(ブルームバーグ):21日の日本市場では日経平均株価が約1200円安と大幅反落。人工知能(AI)関連株の過熱感が再度意識され、一部の値がさ株の下落が相場の重しになった。債券は上昇、円は対ドルで157円台前半で推移した。
前日の米エヌビディアやフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が下落し、国内市場でもソフトバンクグループやアドバンテストが10%超下げた。一方、自動車関連や内需株は高く、東証株価指数(TOPIX)は上昇に転じる場面もあった。
東洋証券の大塚竜太ストラテジストは、日経平均の下げ幅のほぼ全てをアドバンテストとソフトバンクG、東京エレクトロンの3銘柄が占めていると指摘し、相場の雰囲気はそれほど悪いわけではないと述べた。一方、AI関連株のバリュエーションなどを巡る議論は続き、日本株は「来週も上下に振れる落ち着かない展開が続きそうだ」とみている。
株式
AI関連株の過熱感警戒でソフトバンクGやアドバンテストなどが相場を押し下げ、キオクシアホールディングスも急落した。
一方、為替の円安によるファンダメンタルズ改善の期待から自動車株などが買われ、TOPIXを構成する1670銘柄のうち上昇銘柄が1376と下落の271を大きく上回った。
りそなホールディングスの武居大暉ストラテジストは、過熱感のあったAI関連株などが売られているが、「株式市場に悲観があるわけではない」と指摘。足元で相場全体の上げ下げが続き、決算など「ファンダメンタルズが評価される機会が少なかった」ことから、出遅れていた銘柄に買いが入っていると話した。
パラソル総研の倉持靖彦副社長は、年末が近くなり年金などの機関投資家が株式の配分比率を見直す中で、グロース株を利益確定売りしてバリュー株を買う動きが出ている可能性を指摘した。
債券
債券は上昇。米国の長期金利が低下したことや、前日に長期や超長期債を中心に大幅下落した反動の買いが優勢だった。政府の経済対策の規模が確定し、過度な国債増発への警戒感は和らいだ。
政府は21日の臨時閣議で、減税などの効果を含めた21兆3000億円規模の経済対策を閣議決定した。対策の裏付けとなる2025年度補正予算の一般会計歳出は17兆7000億円程度だ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは、「対策や補正予算の一般会計歳出の規模は報道通りでサプライズはない」と指摘。補正予算は来週末に決まる見込みで、「国債増発の金額は税収の上振れなどで変わってくるため、最終的にどの程度になるのか警戒感は残る」と言う。
また「債券相場は昨日大幅に利回りが上昇したため水準感からの買いが入ったものの、本腰を入れた買いではなく、やや上値は重くなっている」と述べた。
新発国債利回り(午後3時時点)
為替
円相場は対ドルで157円台前半で推移。片山さつき財務相が為替介入も辞さない考えを示したことを受けて、円買いが優勢だった。
岡三証券投資戦略部の武部力也シニアストラテジストは、高市首相が新設した日本成長戦略会議のメンバーであるクレディ・アグリコル証券の会田卓司氏が対ドルで160円まで円安が進む前に介入の可能性もあると発言したのに続き、片山財務相が介入は選択肢として「当然考えられる」と述べたことは極めて重要だと語る。
その上で、これ以上の円安・ドル高は日米共に許容できず、連休中にも円買い・ドル売り介入が行われる可能性があり、円は対ドルで上昇に転じるとの見方を示した。
一方、みずほ銀行国際為替部の長谷川久悟マーケット・エコノミストは、スワップ市場では日本銀行の年内の利上げ織り込みが2割程度にとどまっており、「サプライズを避けたい日銀にとって利上げに向けた環境整備は困難だ」と指摘。米国から求められている利上げをせずに円買い・ドル売り介入を行うのは難しく、円は160円に向かって下落を続けるとみている。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:堤健太郎、石川英瑠.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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