(ブルームバーグ):トヨタ自動車は今後5年間に米国で最大100億ドル(約1兆5500億円)の投資を行うと明らかにした。トランプ大統領が言及していた同社の投資計画が確認された格好だ。
トヨタは12日、ノースカロライナ州の新電池工場の生産開始にあわせて発表した声明で、資金について「将来のモビリティの取り組みを支援するため」とし、詳細については明らかにしなかった。トランプ氏は先月来日した際、トヨタが米国内に自動車工場を建設する見通しで、その規模は100億ドルを超えると発言し、混乱を招く一幕があった。
トヨタの幹部はその後、トランプ氏らに対して具体的な投資計画などを述べていないとした上で、米国で継続的に投資をしていく姿勢については日本政府や米国側などに事前に伝えていたと明らかにしていた。
トヨタの米国事業トップを務める小川哲男氏は、同電池工場と新たな投資について、「当社の歴史における転換点となる」と述べた。
今回の投資発表はトランプ政権が世界の自動車業界に対し、より多くの生産を米国に移すよう圧力をかけ、海外から輸入された自動車や部品に関税を課す中で行われた。トランプ氏は今年、日本から米国へ過剰に輸出をしているとしてトヨタを名指しで批判した。また、第1次政権時にも同社のメキシコでの製造拠点拡大を特に問題視していた。
以前に批判を受けた際、トヨタは米製造業に130億ドルを投資すると表明。この投資は既に実行したと今年に入り明らかにし、過去70年近くで米国への投資総額は現在の価値にして500億ドルを超えると主張した。
トヨタは昨年、米国で販売した自動車のほぼ半数を同国外から輸入していた。カナダとメキシコが大半だったが、日本からの輸入も約28万1000台に上った。
トヨタは最近、ノースカロライナ州グリーンズボロ郊外に139億ドルを投じて建設したバッテリー工場を正式に開所したばかり。同工場では5100人の新規雇用を創出し、ハイブリッド車と完全電気自動車(EV)の両方のモデルにバッテリーを供給していく見通しだ。
トヨタは新工場の生産ライン14本のうち10本を、ケンタッキー州で生産される完全EVのスポーツタイプ多目的車(SUV)向けバッテリーセル製造に充てるとこれまでに説明してきた。SUVのモデル名は明らかにしていない。残り4本はハイブリッドモデル向けで、一部は既に稼働している。
同社は2034年までに14本全てのラインを稼働させる予定だったが、米国で最大7車種のEVを販売するという野心的な計画はその後縮小した。
米国ではEV需要が軟化する見通しで、ブルームバーグNEF(BNEF)によると、30年までに米国内のバッテリーセル生産は大規模な供給過剰に陥ると見込まれる。BNEFでは、30年までの米EV販売台数の予測を1400万台引き下げた。
トヨタはノースカロライナのバッテリー工場がフル稼働すれば、年30ギガワット時を超える生産能力を持ち、ハイブリッド車80万台、プラグインハイブリッド15万台、完全EV30万台の合計に匹敵すると述べていた。ただ、同社のハイブリッド車は絶好調だが、米国で昨年の完全EV販売台数は3万台に満たなかった。
原題:Toyota Pledges to Invest Up to $10 Billion in Its US Operations(抜粋)
(第6段落以降に情報を加えます)
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