(ブルームバーグ):米国とロシアの特使は28項目から成るウクライナとロシアの和平案を取りまとめた。ロシアが占領した広大な領土の割譲や、軍の規模の上限設定をウクライナに求めるとともに、対ロ制裁を段階的に解除する内容で、ロシアのプーチン大統領の要求の多くを受け入れる形となっている。
ブルームバーグ・ニュースが提案コピーを確認した。それによると、この計画ではクリミア、ルハンシク、ドネツク各地域が「事実上のロシア領として認められる」とされている。認める国には米国も含まれる。ウクライナはまた、100日以内に選挙を実施し、北大西洋条約機構(NATO)加盟の望みを放棄することが求められる。
ウクライナは米国から安全保障上の保証を受けることになるが、その対価を米国に支払う形となる。さらに米国は、ウクライナの復興や投資による利益の50%を受け取り、対ロ制裁解除後には同国との経済パートナーシップを結ぶことになる。
この計画の多くの詳細は、過去にウクライナとその同盟国が強く拒否してきた提案に基づいている。ゼレンスキー大統領はこの案を検討中だと述べたものの、その条件の多くを受け入れる用意がある兆候はほとんど見られない。
ゼレンスキー氏は、米ロが策定した和平案に基づき協議を進めることで合意したと述べ、今後数日以内にトランプ氏とこの提案について協議する予定だと明らかにした。
ウクライナ大統領府は20日、キーウを訪問した米軍高官とゼレンスキー氏との会談後に発表した声明で、ウクライナが米国から正式に草案を受け取ったことを確認した。米側はこの案が外交努力を再活性化させる助けになると考えている。
声明によると、ゼレンスキー氏は「国民にとって重要な基本的原則を示し、20日の会談を経て、双方は公正な戦争終結につながる形で計画の条項を検討することで合意した」という。さらにゼレンスキー氏はトランプ氏と「現存する外交的機会や和平実現に必要な主要な論点」について協議する予定だとしている。
事情に詳しい関係者によると、今回の最新提案はトランプ大統領のウィトコフ特使とプーチン氏の経済特使キリル・ドミトリエフ氏がまとめた。これはウィトコフ氏がこれまで進めてきた取り組みの延長線上にあり、ウクライナが警戒感を示すとともに、欧州からはほぼ即座に反発を受けてきた。
ニュースサイトのアクシオスは20日、この計画のテキストを報じた。ホワイトハウスにコメントを要請したが、返答は得られていない。
トランプ氏は計画支持
ホワイトハウス当局者は、トランプ氏がこの計画を支持していると述べた。ただ、事情に詳しい関係者の話では、協議は引き続き流動的な段階にある。ドリスコル米陸軍長官率いる米軍高官の代表団は今週キーウを訪れ、進展の道を探る協議を行った。軍事支援の強化も選択肢の一つとして検討されていると関係者は語った。
ウクライナは極めて大きな譲歩を迫られることになり、今回の協議に加わっていない他国の同意も必要になる。ウクライナはNATOに加盟しないと約束するだけでなく、その誓約を憲法に明記しなければならない。さらにロシアは主要8カ国(G8)の枠組みに復帰することになり、国際的孤立を終わらせる象徴的な動きとなるが、この点については他のG7諸国から反対の声が出ている。
ゼレンスキー氏がどの程度この計画に抵抗できる余地があるのかや、米国が武器供与や情報提供を交渉の手段としてウクライナに受け入れを迫るかどうかは明らかではない。ホワイトハウスのレビット大統領報道官は20日、トランプ政権の国家安全保障チームがロシア、ウクライナ双方と接触しており、トランプ氏が現行の計画を支持していると記者団に語った。
なお、この計画ではロシアの要求を大部分で満たす一方、同国にも一定の制約を課している。近隣諸国を侵攻しないことや、欧州に対する不侵略の原則を法制化することが求められている。
ウクライナの同盟国からは迅速かつ否定的な反応が示された。スターマー英首相は「ウクライナの未来は同国が決めるものであり、われわれが求める公正で持続的な平和の基盤となるこの原則を見失ってはならない」と発言。欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表(外相)も「いかなる計画であれ、機能させるにはウクライナと欧州の関与が必要だ」と述べた。
原題:Trump’s Ukraine Peace Plan Would Grant Key Russian Demands (1)、Zelenskiy Says He Agreed to Work on US Draft Plan to End War (4)(抜粋)
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