(ブルームバーグ):暗号資産(仮想通貨)への投資や保有をする「暗号資産トレジャリー」事業を中核に据える企業を巡り、日本取引所グループ(JPX)は関連企業の拡大を抑制する方法を検討している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

情報が非公開のため、匿名を条件に語った関係者によると、東京証券取引所を傘下に持つJPXが選択肢として検討しているのは、裏口上場の防止を目的とした不適当な合併などに対するルールの厳格化や、新たな監査の義務化など。ただし、現時点で具体的な方針は決まっていないとも同関係者は述べている。
関係者の1人によると、JPXの反対で9月以降、日本の上場企業3社が暗号資産の購入計画を保留した。これらの企業は、事業戦略としてデジタル資産の保有を始める場合、資金調達能力が制限されると伝えられたという。
JPXの担当者はブルームバーグの取材に、暗号資産への投資や保有について一律の規制は設けていないとした上で、リスクやガバナンスの点で懸念がある企業には株主・投資家保護の観点から対応しており、引き続き点検していくと述べた。
ビットコインの伝道者と呼ばれるマイケル・セイラー氏が率いる米ストラテジーをモデルにした暗号資産トレジャリー企業は、ここ数カ月で株価が急落し、個人投資家は多額の損失を被る事態に陥っている。およそ660億ドル(10兆1600億円)相当のビットコインを保有するストラテジーの株価は、7月に付けた年初来高値(457.22ドル)からほぼ半分になった。
こうした状況を受け、香港やアジア太平洋地域の取引所は新たな暗号資産トレジャリー企業の設立に待ったをかけているが、ここまでの日本は流れに逆行。ビットコイン・トレジャリーズ・ドット・ネットのデータによると、ビットコインを保有している上場企業は14社とアジアの中で最多だ。
関係者らによれば、JPXが暗号資産トレジャリー企業に対する規制強化の方向にかじを切ったのは、日本の関連企業の株価が急落し、個人投資家などが損失を被ったとの懸念からだという。東証に上場し、国内最大の関連企業であるメタプラネットの株価は年初に約420%急騰した後、6月中旬に付けた上場来高値(1930円)から75%以上下げている。

メタプラネットは元々ホテルを運営する企業だったが、2024年初めに暗号資産への投資・保有事業へ業態を転換。既に3万ビットコイン以上に投資し、ビットコインの保有規模は世界で4番目に大きい企業となった。2万1000ビットコインの取得を目指すネイルサロン運営のコンヴァノの株価も、8月下旬以降に約6割下落した。
メタプラネットとコンヴァノはコメントを控えた。
13日の東京市場でメタプラネットの株価は一時8.7%下落し、ほぼ1カ月ぶりの大幅な下げとなった。コンヴァノ株は一時17%安となり、同業のBitcoin Japanの株価も一時12%下げた。
(最終段落に株価の動きを追加して記事を更新しました)
--取材協力:中道敬.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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