国際原子力機関(IAEA)の新たな報告書によると、イスラエルと米国による空爆で被害を受けた施設についてイランが沈黙を続けていることが、核兵器級に近い濃縮ウラン備蓄の状態や所在に対する懸念を強めている。

ブルームバーグが確認した文書によれば、IAEAは6月中旬以降、イランの核燃料備蓄を検証できていないと改めて指摘した。国連安全保障理事会がイランに対し濃縮活動の停止を求める制裁を再発動して以降、IAEAの報告書は今回が初めて。

IAEAのグロッシ事務局長は「イラン国内の核物質にIAEAが5カ月間アクセスできていないという事実は、通常の保障措置に基づく検証の観点から著しく遅れていることを意味する」と記し、ウランの所在についてイラン政府が報告していないことは「深刻な懸念事項だ」と述べた。

衛星画像によれば、イスラエルと米国による攻撃は、イランの地表にある核関連施設の大半を破壊したとされるが、同時に国連査察官が数十年にわたり続けてきた巨大な原子力施設へのアクセスも失わせる結果となった。イランの核開発は1950年代にさかのぼり、その性質をめぐる懸念は何十年にもわたり西側諸国を悩ませてきた。原子力をめぐる緊張は、たびたび原油市場を揺るがし、米国との間で融和と対立の波を引き起こしてきた。

 

イランは一貫して核兵器の開発を意図しているとの疑惑を否定。1期目のトランプ大統領が2015年の核合意から離脱し、経済制裁を強化する措置を取った後、イランはウラン濃縮を加速させたと主張している。

グロッシ事務局長は、イランが協力を改善しない限り「同国の核計画が純粋に平和目的であるとは保証できない」と改めて述べた。

トランプ氏が6月にイランの主要核施設の一部を大規模に空爆したことで、両国の間で進められていた対話再開に向けた交渉は即座に頓挫した。これ以降、イランは再び空爆されないという保証が得られない限り、協議に復帰する用意はないとの立場を示している。

原題:Iran’s Missing Uranium Is Raising Concern at UN Nuclear Watchdog(抜粋)

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