Probe Japan for Weakness at Belly of Yield Curve(抜粋)

--取材協力:グラス美亜、日高正裕、近藤雅岐.

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