20日の米株式相場は下落。市場ではボラティリティーが再び高まり、テクノロジー株が売られた。前日引け後に発表した好調な決算を受けて買い優勢で始まったエヌビディアが下げに転じたことなどが響いた。

米政府閉鎖の影響で発表が遅れていた9月雇用統計は強弱まちまちで、不安定な労働市場の姿が浮き彫りとなった。12月連邦公開市場委員会(FOMC)会合での政策見通しには不透明感が広がった。

S&P500種株価指数は1.6%下落。一時は前日比で2%近く上昇する場面もあった。エヌビディア株は朝方には5%高を付けたが、3%安で取引を終えた。

ペッパーストーン・グループのディリン・ウー氏は「エヌビディアは市場が求めていた結果を出したが、根本的な疑問は依然として残っている。つまり、巨大テック企業が多額の人工知能(AI)投資をどこまで収益化できるのか、そして借金に支えられた支出が本当に持続可能なのかといった問題だ」と述べた。

市場のリスクセンチメントを映すビットコインは一時4%超下落し、4月以来初めて8万7000ドルを割り込んだ。

シティ・インデックスのファワド・ラザクザダ氏は「マクロ面の逆風は消えていない」と指摘。そのうえで「決算シーズンがほぼ終わり、エヌビディア以外のハイテク各社でも需要が同様に底堅いことを示す新たな材料は乏しい。これが株式相場全体の上値を抑えている」と述べた。

株高の勢いが鈍ったことで、米国市場がごく一部の大型ハイテク銘柄に過度に依存している実態も改めて浮き彫りになった。投資家の間では、株価水準の割高感に加え、AI関連投資の循環的な構造や、目に見える成果が乏しいまま膨らむインフラ投資の規模にも懸念が広がっている。

FBBキャピタル・パートナーズのマイケル・ベイリー氏は「下落の明確なきっかけを特定するのは難しいが、今朝のエヌビディア株急伸への反動があったのかもしれない」と指摘。「もう一つの相場圧迫要因は、米利下げが後ずれするとの観測だ。こうした要因が重なり、きょうの相場反転につながった可能性がある」と語った。

著名空売り投資家カーソン・ブロック氏は、AIバブルへの警戒が強まるなかでも、米国の主要テクノロジー株を空売りすべき時ではないと指摘する。

投資会社マディ・ウォーターズ・キャピタルを率いる同氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「今の市場ではショートよりロングの方がはるかにいい」と述べ、「エヌビディアや他の大手テクノロジー銘柄を空売りしようとする投資家は、長くは生き残れないだろう」と語った。

国債

米国債相場は上昇(利回りは低下)。強弱まちまちの内容となった9月雇用統計を受けて、12月利下げの可能性は残ったと受け止められた。金融政策の見通しを反映しやすい2年債利回りは約5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。

DWSアメリカズの債券責任者ジョージ・カトラボーン氏は「失業率の方が重要で、労働需給の均衡論に疑問を投げかけている」と指摘。「それが国債上昇の理由だ」と述べた。

債券トレーダーの間では、FOMCが12月に3会合連続の利下げに踏み切るとの見方がやや強まった。前日には、米労働統計局(BLS)が10月の雇用統計を公表しない方針を示したことで、利下げ観測が後退していた。

金利スワップ市場では12月会合での0.25ポイントの利下げ確率はおよそ34%と、失業率の発表前の約20%から上昇した。

一方で雇用統計の発表後、クリーブランド連銀のハマック総裁は、労働市場の下支えのために利下げを行えば、目標を上回るインフレの期間が長引き、金融安定へのリスクが高まる恐れがあるとの見解を示した。

米連邦準備制度理事会(FRB)のバー理事は、インフレ率が依然として当局目標を1ポイント上回る状況にあり、追加利下げを検討する際には慎重な対応が必要になるとの見解を示した。

アプタス・キャピタル・アドバイザーズの債券ポートフォリオマネジャー、ジョン・ルーク・タイナー氏は「複数のFRB当局者がすでに明確な一線を引いている」とし、パウエルFRB議長が12月会合で利下げに必要な支持を取りまとめるのは難しい状況にあるとの見方を示した。

為替

外国為替市場ではドルが小幅高。雇用統計発表直後にはドルを売る動きが強まったが、その後に急速に買い戻されるなど日中は不安定な値動きとなった。

BMOグローバル・アセット・マネジメントのマネジングディレクター、ビパン・ライ氏は「当初の注目は失業率に集まっており、そのわずかな上昇は労働市場にやや弱さが出ていることと整合的だ」と指摘。「ただ今回のデータはやや古く、11月までの失業保険申請件数を見る限り、状況はそれほど悪化していない。貿易加重ドル指数の値動きは当面、狭いレンジ内にとどまるだろう」と語った。

ノムラ・インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏(ロンドン在勤)は「全体のデータを見る限り、FOMC参加者の多数が12月の利下げを支持する根拠は乏しいことを踏まえると、現在のドル高の流れに逆らうのは依然として難しい」と述べた。

とりわけドル・円相場は、日本の財政見通しに対する市場の不安を背景に、上昇方向に最も動きやすい通貨ペアになると同氏はみている。

この日は円相場も不安定な値動きとなり、ニューヨーク時間午前の取引では一時、1ドル=157円89銭まで下げる場面もあった。

日本の通貨当局が円安に歯止めをかけるため、2024年7月以来となる為替介入の検討を迫られるとの観測が高まりそうだ。

クレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストは、1ドル=160円まで円安が進む前に為替介入が行われる可能性もあるとの見解を示した。会田氏は高市早苗首相が新設した日本成長戦略会議のメンバーの1人。

原油

ニューヨーク原油先物相場は続落。ウクライナでの戦闘終結に向けた米国とロシアの和平草案に関し、ウクライナのゼレンスキー大統領が同案を基に協議を進めることに合意したと述べ、原油の弱材料となった。

和平案を受けてロシア産原油に対する制裁が解除される事態となれば、同国からの供給が拡大するとみられている。

石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスや、他の産油国が生産を増やす中、原油市場では既に供給過剰への懸念が強まっている。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は、前日比30セント(0.5%)安の1バレル=59.14ドルで終了。同限月はこの日が最終取引日。中心限月の1月限は0.42%下げて59ドルちょうどで引けた。

ロンドンICEの北海ブレント1月限は0.2%下落して63.38ドル。

金スポット相場は前日終値を挟んで上下に振れる展開。強弱入り交じる内容だった米雇用統計を受け、方向感の定まらない値動きとなった。

TDセキュリティーズの商品戦略グローバル責任者バート・メレク氏は、雇用の伸びが市場予想を上回ったことを踏まえると「FRBが金融緩和策を一段と積極的に講じると考える理由はない」と指摘。 「既に市場は12月の米利下げを確実視していなかった。今回の雇用統計がそれを裏付けた」と述べた。

金スポット相場はニューヨーク時間午後3時10分現在、前日比1.12ドル高の1オンス=4079.10ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、22.80ドル(0.6%)安の4060ドルちょうどで引けた。

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--取材協力:Vildana Hajric、Isabelle Lee、Denitsa Tsekova.

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